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GoogleとNASAが共同で“量子コンピューター”研究所を設立

 米Googleは16日、米NASAと共同で量子コンピューターを使用できる研究所の共同開設を発表した。

 GoogleとNASAのエイムズ研究所は、共同で「Quantum Artificial Intelligence Lab(量子人工知能研究所)」を設立するし、研究所にはカナダのD-Wave社による量子コンピューターを設置する。この計算資源は、学術団体USRA(Universities Space Research Association)を通して米国内の研究者も利用できる。

 Googleの目的は、機械学習を進展させる可能性がある量子コンピューティングについての研究だとしている。機械学習には、数学的にNP困難と呼ばれる計算に天文学的な時間がかかる問題があり、これをより高速に解くために量子コンピューターが役立つとGoogleは考えている。

 Googleでは、既に機械学習のための量子アルゴリズムをいくつか開発したという。

 量子コンピューターを研究所に納めたD-Wave社は、研究所での用途として検討している内容として、「機械学習、ウェブ検索、音声認識、計画とスケジューリング、太陽系外惑星の探索、管制センターの運用支援」を挙げ、幅広い用途が可能だとアピールしている。

 また、納入プロセスの中で、D-Wave社製量子コンピューターが好成績を収めたとも説明。Google、NASA、USRAが作成した一連のベンチマークテストの結果、D-Waveのシステムはベンチマークの水準を満たしたか、要求水準を大幅に超える場合すらあったとしている。

 D-Waveの“量子コンピューター”については、本当の意味での量子コンピューターではないという意見も多く、議論となっている。

 2013年には、米Amherst大学のコンピューターサイエンスの教授がD-Wave製コンピューターに関する一連の計算実験を行った結果、特定条件下では、既存コンピューターよりも実際に高速であることを確認したと発表している。

 Amherst大学の5月7日付プレスリリースによると、研究を行ったのはCatherine McGeoch教授とSimon Fraser University大学院生のCong Wang氏。研究論文は査読の上、5月15日にイタリアで開かれた「2013 Association for Computing Machinery (ACM) International Conference on Computing Frontiers」にて、10ページの論文「Experimental Evaluation of an Adiabiatic Quantum System for Combinatorial Optimization」として正式に発表された。

 それによると、D-Waveのコンピューターは、特定の「組み合わせ最適化問題」と呼ばれる種類の問題で良い成績を収めたとしている。そして「量子コンピューターであるか否かに関わらず、研究する価値があるこれらの問題を解決するための興味深いアプローチだ」とコメントし、量子コンピューターであるかどうかの立場を定めることは注意深く避けた。

 その上で、D-Wave製コンピューターの計算能力について、「特定の問題については、テストしたサイズの問題であれば、私が知っているどんなものよりも数千倍も速い。もしそのサイズのより一般的な問題を解決することを望むならば、競合できるとは言える。私が見た最高のもののいくつかと同様にはできる。この点では単に平均以上というだけだが、有望なスケーリング軌道を示している」としている。

 今回、GoogleとNASAが「お墨付き」を与えたことで、他社も追随する可能性が出てきた。これはD-Wave社にとっての朗報にとどまらず、新アルゴリズムの開発によっては、将来大きな業界変動につながる始まりとなる可能性もある。

(青木 大我 taiga@scientist.com)