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「Yahoo!カーナビ」でユーザーの走行情報を取得、より高精度な渋滞情報を提供へ
保険会社と協業した運転力診断や、カーテレマティクス事業参入も
(2015/3/11 15:00)
ヤフー株式会社は、スマートフォン/タブレット向け無料カーナビアプリ「Yahoo!カーナビ」の渋滞情報を拡充するほか、三井住友海上火災保険株式会社との協業で安全運転支援の強化を図る。また、同アプリをプラットフォームとしたカーテレマティクス事業「ヤフーカーナビプラス(仮称)」も展開する。東京ビッグサイトで開催中の「第6回国際自動車通信技術展」の同社展示ブースで発表した。
現在提供しているVICSによる渋滞情報に加え、Yahoo!カーナビのユーザーから取得した緯度経度、走行スピードなどのプローブ情報をもとに、混雑箇所(黄色)、渋滞箇所(赤色)のほか、要望の多かった順調箇所(緑)をリアルタイムで表示する。プローブ情報は、リアルタイム情報だけでなく、それをもとにした統計情報も照らし合わせており、情報の密度を高めている。
プローブ情報を組み合わせることで、VICS情報が少ない地方でもより高精度な渋滞情報を提供できるようになり、約18万kmだった渋滞情報対象道路の距離が約85万kmに拡張される。渋滞情報は、目的地までのナビゲーションにも利用され、渋滞を回避したルートを選定する。
プローブ情報は、Yahoo!カーナビのサービス開始当初から取得しており、1日で約136万km、サービス開始後の累計で約2億km分に相当するという。なお、プローブ情報はYahoo! JAPAN IDと紐付いておらず、Yahoo! JAPAN IDでのログイン(VICSをオンにする際に必要)の有無を問わず、個人が特定できない状態で取得しているという。また、自宅にいる場合や電車での移動など、明らかに車で移動していないと判断されたデータはあらかじめ除外されている。
プローブ情報による渋滞情報の提供開始は4月末を予定しており、カーナビ需要が増加するゴールデンウィークまでには間に合わせたいとしている。
三井住友海上との協業による安全運転支援では、Yahoo!カーナビで目的地に到着すると、ドライバーの運転傾向を診断して点数で評価するほか、運転を振り返り、より安全な運転を行うようアドバイスする。三井住友海上では、2012年から「スマ保『運転力』診断」という運転傾向を診断アプリを提供しており、同アプリと連携する形となる。
三井住友海上は、事故情報データベースも提供する。Yahoo!カーナビではこれまで交通事故総合分析センター(ITARDA)の事故多発地点情報を表示していたが、三井住友海上が持つ過去3年分の数十万件におよぶ事故データベースが組み合わさることになる。これにより、例えば「道幅が細くて危険」「車をぶつけやすい箇所」といった細かな情報も提供できるようになるという。
安全運転支援と事故多発地点情報の拡充は、今夏より提供開始を予定している。
そのほか、車に関する幅広いサービスをユーザーに提供するカーテレマティクス事業「ヤフーカーナビプラス(仮称)」を展開する。自動車損害保険や自動車整備など、Yahoo!カーナビと親和性の高いパートナー企業と、今夏より順次連携していく。
サービス内容はこれから各パートナーと話を詰めていく段階だが、プローブ情報や、スマートフォンのセンサーなどの運転ログ、車の故障データなどをビッグデータ化して活用するほか、点検・車検・修理・メンテナンス・洗車といったカーサービスへ集客するためのO2O商材、ロードサービスなどの有料サービスを提供する予定だ。
なお、あくまでもYahoo!カーナビは無料サービスとして継続し、車が故障した際のロードサービスなど特定の人が必要とするサービスを、ヤフーカーナビプラスを経由して有料で提供することで、Yahoo!カーナビの収益化につなげるという。今後もYahoo!カーナビには広告バナーなどの表示はしない方向だ。
ヤフーの兵藤安昭氏(システム統括本部マップイノベーションセンターサービスマネージャー)によると、Yahoo!カーナビは想定よりも速いペースでユーザーが増えており、300万ダウンロードに達する勢い。渋滞情報として有用なデータが集まったと判断し、プローブ情報による渋滞情報拡充の発表に至ったという。
また、ユーザーの増加により車空間のプラットフォームとしても順調に成長しており、収益化に向けた次のステップとして、カーテレマティクス事業に参入することにした。Yahoo!カーナビがインストールされている300万台の端末を生かしたいという声があり、現時点では発表できないが、複数の企業と商談は始まっており、決まりかけているところもいくつかあるとしている。
そのほか、より高精度な車のデータ取得として、OBD2などの車の自己診断機能との連携も検討したいとしたが、OBD2をベースとした情報取得となるとユーザーのパイが少なくなってしまうため、スマートフォンのセンサーで取得できる情報をベースにしていく。
今後は、ナビゲーションをパーソナライズ化し、「細い道を好むユーザー」「大通りを好むユーザー」といった、ユーザーの好みに合わせたナビゲーションも検討していきたいとした。