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楽天、koboと楽天ブックスを9月に完全統合

 楽天株式会社は21日、子会社のkoboが展開する電子書籍事業「楽天kobo」について、出版社や書店を対象としたイベント「楽天koboカンファレンス 2014 Spring」を開催した。

 楽天koboの日本語コンテンツ数は当初目標としていた20万冊を超え、月間売上も1年前の約6倍に成長していると事業が順調に推移していることをアピール。今後の戦略としては、コンテンツのロングテール拡充、特に雑誌に注力するとともに、自費出版にも取り組むと説明。また、楽天ブックスとの統合を2014年9月に完了させ、出版社向けにはマーケティングのためのBIツールを提供するとした。

楽天会長兼社長の三木谷浩史氏

「電子書籍で日本の書籍市場を右肩上がりに」三木谷氏

 イベントの冒頭では、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が挨拶に立ち、米国での電子書籍の状況などについて説明した。米国では電子書籍を含めた書籍市場全体が増加し、読書時間も増加傾向にあるといった調査結果や、2017年には電子書籍が紙の書籍の市場を上回るといった予測を紹介。一方、日本の紙の出版市場は減少を続けているが、電子書籍によってこれを反転させることが可能だという見通しを語った。

米国では書籍市場全体が成長
読書時間も増加傾向

 三木谷氏は、「電子書籍は単に紙の書籍を電子化したものではない」として、電子書籍により学習などの分野にも革命的な変化が起きており、紙の書籍では考えられなかったさらなる可能性があると説明。楽天が2013年9月に買収した「Viki」では、クラウドソーシングによりドラマや映画などに字幕を付けるというサービスを提供しており、書籍などの日本の素晴らしいコンテンツも、多言語化することで海外に輸出していけるとした。

 また、同じく楽天が2014年2月に買収したメッセージングアプリ「Viber」には世界中に3億人のユーザーがあり、年内には5億人を目指しているが、こうしたユーザー層に向けて日本のコンテンツを紹介していきたいとした。

日本の電子書籍市場も成長
楽天が買収した「Viki」を紹介

 三木谷氏は、北米市場ではソニーの「Reader Store」からのユーザー移管をkoboが引き受けるなど、「世界の中ではAmazonと楽天kobo、この2つしかなくなりつつある」状況だとして、日本のコンテンツを中心に、世界に通用する電子書籍ビジネスモデルを構築していきたいと説明。koboのコンテンツも20万冊を超え、「だいたいのタイトルはある」状態にはなったが、これが「全部ある」になればさらに成長は加速していくとして、出版社へのさらなる協力を呼び掛けた。

楽天ブックスとkoboを9月に完全統合、出版社向けツールの提供も

 ブックス事業部上級執行役員の舟木徹氏は、2013年度のkobo事業の振り返りとして、日本語コンテンツ数は毎月6000冊以上増加し、2014年1月には当初目標としていた20万冊を達成したと説明。また、品揃えについても、ベストセラーを中心に、人気作家の初めての電子化コンテンツなども取り揃えることができたとして、出版社への感謝を述べた。

ブックス事業部上級執行役員の舟木徹氏
日本語コンテンツは20万冊を突破

 koboの事業戦略としては、従来の専用リーダー端末に加え、タブレットやスマートフォン、PCへの対応を推進。紙の書籍を販売している「楽天ブックス」との統合も進めてきたと説明。テレビCMについても、以前は端末自体を訴求ポイントとしていたのに対し、2014年2月に放映したテレビCMでは書籍の品揃えを訴求ポイントとしており、今後もコンテンツを中心にアピールしていきたいと語った。

 また、書店との取り組みも進めており、26社の書店でkoboの端末を扱ってもらっているが、それだけで終わるものではなく、ゆくゆくはコンテンツも店頭で販売したいと説明。経済産業省が進めている「フューチャーブックストアフォーラム」に参加するなど、店頭でのコンテンツ販売を積極的に推進していきたいとした。

マルチプラトフォームに展開
楽天ブックスとの統合を開始
テレビCMでは品揃えを訴求するように
書店との取り組みも推進

 今後の戦略については、コンテンツの品揃えにおけるロングテールの強化、特に雑誌に注力していくとして、楽天傘下の仏Aquafadasの技術を活用した雑誌コンテンツの拡充に取り組んでいくと説明。また、自費出版にも取り組んでいくとした。

 楽天ブックスとの統合については、9月末の完全統合を目指し、さらに機能を拡充していくと説明。出版社向けには、リアルタイムで販売状況などを確認できるBIツールを提供し、マーケティングなどに活用できるようにしたいとした。

 また、リアル書店との連携も強化し、来店によりポイントが貯まる「楽天チェック」アプリからの誘導によるアフィリエイトなどの仕組みを検討していくと説明。楽天グループ全体としても、「楽天Koboスタジアム」のネーミングライツ獲得など、グループシナジーを活用し、koboのブランド浸透を図っていくとした。

今後の戦略概要
雑誌を中心にコンテンツを拡充
9月末に楽天ブックスと完全統合
出版社向けにツールを提供
書店との関係を強化
「コボスタ」などでブランドの周知を図る

(三柳 英樹)