「Google Chrome OS」プロジェクトが公開、製品登場は2010年後半


「Google Chrome OS」でメニューを表示した画面

 米Googleは19日、独自開発のオペレーティングシステム「Google Chrome OS」を、オープンソースプロジェクト「Chromium OS」として公開した。

 製品としてのChrome OSの正式発表は2010年初頭に行われ、消費者が製品として入手できるようになるのは1年後、2010年のホリデーシーズン直前になるとしている。

 Chrome OSは、基本的にはLinuxを基盤として起動できるWebブラウザにほかならず、実行できるアプリケーションは、ほぼWebアプリケーションに限定される。OSの名称も、Googleのブラウザである「Chrome」の名前から取られている。

電源オンから7秒で起動

 19日に公開されたデモでは、Chrome OS搭載のマシンは電源ボタンを押してからログイン画面まで7秒で起動した。さらにログインが完了するのに3秒かかるが、この起動時間はさらに短くできるとしている。

 Chrome OSがこれほど速く起動する理由は、多くのOSに含まれている不必要なプロセスを取り除いたからだという。たとえば多くのOSでは、起動時にもはや利用されていないようなフロッピーディスクドライブを認識しようとする。こうしたいわば無駄なプロセスを省くことによって、大幅な速度向上が可能になった。

 さらに、Chrome OSは特定のハードウェアとともに出荷されることから、使用されるハードウェアの種類が既に判明しており、その部分の認識プロセスも省くことができる。また、高速起動とセキュリティ確保のため、独自のファームウェアも開発し、実装している。

起動時に自動アップデート、ユーザーデータは常に暗号化

 Chrome OSは、セキュリティにも重きを置いている。特にファームウェアの中には、公開鍵暗号の鍵が含まれており、起動するたびに、実行されるファイルが正当なものであるかを確認する。

 また起動ごとに自動アップデートが行われる。ファイルシステムは、Chrome OSのシステム部分と、ユーザーデータ部分にあらかじめ分かれており、Chrome OSのアップデートはシステムに対してのみ行われる。カーネル、メモリ、パーティションのそれぞれが正当なものであるかを毎回確認し、一致しない場合には再起動し、正当なファイルを自動的に置き換える仕組みを提供する。ただしこの方法では、ファームウェアを書き換えるなどの攻撃に対する保護は提供できないとしている。

 ユーザーデータ部分は常に暗号化されており、もし盗難にあった場合でもデータが盗まれない構造となっている。Chrome OSの性質上、クラウドにほとんどのユーザーデータが保管されているため、たとえ盗難にあっても、新しいネットブックを購入してログインすれば、データはもちろんのこと、壁紙や設定に至るまで同一の環境を即座に利用できるようになると説明する。またこの仕組みのため、ネットブックを複数のユーザーで共有できるというアイディアも考慮されている。

 Chrome OSは、実行する個々のWebアプリケーションを別のサンドボックスで動作させ、1つのWebアプリケーションがクラッシュしても、他に影響を与えることがないようにしている。

Webアプリケーション専用OS

 Chrome OSは、基本的にWebアプリケーション専用OSだ。記者会見ではプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのSundar Pichai氏が「(Webアプリには)Microsoft Officeというキラーアプリも用意されたことだし」と冗談を述べる場面もあった。

 Googleでは、Chrome OSはWebアプリケーションを使用するためのセカンドマシンとしての用途のみを想定している。そのため、動画や画像編集、高度な文書作成といった用途には、別にマシンを利用することが前提となっている。

 現時点では、アプリケーションマーケットプレイスのような仕組みは用意されていない。しかし将来的には、Webアプリケーションを発見しやすくするための仕組みについて検討を進めている。

 また、様々なアプリケーションを動作させるため、GoogleがChromeブラウザで行ってきた取り組みが、Chrome OSにも組み込まれることになる。たとえば、現時点で複数のプラグインのサポートを進めており、より高度なWebアプリケーションを実行させるため、HTML5のサポートを進める。さらに、Googleが開発を進めている、Webブラウザ上でx86ネイティブコードを動作させる仕組みの「Native Client」プロジェクト(NaCl)もサポートする予定だ。

 デモ時点でのユーザーインターフェイスは、見たところChromeブラウザーと大きな違いはない。1つの相違点は、同社がパネルと呼んでいる小さなオーバーレイウィンドウが、画面下部から迫り出してくることだ。この画面には、チャットや動画など、ブラウザー画面を見ながら行う必要のある機能が組み込まれる。このパネルは見たところ、GmailのToDoリストに似たユーザーインターフェイスを持っている。

 しかし、ユーザーインターフェイスについて、現時点で固まっているものはなく、今後1年間の開発によって大きく変わる可能性があるとしている。

Chrome OSはハードウェアとセットでの提供になる見通し

 Chrome OSは無料で提供されるが、Chrome OSをユーザーが自由に入手して好きなハードウェアにインストールすることはできず、ハードウェアと一緒に出荷されることが前提となっている。現時点では、ネットブックにインストール済みの状態で出荷される計画だ。

 価格帯に関して、Googleは特に検討しておらず、出荷するパートナー企業が検討することになっている。しかしいずれにせよ、Chrome OSをインストールしたネットブックが出荷されるのは1年後になるため、現時点で価格の予測をするのは難しい。

 Googleでは、ユーザーのニーズにあったOSを提供し、多くの人がWebアプリケーションを使える環境を提供することが、結果としてGoogleの利益に繋がると考えている。

 また、ここまでの開発を行うために、GoogleではLinuxカーネルプロジェクト、Moblin、Ubuntu、WebKit、GNUなど、様々なオープンソースコミュニティの協力を得てきたとの謝辞を述べている。

 今後Chrome OSが成功するためには、まだ開発が進んでいない多くの空白部分を埋める必要があるとして、Googleではオープンソースコミュニティに協力を求めている。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2009/11/20 12:04