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米eBay、PayPalの分離を発表、「最大限の柔軟性と競争力保持のため」

 米eBayは9月30日、子会社でオンライン決済サービスの米PayPalを2015年後半に別会社として分離すると発表した。「コマースと決済の業界の変化と革新の水準は、競争力を維持し、世界的なリーダーシップを発揮し続けるために最大限の柔軟性を必要とする」と、声明でその理由を説明している。

 市場はこれを好感し、発表後、eBay株価は7%上昇した。

 eBayの大株主で、“物言う株主”として著名なCarl Icahn氏が、このPayPal分離を強く主張していた。これに対し、現社長兼CEOのJohn Donahoe氏は統合していることのメリットを主張し、両者が対立していた。

 Donahoe氏は、「当社が先般から述べているように、eBay取締役会には、定期的に当社の成長戦略と構造を見直し、すべての選択肢を評価する習慣がある」と説明し、Icahn氏の主張を直接的に取り入れたわけではないことを示唆。

 これに対しIcahn氏は「我々は、eBayの取締役会と経営陣がこの分離に関して責任ある行動をしたことをうれしく思う。彼らが取るべき行動としては少し遅かったかもしれないが、我々が期待していたよりは早かったと言えるだろう」と、少し皮肉の混じった声明文を発表した。Icahn氏は「Apple Pay」の台頭などを挙げ、分離が「早ければ早いほどよい」とも主張している。

 年間収益はeBayが99億ドル、PayPalが72億ドル。両社合わせた成長率は年率10%だが、過去1年間のPayPal収益は19%上昇している。eBayは2002年にPayPalを15億ドルで買収したが、その後のPayPalの急成長はeBayに大きく貢献してきた経緯がある。PayPalの決済システムは世界203市場で利用でき、25の通貨向けにローカライズされている。

 それでもAppleが最近発表したApple Pay、中国Alibabaの決済サービス「AliPay」、Googleの「Google Wallet」などに加え、さまざまなモバイル決済ベンチャーが次々に登場し、厳しい競争となっている。

 PayPalを分離することによって、両社が激しい競争の中で柔軟に行動し、提携や買収を行えるようになるほか、両社が統合しているメリットは徐々に薄れていくと予測されること、また、長期的な株主利益に寄与することなどが分離の理由として挙げられている。

 今回の発表に関連して、同日付でPayPal新社長にAmerican ExpressのDan Schulman氏が就任すると発表された。Schulman氏は分離後、PayPal新会社のCEOに就任することになっている。Schulman氏はAmerican Express以前に携帯キャリアVirgin Mobileの創業CEO、米Priceline GroupのCEOなどを歴任した経験を持つ、決済とモバイルテクノロジービジネス双方に通じた人物とされる。

 また、eBay新会社のCEOとして、現eBay Marketplaces社長であるDevin Wenig氏が就任する。

 なお、eBay現社長でCEOであるJohn Donahoe氏とCFOのBob Swan氏は分離手続きを取締役会のもとで監督した後、新会社の両方もしくはどちらかの取締役に就任する予定。しかし、新会社の経営陣に加わることはないとしている。

(青木 大我 taiga@scientist.com)