イベントレポート

第20回東京国際ブックフェア

乾電池駆動の電子ペーパー端末「honto pocket」、ハルヒ11作品入りで書店販売?

 東京ビッグサイトで開催中の「第20回東京国際ブックフェア」と「第17回国際電子出版EXPO」の展示会場の中から、株式会社東芝、凸版印刷株式会社、大日本印刷株式会社、株式会社パピレス、株式会社廣済堂のブースの模様をレポートする。

3日午前に行われたテープカットの模様。「第20回東京国際ブックフェア」の名誉総裁として、秋篠宮同妃比両殿下がご参列された

東芝、「BookPlace」向け読み上げ機能をデモ、蒼姫ラピスや山口勝平氏の声で

 東芝は、4月4日にオープンした電子書籍ストア「BookPlace Cloud Innovations」を中心とした展示内容だ。

東芝のブース

 Android/iOS向けアプリ「BookPlace Reader」や専用電子書籍端末「BookPlace MONO」へ、音声合成エンジン「ToSpeak」を搭載した音声読み上げ機能を7月中に追加する予定になっている。音声読み上げは、別作業をしながらの読書や、視覚障害者向けに一定のニーズがあるが、対応している電子書店は少ない。参考展示だが、声データベースとして「蒼姫ラピス」やご当地キャラ「大崎一番太郎」(声優:山口勝平氏)といったキャラクターのデモが目(というか耳)を引いた。

参考展示「蒼姫ラピス」
参考展示「大崎一番太郎」

凸版印刷、電子書籍用のオリジナル新書体「本文用明朝体」など

 凸版印刷のブースでは、電通と共同で研究中の、マンガのソーシャルリーディングプラットフォーム「MANGAPOLOプロジェクト」を紹介。例えばYouTubeで「DRAGON BALL」のマンガ版を再構成した動画配信を行うといった実験的なプロジェクトだ。

「MANGAPOLOプロジェクト」は、YouTubeで「DRAGON BALL」の配信を行なっている

 電子書籍用に新開発されたオリジナル書体「本文用明朝体」は、印刷用の書体より起点・終点が太めに修正されている。現在用いられている「凸版明朝体」は画面上だとやや線が細く感じられていたので、新書体はクッキリして読みやすい。

新書体は印刷用の書体より起点・終点が太くてクッキリしており見やすい
タブレットの液晶ディスプレイ表示における新書体(右)と旧書体(左)の比較
本文用の新明朝体に続き、2014年に提供開始予定の本文用新ゴシック体。「本文を横組で表現した場合に最大の読み心地が得られるようにデザインを改良する」としており、「これまでのゴシック体のデザインで多く見られた文字の上下のラインをそろえるデザインではなく、文字が持つ固有の大きさや形を尊重し、文章に自然な抑揚を持たせることによりリズム感があり心地よく読み進められるデザイン」とのこと

 このほか、バンダイナムコと共同で開発中の「中吊りアプリ」は、電車の中吊り広告から書店や電子書籍サイトへの誘引を図るというもの。中吊り広告の中の気になる記事を、1記事単位で購入できるような仕組みを目指しているとのことだ。

大日本印刷、児童向け電子書店「honto for ニンテンドー3DS」など

 大日本印刷は、書店・通販・電子書籍のハイブリッド型総合書店「honto」を中心としたコンシューマー向けサービスから、電子書店構築サービスやコンテン制作支援など企業向けサービスまで幅広い展示内容だ。

 ブースで配布されているオフィシャルマガジン「honto+」創刊号は、3日から電子書籍版が無料配信、4日から紙版が丸善、ジュンク堂、文教堂書店の店頭で無料配布される。

小冊子「honto+」は、提携書店の丸善、ジュンク堂、文教堂書店で配布される

 また、任天堂と提携して今秋からサービスを開始する、児童向け電子書店「honto for ニンテンドー3DS」が展示されていた。サービス名には「honto」の名前が冠されているが、会員IDは共通ではなく独立した別個のサービスとのことだ。

今秋開始予定の「honto for ニンテンドー3DS」

 参考展示されていた「honto pocket」は、乾電池駆動の電子ペーパー端末。単4電池2本で、1日30分の読書で1年もつそうだ。画面サイズは5インチ。スマートフォンなどからBluetoothでファイルを転送する仕組みになっているという。どういったビジネスモデルにするかはまだ検討中とのことだが、例えば空港の書店で「全巻セット」を端末に入れたものを数千円で販売する、といったアイデアがあるようだ。

 実際、展示ブースでは角川書店の協力により、文豪の名作の文庫本などともにhonto pocketを展示。「“本屋で買って、すぐ読める”電子書籍のコンパクトなパッケージ」というキャッチフレーズで、「涼宮ハルヒ」シリーズ11タイトルをセットにしたパッケージサンプルも展示していた。

参考展示の「honto pocket」は、5インチの電子ペーパー端末
例えばシリーズ全巻まとめてこれ1台、といった販売手法を構想しているそうだ

 なお、インプレスR&Dと共同で推進していた「オープン本棚プロジェクト」は、今年は展示がなかった。

パピレス、ガラケーの電子コミック手法を大画面で再構成する「ReComic」

 パピレスは、電子貸本「Renta!」を中心とした展示内容だ。6月25日から開始した、ストーリー体感型“感じる電子コミック”「ReComic」を紹介している。これは、ストーリー展開や登場人物の心理的な動きに合わせ、コマやセリフにアニメーションや色などのさまざまな演出を付加したもの。フィーチャーフォン向け電子コミックでよく用いられていた手法ではあるが、大画面向けに従来の漫画を再構成し、動きのある“リッチコンテンツ”に仕上げているという点に今後の可能性を感じさせる。

パピレスのブース
「ReComic」の紹介

廣済堂、女性向け電子書籍ストア「BookGate Cafe」に合わせたカフェ風ブース

 廣済堂は、グランドオープンしたばかりの女性向け電子書籍ストア「BookGate Cafe」をイメージした、カフェ風のブースを構えている。ほかにも総合電子書店「BookGate」、美術館や博物館情報サイト/アプリ「ミュージアムカフェ」、デジタル新聞配信サイト/アプリ「NewsMediaStand」などを紹介している。ブースではお茶やコーヒーが提供されていたり、花王ソフィーナ化粧品のプレゼント抽選会など、ちょっとユニークな展示内容だ。

廣済堂のブース
グランドオープンしたばかりの「BookGate Cafe」

(鷹野 凌)