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「群書類従」も電子化、2014年の国内電子書籍は専門書が充実の傾向

 12月18日に開催された「第8回JEPA電子出版アワード」の授賞式では、アワードの選考委員を務めた電子出版・電子書籍専門メディアの編集長らによるパネルディスカッションも行われた。「今年の電子出版トレンド」を示すキーワードとして、“無料コミックアプリ”“定額制読み放題サービス”“電子図書館”“紙&電子”“リアル書店連携”“セルフパブリッシング”“プリントオンデマンド”などが挙がったが、本記事ではその中から、株式会社hon.jp代表取締役社長の落合早苗氏が報告した国内の電子書籍配信統計データについて紹介する。

(左から)パネルディスカッションの司会を努めた井芹昌信氏(JEPA理事/選考副委員長)、パネリストの落合早苗氏(hon.jp/選考委員)、西尾泰三氏(ITmedia eBook USER/選考委員)、福浦 一広氏(OnDeck/選考委員)

 電子書籍検索サイトを運営するhon.jpでは、電子書籍検索用メタデータのデータベースを独自に構築している。それによると、2014年に日本で配信された電子書籍・電子雑誌は72万タイトルと推計しており、2013年の60万タイトルから18.3%の増加。増加率はやや鈍化したものの、携帯電話向けを除くと68万タイトルとなり、2013年の45万タイトルから51.1%の増加になっている(集計対象や集計方法などは、hon.jpのプレスリリースを参照)。

 なお、72万タイトルのうち、紙の書籍を電子化したタイトル(紙の書籍のISBNと関連付けられるタイトル)は約18万タイトルで、2013年に比べてかなり増加したという。

 また、同じくこの1年で増加が顕著だったものとして、「Amazon Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)」や「パブー」などの“セルフパブリッシング”のタイトルがあり、同人コミック配信サイトなども含めると、約2万7000タイトルの新刊が配信されたとしている。

国内で配信される電子書籍・電子雑誌タイトル数の推移(hon.jpのプレスリリースより)

 落合氏は、配信タイトルの単価についても説明。最安値が10円、最高値が8万2286円(紀伊國屋書店で販売した手塚治虫作品400巻にカレンダーが付いているタイトル)で、平均単価は626円。2013年の562円よりも上昇した。また、最多価格帯も400〜500円から500〜600円へと上昇傾向にあるとした。

 価格帯の分布を見ると、高額な価格帯の比率が増加しており、2014年は1000円以上のタイトルだけで計10.4%と1割を超えた(2013年は計7.0%)。これについて落合氏は、ユーザーから見ると「電子書籍高いじゃないか!」と言われるかもしれないが、そうではないという。コミックが1000円で売っているわけではなく、全体的に専門書が増え、もともと高額な本が電子化されるようになった背景があるとし、「(電子書籍の)バリエーションが増えてきたと見てもらえれば」と説明した。

 専門書の電子書籍配信を行うようになった出版社としては、人文科学系では青土社、青弓社、国書刊行会、創元社、社会科学系では勁草書房、有斐閣、法律文化社、第一法規などがあるという。また、古典・学術書では汲古書院、笠間書院のほか、一般の電子書籍ストアでは配信されていないタイトルもあり、例えば八木書店の「群書類従」(全133冊)が電子化(紙面の画像表示+フルテキスト検索対応)され、話題になっているという(第8回JEPA電子出版アワードのコンテンツ部門にもノミネートされていた)。このほか、児童書が電子化される事例も多いとした。

 こうした傾向を受けて期待されるのが、専門書の電子書籍を“売る場”だという。今回の第8回JEPA電子出版アワードで大賞に選ばれたのは、JTBパブリッシングの「たびのたね」という電子書籍ストアだが、これは旅に関する電子書籍を扱うジャンル特化型ストアだ。また、医学書・雑誌を専門に配信する「医書.jp」というプラットフォームも登場しているが、人文科学系・自然科学系の専門電子書籍ストアはまだ少ないのだという。

 「総合書店になると、Amazonや楽天Kobo、紀伊國屋書店など、すごく乱暴な言い方をすると資本力のあるところが強くなってしまう傾向が、どうしてもある。電子書籍は非常に一覧性にとぼしい世界。むしろ、小さい専門性の高い本屋さんがたくさん増えた方が、ちょっと面白いことになるんじゃないかなと期待をしているところです。」(落合氏)

(永沢 茂)