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米Microsoft、AppleのiWork無料化をあざ笑う~しかしOS無料化には触れず

 米Microsoftは同社公式ブログで23日、米Appleの主張に対する反論を掲載した。

 反論は、Microsoftコーポレートコミュニケーション担当バイスプレジデントであるFrank Shaw氏が行った。

 文面にはMicrosoftのAppleに対するいらだちが随所に表れている。主な論点として、MicrosoftのSurfaceとiPadを比較し、Microsoftの方が人々の働き方についての理解度が高く、iPadで仕事はできないとしている。しかしながら、AppleがOS X Mavericksを無料アップグレードとしたことについては一切触れていない。

 Shaw氏はSurfaceについて、「ゆったりとすることも、真剣になることもできる、たったひとつの、簡単で、手ごろなデバイスだ」と説明した上で、iPadなどのタブレット端末については、「タブレットで時間つぶしの手助けをするのは比較的簡単なことだ。ただ書籍、音楽、ビデオ、ゲームを与えたらいい。後は勝手にやれる。ほとんどのタブレットはそんなものだ」と指摘。そしてMicrosoftと対比し、「Microsoftは、この地球上の誰よりも、人々がどのように働くかについて理解している」とし、「それこそが、Surfaceが今日買うことができる最も生産的なタブレットである理由だ」と主張した。

 その上で、AppleのiWork実質無料化について触れた。iWorkを「水で薄めた」アプリと指摘し、暗にMicrosoftのOffice製品と比較にならないと冷やかした。こうしたアプリの存在が「それは彼らのエンターテインメント端末が、実際に仕事で使用できるマシンだということを人々に納得させるための努力」であり、その人気のないアプリを無料化したとしても大きな影響がないと切り捨てた。

 この考えの基に、「私は、彼らが、他の人々のように、我々の方がより良い解決策を構築したという事実に目覚めたのではないかと思う」とまで言及している。

 しかしShaw氏がこれだけAppleの発表イベントについて批判しておきながら、OS X Mavericksの無料アップグレードについては一言も触れなかったことは興味深い。

 Microsoftの昨年のWindows部門売上は192億3000万ドル(約1兆8700億円)で、Microsoftのビジネスモデルの基盤である。Appleの戦略はMicrosoftのこのビジネスモデルをおびやかしかねない。

 特に、AppleがMacの2007年モデルからでも一気に最新OSに無料アップグレードできることを発表したことは、企業のIT部門にとっても魅力と映ってもおかしくはない。多くの企業は今もWindows XPからWindows 7あるいはWindows 8.1/8にアップグレードするための高額の費用に悩まされている。

 昨日の発表会でAppleは「OSアップグレードが無料の新時代を開始する」と宣言した。この表現が今後どれほどの期間にわたって維持されるのかはいまだ不明だ。しかしこれが保証されることがあれば、スマートフォンのOSアップグレードが無料であるように、PCでもOSアップグレードを無料にすることは当然という考え方が芽生えてくる。1台あたり数万円のアップグレードを必要とするWindowsには大きな打撃となりかねない。

 それだけでなく、Appleは無料アップグレードによって複数のOSをサポートし続けるフラグメンテーションの問題を解決しやすくなる。アプリケーション開発者にとってもメリットがあるのだ。

 OS XのシェアはWindowsに比べればまだ圧倒的に小さい。それでも今日のMicrosoftの反応を見る限り、AppleはMicrosoftに正面攻撃をかけたと言えそうだ。

(青木 大我 taiga@scientist.com)