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Cerevo、4系統のHDMI映像をタブレットで自在に操り、HDライブ配信もできるスイッチャー「LiveWedge」ようやく発売

 株式会社Cerevoは21日、720pのライブ配信機能を搭載したHD対応ビデオスイッチャー「LiveWedge」を発売した。直販サイト「Cerevo Store」での価格は、9万5237円(税別)。1月27日以降、先行予約分から順次発送予定。

「LiveWedge」と「2015 CES Innovation Awards」を受賞した際のトロフィーを持つ、Cerevo代表取締役社長の岩佐琢磨氏

 LiveWedgeは、スケーラーを搭載した4系統のHDMI入力端子を搭載し、異なる解像度の映像でもスイッチングおよびミキシングが行える。HDMI出力は、プログラムアウトとプレビューアウトそれぞれ1系統ずつ。HDMIの入出力は1080/60pに対応する。また、AUX-IN端子経由の外部音声入力を加えた5系統の音声ミキシングも行える。SDカードスロットを搭載しており、SDカードにマスターアウトの映像を録画したり、SDカード内データの再生が可能。

 チャンネル切り替えやミキシングをワイヤレスで操作できるiPadアプリを無料で提供。HDMIの入力映像を1秒以内の低遅延でタブレットに表示する「タブレット・プレビュー」機能を搭載しており、4入力それぞれの映像をタブレットで確認しながら映像のスイッチング、音声のミキシングが可能。

 アプリは、カット、ミックス、ワイプといったトランジションに加え、1つの映像の中にもう1つの映像を挿入できるピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)機能を搭載。タブレットに表示されたプレビュー画面から、挿入したい映像にドラッグするだけでPinPを表示できる。また、クロマキーによる映像透過・合成機能も備える。なお、チャンネルの切替、カット、ミックス、ワイプなどの操作は、LiveWedge本体でも可能。

iPad専用アプリ画面。タップですべての操作を行える
PinPは、挿入したい映像をドラッグし、大きさや位置をピンチイン/ピンチアウトで指定する
最後にタップすると映像が挿入される
専用アプリではSDカード内のデータをブラウズできる

 同社のライブ配信専用機器「LiveShell PRO」相当のライブ配信機能も装備しており、720/30p(H.264形式で最大10Mbps)のHDライブ配信と映像のスイッチングを1台で実現できる。なお、エンコーダーの割り振りの関係から、ライブ配信、タブレット・プレビュー、SDカード録画は排他利用。例えばライブ配信を開始すると、タブレット・プレビューでは、映像が表示されない(操作は可能)ため、配信時はプレビューアウト用HDMI端子とモニターを接続するか、LiveShell PROなどを併用して、LiveWedgeはスイッチャーとして利用する必要があるが、HDMI入出力には影響しない。

 ネットワークは、IEEE 802.11 a/b/g/nの無線LANと、100BASE-TX/10BASE-Tの有線LANに対応。LiveWedgeの接続形態はいくつかあり、LiveWedgeをスイッチャーとして利用する場合は、LiveWedgeのアクセスポイントモードやWi-Fiルーターを介して、操作用タブレットと接続できる。また、ライブ配信はWi-Fiルーターや有線LAN経由で可能。有線LAN使用時は、アクセスポイントモードをオンにすることで、操作用タブレットを接続できる。なお、タブレットが故障したり何らかの要因でLiveWedgeとWi-Fi接続できなくなった場合でも、本体のボタンのみで配信を続けることができる。

 対応するライブ配信サービスは、「YouTube Live」「Ustream」「ニコニコ生放送」「Limelight」「Akamai」など。動作確認は取っていないが、独自RTMPサーバーでも利用できるという。なお、一部機能は後日実装予定となっており、SDカードへの録画・素材読み込み、SDXCカードへの対応は、3月中のファームウェアアップデートで実施する。また、タブレットでの音声モニターや4:3レターボックスの映像入力も後日対応する。現在、4:3映像を入力すると横に引き伸ばされる状態になるという。

 本体サイズは、270×155×41mm(幅×奥行×厚さ)、重さは約1.1kg。操作用アプリは初代を除いたiPadで利用可能で、Androidタブレット向けアプリは現在開発中。また、iPhone版についてはリリース予定はない。

「LiveWedge」とビデオカメラやアクションカメラを組み合わせれば、最小のマルチカム配信システムが完成する

この3年でライブ配信は身近な存在に

 Cerevoは21日、都内で記者発表会を行い、同社代表取締役社長の岩佐琢磨氏が登壇した。現在、同社から販売しているライブ配信専用端末「LiveShell PRO」だが、ライブ配信専用端末というニッチながらも競合プレーヤーが存在しない商品のため、発売から2年経った今でも販売は好調。10回ほど再生産を行っているという。3年前に発売した「LiveShell」を含めると出荷台数は1万台を突破している。

Cerevo国内外の販売比率はほぼ半々
2012年に発売した「LiveShell PRO」。通常の家電であれば2年も経つと値崩れしてしまうが、Cerevoしか作れない商品のため今でも売れ行きは好調だという

 また、この3年でライブ配信が身近な存在となったが、複数のカメラをスイッチングする本格的な配信となると、高価な機材や知識が必要。さらに、4つのカメラとスイッチャーを利用したライブ配信を行う場合は、大型の機材が必要だった。LiveWedgeでは、4カメラのスイッチングやPinP、クロマキー合成、ライブ配信できる性能を持ちながらも安価で提供。「GoPro」などの小型カメラを利用すれば、機材すべてアタッシュケースに入れて持ち運べるようになる。岩佐氏は「数十万円の商品と比較しても引けを取らず、ライブ配信できるという付加価値もある。プロも唸る商品に仕上げた」と語る。

 なお、LiveWedgeは当初、1年前に発売する予定だったが、度重なる発売延期を行っている。これについては、技術的課題として、価格も性能もアグレッシブな商品のため、社内リソースの調整で苦労したという。また、いくつか取得しなければならない認証周りで手こずってしまい、このタイミングでの発売となったようだ。商品の発表を事前に行った上で発売が1年遅れたが、その間に他社から似たような商品は登場していない。岩佐氏は、「マーケットはあるのに他社が続かなかったため、ラッキーだった」としている。

 販売目標については「いくら売れるのか正直読めません」と岩佐氏。ライブ配信市場が来年どうなるかも予測できない中、同社では確実に今後増える市場と捉えており、LiveWedgeは3年以上続く製品として1万台は超えると予測している。また、そういった不確かなマーケットでも商品を世に出せるのが、ハードウェアスタートアップの強みだとした。

(山川 晶之)