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全陸地の5m解像度3D地形データ整備完了、「だいち」が残した276万枚の衛星画像もとに「AW3D全世界デジタル3D地図」サービス
(2016/4/27 12:03)
株式会社NTTデータと一般社団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)は26日、全世界の陸地について「AW3D全世界デジタル3D地図」の整備を完了したと発表した。
2011年5月に運用を終了した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測衛星「だいち(ALOS)」に搭載されたセンサーで撮影された画像約276万枚を解析し、全世界の3D地形データを整備した。5m解像度のDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)で世界中の陸地の起伏を表現したデータを提供する。従来の航空写真を用いた手法に比べて低コスト・短納期であるとともに、既存の30~90m解像度の世界3D地図と比べて高い精度を実現している。
AW3D全世界デジタル3D地図はすでに2014年2月に提供を開始しており、データ整備が完了したエリアから順次提供してきたが、このたび全世界の陸地部分についてすべて3D地図の整備を完了した。5m解像度の細かさと5mの高さ精度で世界中の陸地の起伏を表現できる3D地図は世界初だという。高精細の3D地図が世界の陸地全域で整備されたことにより、国境を越えるような大規模な自然災害の予測・対策や資源・環境・交通分野における調査・シミュレーションなどに利用可能となる。
提供するデータの内容は、建物や樹木の高さを除いた数値標高モデル(Digital Elevation Model:DEM)または数値表層モデル(Digital Surface Model:DSM)で、要望に応じて水平位置を示す正射投影(オルソ補正)画像も提供する。用途に応じて利用しやすい提供範囲を選択可能で、価格は1平方キロメートルあたり200円~なお、国や大陸、全世界など広い面積の場合は個別のボリューム価格で提供する。
26日に開催された記者発表会で、NTTデータの筒井健氏(第一公共事業本部e-コミュニティ事業部課長)は、「今後はこれらの3D地図データを利用するアプリケーションを拡充していく予定だ。今、世の中にはさまざまな地理空間情報のシステムやコンテンツがある。それらといかに連携して利用を広げていくかが重要だと考えている。また、地図データの解像度をさらに上げるとともに、世界や日本のさまざまな衛星画像を活用し、地図のアップデートなどのメンテナンスを行っていく予定」と語った。
サービス開始から2年間で、すでに60カ国以上を対象に利用されており、特にアジアやオセアニア、南米、アフリカなどの新興国での利用が多いという。利用分野としては、防災や地図作成、資源調査、電力、水資源、インフラ整備などさまざまな用途に利用されている。また、2016年3月には、内閣府主催の第2回宇宙開発利用大賞において「内閣総理大臣賞」を受賞したという。
NTTデータでは、5m解像度の3D地図を整備する一方で、2015年5月には、米DigitalGlobeの衛星画像を活用したデータを使って2m解像度の高精細版を追加している。今回、5m解像度の標準版が全世界に対応したことにあわせて、高精細版についても、さらに解像度を高めた「50cm解像度」の提供を開始する。こちらは都市計画分野や施設管理分野向けに細かな起伏を表現したもので、標準版に比べてさらに細かい情報が得られる。こ価格は1平方キロメートルあたり5000円~。
これに加えて、建物1棟1棟の形状を表現した「建物3D地図」も提供する。こちらは直近に撮影された衛星画像を用いて鮮度の高い建物形状と高さ情報をベクトル地図として提供するものだ。通信分野の電波障害エリアの把握や、施設計画における見通し解析など、都市エリアにおけるシミュレーション用途に適している。価格は1平方キロメートルあたり1万5000円~。
筒井氏によると、これらの高精細版データは、米DigitalGlobeの衛星「WorldView-3」の画像を利用したもので、30cm解像度の画像を取得できる同衛星の撮影量が増えてきたことと、高精細画像を処理できる技術が発展してきたことにより、50cm解像度のデータの提供が可能になったという。高精細版データの提供エリアについては、国内外を対象に利用者の要望に応じた新規整備を行う予定だ。