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補償金の議論をもう一度、権利者団体が関係省庁に呼びかける方針

 音楽や映像などの権利者86団体で構成する「Culture First」は1日、「私的録音録画補償金制度『作る、つなぐ、楽しむ』の関係をもう一度」と題したプレスリリースを発行。文化庁をはじめとする著作権に関連する省庁に対して、補償金制度を再考する議論の場を設けるように呼びかける方針を明らかにした。

 補償金制度は、デジタル録音・録画による複製によって権利者が被る経済的不利益を補償するために、機器や媒体などに補償金を課し、著作権者に還元する制度。補償金は、課金対象となる機器や媒体を販売するメーカーが商品の価格に上乗せして消費者から徴収。メーカー業界団体を通じて補償金の管理団体から権利者に分配される仕組み。

 補償金制度をめぐっては、補償金管理団体の私的録画補償金管理協会(SARVH)が東芝を相手取り、同社が販売したデジタル専用DVDレコーダーに対する私的録画補償金の納付を求めて提訴。しかし2012年11月、最高裁判所がSARVH側の上告を退け、デジタル専用DVDレコーダーが補償金の対象機器に該当しないという判決が確定した。

 この判決についてCulture Firstは「現行法令の解釈にすぎない」として、補償金制度そのものが否定されたわけではないと主張。実際にコピーに使用される機器・媒体と、補償金の対象となる機器・媒体に大きなずれが生じたために補償金制度の形骸化が急速に進んでおり、最高裁の決定がそれにさらに追い打ちをかける形になったとの考えを示している。

 補償金制度について実演家著作隣接権センター(CPRA)常務理事の椎名和夫氏は、「メーカーが消費者から徴収する仕組みも含めて、現行制度は全く機能していない状況。デジタル複製でユーザーの利便性が高まる一方で、音楽産業はボディーブローを受け続けている」と苦しい胸の内を明かす。

 Culture Firstでは、補償金制度が権利者、メーカー、ユーザーの3者の「作る、つなぐ、楽しむ」という各立場を尊重しつつ利益を調整してきたと、その役割の大きさを強調。具体的なアイデアは未定としながらも、私的録音録画補償金制度であれ、また新たな制度であれ、「作る、つなく、楽しむ」関係の再構築に強い気持ちで取り組むとしている。

(増田 覚)