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Motorola、ブロック組立スマホ「Project Ara」計画~今冬にもキット公開へ
(2013/10/30 11:04)
米Google子会社のMotorola Mobilityは30日、レゴブロックのようにパーツをはめ込むことで自分専用スマートフォンを作れるハードウェアのオープンプラットフォーム「Project Ara」を発表した。
Project Araでは、スマートフォンの部品を固定し、部品の間の通信を行うための「フレーム」に、さまざまな機能を持つモジュールをはめ込む、または組み込む。いわば自作PCのように、個人が欲しい機能を持つスマートフォンをカスタマイズできる。
モジュールには、プロセッサー、ディスプレイ、キーボード、バッテリー、Bluetooth、加速度計等のさまざまなセンサーなど、現在スマートフォンで利用されているあらゆる機能が考えられる。
今はスマートフォンの新機種が発売されると、丸ごと買い替えなければならない。しかしAraなら、自分のニーズに合わせてモジュールを取り替えるだけで済む。
たとえば、動作が遅くなってくると最新のアプリケーションプロセッサーに取り替えるかもしれない。すべての作業をクラウドで行う人は、ストレージを外して大きめのバッテリーに置き換えることもできる。こうしたさまざまなニーズに柔軟に応えることが可能だ。
Motorolaはその目標について、「我々は、Androidプラットフォームがソフトウェアのために成し遂げたことを、ハードウェアに対してもやってみたいと考えている。それは、活気のあるサードパーティ開発者のエコシステムを作り、参入障壁を下げ、技術革新のペースを上げ、開発スケジュールを大幅に圧縮することだ」と説明する。
Motorolaはこのビジョンを実現させるため、考え方をほぼ同じくする活動を続けてきたPhonbloks創業者でオランダ人のDave Hakkens氏とPhonbloksコミュニティーと提携することにした。
Hakkens氏のそもそもの動機は廃棄物削減にある。スマートフォンの新機種が発売されるたびに、旧機種が次々に捨てられるからだ。必要な部品だけ取り替えられれば、廃棄物を減らすことができる。そのためには長く持ちたくなるようなスマートフォンが必要だった。Hakkens氏はPhonbloksを立ち上げ、賛同者の熱心なコミュニティーを育て上げ、多くの注目を集めてきた。
MotorolaがPhonbloksと提携した理由として「我々は深い技術的な仕事をした。Daveはコミュニティを作り上げた。オープンな力には両方が必要だ」と説明した。
Motorolaは「オープン」を強調する。そのため会社内で秘密裏に開発を進めるのではなく、Phonbloksコミュニティーにも開発プロセスをオープンにし、そのフィードバックを受けながら開発を進める。
予定ではこの冬にも、アルファ版モジュール開発者キットを公開し、一部開発者に招待状を送り、「Project Ara」プラットフォーム向けモジュール開発コンテストを開催する意向だ。
PhonbloksのWebサイトにはすでにAraの動画がアップロードされており、デザインのプロトタイプを見られる。ここでどんなふうにモジュールを組み合わせてスマートフォンをカスタマイズできるか見ることができる。
Motorola公式ブログの発表文には、このプロジェクトが発足したのが「1年以上前」と説明している。米Googleが米Motorola Mobilityを買収したのは2012年5月22日だ。それでGoogleは買収完了直後から、この開発を進めてきたことになる。
さらに、Motorolaが社内でさまざまな「センサー」を開発していることが噂としてよく知られていた。今回モジュールの1つとして「パルス(脈拍)酸素濃度計」が挙げられていることも興味を引く。今後Motorolaから、これまでには想像すらしなかったようなスマートフォン向けセンサーが登場してくる可能性もある。
PhonbloksのHakkens氏は、Motorola以外にも、Intel、Nokia、Qualcomm、Firefox、ZTE、Sennheiser、Synaptics、Philipsなど、世界中のハイテク企業と話し合いを持ってきたことを明らかにしている。その中でMotorolaと提携したのは、携帯電話の創世記から開発してきたその技術力が決め手となったとしている。 PhonbloksとそのコミュニティーはMotorolaと協力するが、独立した団体として存続を続けるとしている。
スマートフォンの部品を取り替えられるようにしたいという願望は早くから存在した。これまでにいくつものアイディアが提出され、大学でも研究が行われてきた。Phonbloksもその1つだ。しかし、アイディアとして誰もが実現させたいと思うものの、到底無理だとしてこれまでは実現してこなかった。
しかし、今回は違う。オープンなエコシステムを推進したいGoogleの資金力に裏打ちされ、携帯電話を熟知しているMotorolaが参入したからだ。
Motorolaの技術者なら、このアイディアを知らないはずはなく、それが不可能と考えられてきた理由もよく知っているはずだ。それでもこのプロジェクトを発表したことは、実現に向けて大きな一歩を踏み出したと期待して良さそうだ。