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日本人は“ウェブ接客”から逃げる傾向、ただし応じてくれたらCVRは他国以上
(2013/8/30 11:00)
IBMなどのサイトを訪問中、探している製品情報がなかなか見つからずにウロウロしていて「何かお探しですか?」「お困りですか?」といった内容のポップアップ表示に出くわした経験はないだろうか。これに応じると、その場でオペレーターがチャットで対応してくれ、製品についての相談や質問が行える。サイト訪問者に対して“ウェブ接客”を提供し、サイトからの離脱を防ぐとともにコンバージョン率(CVR)の向上につなげるソリューションとして、米LivePersonが提供している「LiveEngage(ライブエンゲージ)」を活用したものだ。
IBMのようなグローバル企業では、米国本社がライブエンゲージを採用し、その日本語サイトにも導入されている事例は以前からいくつかあったが、今年4月からは日本市場にも提供が開始されている。ネットマーケティング事業などを手がける株式会社ヴィクシアがLivePersonと提携し、日本企業向けにライブエンゲージの販売を開始した。8月中旬には国内企業としては初めて、ミズノ株式会社の公式オンラインショップ「MIZUNO SHOP」にライブエンゲージが導入されている。
ライブエンゲージは、ウェブ上の接客手段としてさまざまなインタラクションをリアルタイムに行えるようにする仕組みを提供する。オペレーターによる有人チャットや音声通話のほか、その訪問客に最適なクーポンを表示することなども可能だ。今回ライブエンゲージを導入したMIZUNO SHOPでは、訪問客の行動傾向をリアルタイムに解析し、設定した条件に合致する場合に、おすすめの商品をポップアップ表示して購入を促す仕組みを取り入れた。
LivePersonアジア太平洋地域統括部長のディーン・ダスティン氏によると、ライブエンゲージを導入している企業は世界80カ国以上で8500社以上。その中には世界の大手銀行15社のうちの10社や、通信大手4社なども含まれる。これら導入企業のサイトの月間訪問者数は合計20億人に上るとしており、何をトリガーにしてどういうアクションを起こせばいいのか、膨大な分析データに基づいてルールに反映できることが強みだという。
具体的には、どういったキーワードで検索してサイトにたどり着いたのか、サイト上でどういった行動・遷移をしているのか、閲覧した製品レビューはいくつか、新規顧客か既存顧客か――といったさまざまな要素を考慮した上で、アルゴリズムを使ってスコアリング。その中から、コンバージョンにつながる可能性がより高い訪問客を特定し、インタラクションに誘導する流れとなっている。
分かりやすい例で言うと、ローンについて検索して銀行のサイトを訪れ、そこでローンのシミュレーション計算を複数回実行した場合、実際にローンを借りる可能性が高いと判断してチャットを提示する。あるいは、旅行予約サイトで複雑なオプションのあるパッケージツアーを検索している訪問客に対して、オペレーターによる電話案内を提示するといった具合だ。
さらに導入企業のCRMとのつなぎ込みにより、会員顧客に対するパーソナライズも可能だ。例えば携帯電話キャリアのサイトであれば、近く契約期間が満了するユーザーに対して契約の更新を案内する表示を出したり、航空会社の予約サイトでは、優良顧客を対象に、エコノミークラスがすでに満席の場合にビジネスクラスにアップグレードできるとの案内を表示するといったかたちだ。これにより、何もアクションを起こさなければサイトを離脱してしまったり他社サービスに流れてしまうのを防ぎ、コンバージョンにつなげられる。ライブエンゲージの導入企業の多くがCVRを平均2割以上向上させることができ、購入額の増大や購入数の増加にもつながっているとしている。
アルゴリズムは国・地域ごとで自動的に分析しているが、「お客様というのは、何かを買おうとしている時や何か問題をかかえている時に、誰かに接客してもらえればそれを受け入れる。これは世界中どこでも同じ」とダスティン氏は説明。さらに日本の消費者に関しては、これまでの一部サイトでの事例から「面白いデータがある」という。「日本では、チャットや電話への招待を受諾する確率は低いが、他国と比べてCVRは非常に高い」。
4年前のデータになるが、提示したチャットや電話が受け入れられる割合は、全世界で0.8%だったのに対し、日本はその半分の0.4%だった。当時はこの状況を見てLivePersonでは日本市場への本格参入を見送ったが、現在は全世界が0.9%なのに対し、日本は0.75%と差が縮まってきた。また、インタラクションに応じた訪問客におけるCVRをアジア太平洋地域の国・地域で比較すると、日本の消費者は、香港や韓国の消費者と比べて2割ほど高く、中国やシンガポールの消費者と比べると3倍にもなるとの結果が出ているということだ。
あわせて、現在では特に日本市場において、携帯端末におけるチャットの利用が多いという動向にも注目しているという。「デスクトップやラップトップから携帯端末に移行するところに、非常に大きな可能性を見出している」とし、ダスティン氏自身も利用しているというLINEに言及。「日本ではLINEを通してテキストチャットの文化が根付いている。同じような体験をウェブサイト上でも提供することで、企業がお客様とつながれる可能性がある。消費者は携帯端末でのこうしたサービスを受け入れてくれるのではないか」とした。
ヴィクシアが販売するライブエンゲージの価格は月額14万4000円から。訪問客をモニタリングする対象となるウェブページ数などに制限はなく、チャットや電話、ビデオなどのインタラクション数に応じて月額料金が設定され、その料金枠のインタラクション数を超過した場合に追加料金が発生する仕組みだ。このほか、初期費用がサイトの規模に応じて個別見積もりとなる。これには、ライブエンゲージのタグの実装や、対応するオペレーターのトレーニングなどが含まれる。