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検索の課題解決、カギは「人とシステムの融合」〜ヤフーとNHN提携の狙い
(2013/3/29 00:00)
ヤフー株式会社とNHN Japan株式会社は28日、検索分野での業務提携に合意した。ヤフーは「NAVERまとめ」からデータ提供を受け、NAVERまとめに最適化した検索エンジンを開発。専用検索エンジンは4月以降、NAVERまとめに導入されるほか、Yahoo!検索にも表示される。28日に都内で行われた会見が開かれ、ヤフーの宮坂学社長やNHN Japanの森川亮社長らが提携の狙いを語った。
NAVERまとめの「裏データ」も反映する専用検索エンジンで差別化
ヤフーが提供を受けるNAVERまとめのデータには、コンテンツだけでなく、まとめ記事やまとめ作成者に与えられる評価の指標など、サービスの表面上には出てこない「裏側のデータ」も含まれる。
そのため、ヤフーが開発するNAVERまとめ専用検索エンジンは、まとめ記事の品質やリアルタイム性などを踏まえた検索結果を提示することが可能という。宮坂氏は「従来の検索クローラーではPV順にしか並べられないが、提携によってさらに高いレベルの検索結果を提供できる」と自信をのぞかせる。
これまでのYahoo!検索は、例えば「花見」と検索すると、検索結果ページでは主に花見のスポット情報が表示されていた。これに対してNAVERまとめとの連携後は、「花見に持っていきたいグッズ」「桜を楽しめるレストラン」「花見で食べたいスイーツ」といったまとめ記事が検索結果ページに表示され、「人の手でしか成し得ない回答を提示できるようになる」(宮坂氏)。
提携のスケジュールとしてはまず、4月以降に専用の検索エンジンをNAVERまとめのサービス内検索に導入するともに、Yahoo!検索でNAVERまとめのデータを活用する。その後は、Yahoo!検索以外のサービスでNAVERまとめのデータを活用したり、反対にNAVERまとめ内で利用可能なYahoo! JAPANのサービスを模索するなど、連携の幅を広げていく考えだ。
ヤフーからNAVERまとめへの流入に期待、海外展開も視野
NAVERまとめは特定のテーマに沿ったリンクや画像、動画などを集約して“まとめ記事”を作成できるサービス。森川氏によれば、2013年1月時点の月間PVは12億8000、月間ユニークユーザー数は4100万人に上り、昨年からの成長率ではユーザー増加数はFacebookを上回り、月間訪問者数はTwitterを上回るという。
森川氏は成長の要因を、「今までのロボット検索で足りないことを人の手で補うのがNAVERまとめ。情報の流通量が爆発的に増える中、わかりやすさが一般ユーザーのニーズにマッチしている」と分析する。「NAVERまとめは、検索品質の向上に貢献できる唯一のサービス。キュレーション分野では唯一無二のプラットフォームの地位を確立した」。
森川氏はヤフーとの提携により、これまでNAVERまとめを訪問していなかったユーザーを獲得できると説明。新たなユーザー層が加わり、作成されるまとめ記事のバリエーションも増えると期待を寄せている。「キュレーションプラットフォームとしてのNAVERまとめを圧倒的なナンバーワンにしたい。今後は国内のみならず海外展開も視野に入れている」。
ヤフーは「世界一優れた日本のインターネット大陸の地図」作りを目指す
ヤフーは宮坂氏が社長に就任した2012年4月以来、情報技術を使って人や企業の課題を解決する「課題解決エンジン」をスローガンに掲げてきた。自社で課題を解決できなければ、その分野で最も優れた回答を持つ企業と提携し、ユーザーに回答を提供し続けてきたと宮坂氏は振り返る。「キュレーションメディアとして圧倒的な回答力を持つNAVERまとめと一緒になることで、回答力をさらに高められる」。
「世界一優れた日本のインターネット大陸の地図を作りたい。昨今はシステムによる地図が主流だった。Yahoo! JAPANもスタート時は人によってインターネットを分類しようとしてきた。現在もYahoo!カテゴリやYahoo!ニュースでは人手を介して情報を整理しているが、これからはシステムによる地図作りか、人による地図作りかの二者択一ではない。それらが一緒になるハイブリッドだからこそ、日本のインターネット地図をもっと便利にできる」(宮坂氏)
ロボット検索の次は「人とシステムの融合」
これまでの検索の仕組みは、インターネット黎明期のロボット検索を経て、2000年頃には人の手を介したディレクトリサービスによるリンク集に移行。その後、情報量が爆発的に増えたことで人力では整理できなくなり、再びロボット検索の時代を迎えた。NAVERまとめの仕掛け人でもあるNHN Japan執行役員の島村武志氏も、「この次のパラダイムはシステムと人の力の融合」と語る。
「システムと人は対立軸で語られるが、両方がうまく噛み合うことが大事。システムの力がなければ膨大なインターネットの情報を探し出すのは困難。ただ、その情報が本当に良いものか、誰に届けるべきかなどは、人の目や経験を経なければわからないこともある。今回の連携はシステムと人の融合を高次元で実現するもの。おそらく、これだけ大規模な検索サービスと、人手を介して情報の取捨選択をするシステムの融合は初めてではないか。」(島村氏)
なお、NHN Japanは独自に検索サービス「NAVER」を提供しているが、今後も引き続き開発を続けていく。「NAVERは基本的な検索の品質を高めることに集中している段階で、ヤフーの検索とはステージが違う」(島村氏)。今回はNAVERまとめとYahoo!検索が連携するメリットが大きいと判断したため、サービス連携に至ったと説明している。
NAVERまとめは今後、Yahoo! JAPANが持つユーザーの情報探索ニーズに応える機能や制度を段階的に適用していく考え。現時点で詳細は未定というが、島村氏は「ヤフーの規模の情報探索ニーズを知ることが、それに応えるメカニズムを真剣に考えるきっかけになる。こうした課題を解決するプロセスを通じて、NAVERまとめはキュレーションプラットフォームとしてさらに進化できる」と意気込みを語った。