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佐賀県武雄市、小学1年生へのプログラミング授業、2年生でも継続

 佐賀県武雄市が取り組んでいる「ICTを活用した教育」の第一次検証報告会において、小学1年生を対象としたプログラミング授業についての報告があった。

 これは、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と東洋大学の協力のもと、2014年10月から実施しているもの。武雄市立山内西小学校の1年生40人を対象に、計8回のプログラミングの授業を放課後に行い、DeNA取締役最高技術責任者の川崎修平氏が講師として登壇した。プログラミング用ソフトウェアは、米MITが開発した「Scratch」をベースにDeNAが小学1年生向けにカスタマイズした。

株式会社ディー・エヌ・エー取締役最高技術責任者の川崎修平氏

 授業は、「パクモン」と呼ばれるオリジナルキャラクターの動かし方からはじまり、生徒が描いた絵の取り込み方・動かし方、条件分岐による目的別の動かし方などを経て、背景やキャラクターを取り入れ、生徒が考えたシナリオに沿った自作プログラムを作成するまでの内容だ。プログラミングは、「おねがいブロック」と呼ばれる命令ユニットを組み合わせることで行う。

プログラミング教材の画面イメージ
授業の後半では生徒自身で考えたキャラクター、ストーリーをプログラミングで動かす単元がある。画像は生徒が作成したシナリオ

 生徒へのアンケート調査では、「わからなかったところはありますか?」という問いに対して、小学1年生にとって難易度の高い「条件分岐」を扱った授業では約半数が「あった」と回答したが、生徒の作品制作が完了した7回目には、その割合が2割ほどにまで減少したという。

「わからないことがあった」に対する生徒の回答(授業ごと)
「プログラミングじゅぎょうはたのしかったですか?」に対する生徒の回答
「何が楽しかったか」に対する生徒の回答(複数回答)

 川崎氏は、実際に授業を受けた子供たちの印象として、飲み込みがとても早いとコメント。中には遅い子もいるが、基本的には操作や使い方、プログラミングを使って行うことなど、簡単な方向を示すと素早いリアクションが返ってくるという。

 また、8回の授業の終了後、教員の協力を得ながら、卒業する6年生に向けたアニメーションを自発的に制作しており、「6年生へのメッセージを自分たちで考えて、こういうものを作れるんだという発想を持って素晴らしい作品ができた。正直なところ感動した」と、川崎氏は評価した。

プログラミングの授業を受けた生徒が自主的に制作した卒業生へのメッセージ。小学6年生の生徒が飛行船に乗り飛び立つストーリーとなっている

 プログラミング教育は、「筋道を立てて考える力(論理的思考力)」「構成等を考える想像力」「空間認識や距離感覚等の立体認識力」の育成を目標としている。定量的な評価は難しいとしており、当面は定性的な評価を行うという。また、プログラミングの授業が生徒へ与えた影響としては、試行錯誤や想像力の発揮などを挙げているが、それが生徒の能力として定着したかどうかは評価できないとしている。

 武雄市では、プログラミングの授業を引き続き行う予定で、2015年度は2年生向けの授業を展開する予定。川崎氏が教壇に立つのではなく、事前にDeNAと小学校の教員でコミュニケーションを取り、教員が授業を行うという。川崎氏も参加するが、教員がひとりだけでもプログラミングの授業が成立するかチャレンジとなる。また、別の小学校でもプログラミング授業を展開する予定だ。

 なお、使用したプログラミング用ソフトウェアの一般公開については、川崎氏は「公開自体は問題無い」としながらも、「ソフトウェアを作ったので好きに使ってくださいと一発で行けるものではない」と説明。最低でも小学3年生まで一通り授業で使用した上で、一番楽しく理解してもらえるようソフトウェアのバランスを見た上でないと公開は難しいとしている。また、教員の教え方やソフトウェアの考え方もまとめた上で提供したいとした。

(山川 晶之)