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グイン・サーガ読破専用機も~全集組み込み型電子書籍端末、大日本印刷が発売

完全オフライン仕様の「honto pocket」商品化

 大日本印刷株式会社(DNP)は、独自開発した電子書籍端末に作家全集などを収録したパッケージ商品「honto pocket(ホントポケット)」の販売を12月11日に開始すると発表した。まずは早川書房から出版されているミステリー全集など5タイトルをラインナップ。東京都内の丸善およびジュンク堂書店の計4店舗で限定販売する。2015年1月からは、DNPグループの株式会社トゥ・ディファクト(2Dfacto)が運営するネット書店「honto」でも販売する予定。

 作家全集やシリーズなどの大量のコンテンツでも携帯でき、年配の人でもフォントを拡大して読めるといった電子書籍/電子書籍端末のメリットはそのままに、あらかじめ端末にコンテンツを収録して販売することで、インターネット接続や会員登録、コンテンツの購入・ダウンロードといった操作不要で、購入してすぐに読書を楽しめるようにした。電源も単3電池×2本となっており、バッテリーの充電も必要ない。

 その一方で、ユーザーが後からhonto pocketにコンテンツを購入して追加したり、入れ替えたりすることは全くできない。そのため、honto pocketのパッケージはハードウェアこそ同一だが、タイトルごとに専用機というかたちになり、それぞれ専用のハードカバー本風の装丁の外箱を用意。複数購入した場合は、パッケージを紙の本と同じように本棚に並べておけるようにした。

 初回ラインナップのタイトルと価格(税別)は、「アガサクリスティー全集」(100冊)が7万4800円、「名探偵ポアロ・シリーズ」(43冊)が3万2800円、「エラリイ・クイーン選集(27冊)が1万9800円、「ホームズ&ルパン 名作競演集」(14冊)が9800円、「グイン・サーガ全集 上巻」(80冊)が3万9800円。DNPによると、電子書籍版を買いそろえるよりは若干高い価格設定だが、紙の本で買いそろえるよりも2割程度安価だという。

 このほか、2015年2月に「グイン・サーガ全集 下巻」を発売することが決まっているほか、今後、根強いファン持つ文芸大作などをパッケージ化していきたい考えだ。出版社向けのサービスとして、保有する出版物の電子化およびhonto pocketへの収録などを行うサービスも展開する。

 honto pocketは、東京国際ブックフェアの展示会ですでにコンセプトモデルとして紹介されていたものだ。当初は他社製の既存電子書籍端末を用いたものだったが、今年の東京国際ブックフェアでは、形状も独特な独自端末が展示され、それが今回、正式に商品化された。

 ディスプレイには、E Ink製5インチ電子ペーパー(800×600ピクセル)を採用。本体内には文庫本で最大100冊分のEPUB電子書籍を収録できる。アルカリ単3電池×2本で3000ページ以上の連続使用が可能(1ページ30秒表示ペースの場合)。

 本体サイズは144.0×105.0×8.5mm(縦×横×厚さ、突起部含まず)、重さは約130g(電池含まず)。操作ボタンは、左・右のページめくり/移動ボタン、決定/メニューボタンの計3つのみで、このほかは電源スイッチがあるだけのシンプルな設計だ。機能もフォントの拡大・縮小(7段階)など必要最小限にした。

 3つのボタンが付いているディスプレイ下部の裏側が電池スペースとなっており、この部分のみ横112.5mm・厚さ21.0mmと丸く膨らんでいるが、これがちょうど重心が手に収まりグリップしやすいデザインになっている。

万一、端末が故障してしまった際も修理・交換により収録電子書籍の“利用権”は維持されるという。端末には1年間の保証を付けるほか、その後も有償で修理・交換対応を行う予定

 なお、honto pocketのハードウェア自体は電子ペーパーディスプレイを採用した電子書籍端末と言えるが、DNPでは、従来の電子書籍端末の「煩雑さすべて取り除いて、とにかくシンプルにした」と説明。「電子書籍端末ではなく、“電子の本”というコンセプトで事業化を目指し、新しい読書体験を提供する」とアピールしている。

大日本印刷株式会社役員兼丸善CHIホールディングス株式会社代表取締役社長の中川清貴氏(左)、株式会社トゥ・ディファクト代表取締役社長の加藤嘉則氏(右)

(永沢 茂)