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児童ポルノをファイル共有している人に警察からの警告メールが届く、4月より

 P2Pファイル共有ネットワークでの児童ポルノの拡散を防止するための取り組みが官民連携でスタートする。児童ポルノを共有しているノードの運用者に対して、4月1日以降、警察庁からの警告メールを送信する。

 警告の対象となるのは、裁判所ですでに有罪判決が確定した児童ポルノ事件にかかわる児童ポルノ画像・動画ファイルを「Share」で共有している人。警察庁は、把握した該当ノードのIPアドレスやファイル名などの情報をリストアップし、一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)に提供する。ICSAでは、リストアップされたノードで共有されているファイルが本当に有罪確定した児童ポルノかどうか、ファイルのハッシュ値に基づいて照合。同一ファイルと確認できた場合、そのIPアドレスなどの情報をISPごとに振り分けて連絡する。その後、各ISPから該当する加入者に対してそれぞれ警告メールを送信する流れ。なお、警察庁では有罪が確定した児童ポルノファイルのハッシュ値を順次、ICSAに提供。ICSAではこれをデータベース化していく。

 警告メッセージ自体は警察庁が発信するものだが、警察庁が該当ノードのユーザーを特定して直接メールを送信するのではなく、そのユーザーが加入しているISPに代わりに送信してもらうかたちだ。本来ならばファイル共有ネットワーク上で児童ポルノを共有している時点で捜査・摘発の対象となる可能性があるわけだが、まずは警告メールによって、ファイル共有ソフトによる児童ポルノの流通が違法行為であることを周知し、ユーザーによる削除を促す。

 ICSAでは、今回の取り組みを開始するにあたりガイドラインを策定。“通信の秘密”との関係を整理するとともに、ISPの対応手順などを示している。また、「児童ポルノ画像を拡散させている疑いについて」というタイトルで警察庁がユーザーに発信するメッセージの書式も掲載。本文では「ファイル共有ソフトのキャッシュフォルダーのファイルは、他の利用者からダウンロード可能であり、放置すると児童ポルノ画像を拡散することとなる」「認識を持ちながら、児童ポルノ画像の拡散を続けた場合、刑事罰が規定されている児童買春・児童ポルノ禁止法第7条に抵触する恐れがある」などと説明し、キャッシュフォルダー内の該当ファイルを削除するよう求める。警察庁のウェブサイトには、Shareにおけるファイル削除手順の説明ページも設けた。

警察庁からユーザー向けに発信する文書の書式(ICSAの「ファイル共有ソフトを悪用した児童ポルノ流通への対応に関するガイドライン」より)

 ファイル共有ネットワークによる違法ファイル流通に対しては、著作権侵害対策で同様の取り組みがすでに2010年より行われている。ISP団体や権利者団体などで構成される「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会(CCIF)」が、著作権侵害ファイルの共有者に対して警告メールを送信する取り組みを実施している。

 また、児童ポルノについても、滋賀県警とケイ・オプティコムが協力して2012年に開始していた。ICSAによる今回の取り組みは、同様のスキームを全国的に展開するものだ。ICSAと参加ISPが、児童ポルノの被害者保護の観点から、警察庁および総務省と連携して実施する。

 4月1日の開始時点でこの取り組みに参加するISPは、アイ・シー・シー、青森ケーブルテレビ、伊賀上野ケーブルテレビ、インターネットイニシアティブ、STNet、EditNet、NECビッグローブ、エヌ・ティ・ティエムイー、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズ、NTTぷらら、共立コンピューターサービス、ケイ・オプティコム、KDDI、コミュニティネットワークセンター、ソネット、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB、中部テレコミュニケーション、テクノロジーネットワークス、TOKAIコミュニケーションズ、ニフティ、松阪ケーブルテレビ・ステーションの計23社。

 警察庁の発表によると、2013年における児童ポルノ事犯の送致件数は1644件で過去最多。このうち507件がファイル共有ソフトを利用した事犯だったという。

 ICSAでは2011年より、インターネットユーザーからのウェブアクセスをISPが強制的に遮断する“ブロッキング”というやり方で、ウェブ上で削除されないままになっている悪質な児童ポルノ画像の拡散防止に取り組んできた。今回、ブロッキングでは遮断できないP2Pファイル共有ネットワークについても児童ポルノの拡散防止の取り組みを開始した。

【お詫びと訂正/追記 13:25】
 記事初出時、警告対象となるファイルについての説明で「ZIPファイル」との記述がありましたが、これは誤りです。お詫びして訂正いたします。また、ICSAが公開したガイドラインなどに基づき、記事を一部加筆・修正しました。

(永沢 茂)