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ヤマハ、「VOCALOID」処理が行える新音源LSI、「大人の科学」でも来春商品化

 ヤマハ株式会社は23日、音源LSIの新製品「NSX-1」(品番:YMW820)の量産出荷を開始すると発表した。サンプル価格は2000円。ウェブAPIで制御できるライブラリも公開するほか、電子工作キットや学研「大人の科学」などコンシューマー向けの商品展開も予定されている。

 音源LSIで一般的なGeneral MIDI音源に加え、グランドピアノなどのアコースティックサウンドをリアルに奏でられるという「Real Acoustic Sound」と、バーチャルシンガーによる歌声を出力できる専用音源「eVocaloid」に対応。「歌って、奏でる、次世代音源」だとしている。

NSX-1

 NSX-1は、最大同時発音数64ボイスで、16パートの出力が可能。音色は、General MIDIが128音色+1ドラムキット、Real Acoustic Soundが30種類、eVocaloidが日本語女性ライブラリの「eVY1」となっている。このほか、リバーブ、コーラス、5バンドイコライザーなどのエフェクター機能を備える。

 なお、Real Acoustic SoundとeVocaloidの同時使用はできず、あらかじめどちらの音源をプリインストールするか選択する必要がある。

 eVocaloidは、歌声合成技術「VOCALOID」の処理を組み込み用途向けに変更したものだという。歌声データベースの容量を減らすとともに、少ない処理量で合成する方式を採用し、極めて少ない遅延で歌声を合成するとしている。また、eVY1は、VOCALOIDで提供されている「VY1」をもとに開発したeVocaloidの専用ライブラリで、力強く伸びのあるロングトーンの歌声を実現しているという。

「eVocaloid」ロゴ

 ヤマハでは、JavaScriptでNSX-1を操作するためのライブラリをオープンソースで公開する。ウェブブラウザーからMIDI機器を制御するための規格として、W3Cによって標準化が進められている「Web MIDI API」を使っており、音を鳴らす、音を止める、使用する音色を選択するといった制御が可能。NSX-1と連動するウェブアプリケーションなども容易に開発できるとしている。現在のところ、Web MIDI APIに対応しているウェブブラウザーはGoogle Chrome(Mac OS X 10.6以降、Windows 8/7/Vista/XP)だという。

 同ライブラリは、サンプルアプリケーションとあわせて、「GitHub」のヤマハのページで11月上旬に公開する予定。サンプルアプリケーションとしては、ウェブブラウザーから送信した歌詞を、MIDIキーボードの演奏によってリアルタイムにNSX-1で歌わせる「歌詞入力・リアルタイム演奏アプリケーション」、ウェブブラウザー上のピアノロールエディターにメロディを入力し、歌詞とあわせて送信することでNSX-1で歌わせる「歌詞入力機能付き1トラックシーケンサー」、ウェブブラウザーに接続されたマイクからの発話音声を音声認識によってテキスト化し、そのテキストをNSX-1で発声させる「音声認識・発音アプリケーション」の3つを公開予定。

 さらに今後、NSX-1を搭載したコンシューマー向け製品が各社から登場する予定だ。

 電子工作用部品を販売する株式会社スイッチサイエンスでは、汎用マイコン基板「Arduino」用のインターフェイスとして「eVY1 SHIELD」を10月下旬に発売する。これをArduinoにアドオンし、USBなどでスピーカーと接続することでNSX-1を音源として使用できるという。

 株式会社学研教育出版では、「大人の科学」シリーズとして、NSX-1のeVocaloidを搭載した製品を来春に発売する予定。

(永沢 茂)