被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
「宝くじに当選する」と言われて400万円溶かした事例も、悪質な占いサイトの「送信料」を取る手口に注意!
2024年4月26日 07:30
国民生活センターには毎年、占いサイトに関する相談が1000件前後寄せられています。2023年8月に配信された国民生活センターのメルマガ「見守り新鮮情報」には、占いサイトで400万円の被害を受けた70代の方の事例が掲載されていました。
スマートフォンでゲームをしている際、「宝くじに当選するよう導いていく」という広告が表示され、占いサイトにアクセスしてしまったのです。宝くじに当たると言われたので、指示に従って占いサイトから届く文字列を1文字ずつ送り返しました。送信する度に運気が上がると言われたのですが、送信料は1回1500円かかります。
「もう少しで当たる」や「運気が上がる」という言葉を信じて、コンビニ決済やクレジットカードなどを使って課金(支払い)したそうです。紹介された事例では、被害にあったご本人が、足の具合が悪いため友人に会えず寂しかったので、占いサイトとのやりとりが楽しかった、と話していることに驚きます。そのようにして、最終的に400万円を失ってしまいました。
指示通り文字を送ると「送信料」が発生
悪質な占いサイトは、ネット広告で「無料で利用できる」としてユーザーを誘導し、名前とメールアドレス、生年月日を登録させます。すると、ユーザーには大量のダイレクトメールが届くようになります。もちろん、無料で占ってもらえるのは少しだけで、その後は有料サービスに誘導するのです。
上記で紹介したのは、悪質な占いサイトが使うよくある手口で、意味不明の文字列を送ってきて、その文字列を1文字ずつ返信(これが有料)すれば運気が上がり、全ての文字列を送信すれば宝くじの当選番号を導き出すことができる、というものです。
1通1500円かけて全ての文字列を送信しても、「波動が乱れているから調整が必要」などと言われます。途中で辞めようとすると、「最後まで鑑定を受けないと不幸になる」や「今やめるともったいない」などとして、とことん不安を煽ってきます。「結果を出さないと必ず高額当選に導くという実績が崩れるため困る」のように言われることもあるそうです。
400万円を失った70歳代の方が「楽しかった」と言っているように、最初に課金させるまでは親身に話を聞いてくれることもあるそうです。寂しい環境にいるシニアの方は、それだけではまってしまう可能性があります。ネット詐欺の被害者にヒアリングすることがあるのですが、少々怪しいとは思っても、話を聞いてくれる人が他にいなかったから喜んで支払った、という話を聞くケースが多々あります。
また、家の修理など突発的にまとまったお金が必要になったから、占いサイトに課金して金運を上げようとするケースも報道されていました。最後の一文字を送信したのに「惜しい。もう少し気持ちがこもっていれば完了したのですが……」などと返ってくるようです。
このような「占い」の難しい点は、よく調べないと詐欺と断定できないところです。占いなのですから、「言われた通りにしても金運が上がらなかった」と裁判をしても勝てません。本当に鑑定士がいるのか、本当に自分のために占っているのか、誰にでも同じテンプレ文を送っているだけではないか、などを明確にできれば、裁判に勝てる可能性が高くなります。
また、占い師は長期間活動することが多いのが特徴です。ウェブサイトに事業者の情報を掲載していることもあり、弁護士に依頼することで、支払ったお金の一部を返金してもらっている人もいます。暗号通貨や振り込め詐欺だと返金は絶望的ですが、占い絡みのトラブルであれば回収できる可能性があるのです。まずは消費生活相談窓口 消費者ホットライン「188(いやや!)」番に相談してみましょう。
国民生活センターからのアドバイスとしては、無料の段階でも気軽に氏名や生年月日、メールアドレスなどの個人情報を入力しないように、とのことです。メッセージが届いても、返信したり、やりとりを継続しないこと。そして、トラブルになったら、消費生活センターに相談しましょう。
占いは、人生のタイミングによってはあっという間に深みにはまることがあります。病気になった時に見た占いを信じてみたら治った、といった偶然が重なると、一気にスピリチュアルに傾倒してしまう可能性があるのです。
ぜひ、ご両親などと家族でこのようなトラブル事例があることを共有してください。占いに興味がない、というのであれば、なおさら今のうちにデジタルリテラシーを身に付けておき、未来に発生するかもしれないトラブルを回避しましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事
- みちょぱ、団長安田、ゴリけん…タレントが相次いで詐欺被害を告白、その手口とは
- チェーンメールで有名だった「神の手雲」が15年ぶりにLINEで回ってきた
- マイナポイント第2弾に便乗、「獲得したポイント2万円分が失効する」という詐欺メールが拡散中
- 注文した覚えはないのに? Amazonから代引き商品が送りつけられる詐欺に注意
- キャッシュカード&暗証番号を渡さなくても口座のお金が盗まれることも。自称「警察」から口座開設を求められたら要注意
- 「電話料金の未納があります」、フィリピンからNTTファイナンスをかたる怪しい国際電話がかかってきた
- Facebookで明石家さんまさん、大坂なおみさんなど著名人の写真を悪用したネット詐欺が横行中
- URLが本物そっくりな詐欺サイトに注意! 「ホモグラフ攻撃」などの手法を知っておこう
- ノブコブ吉村さんも遭遇、「PCのカメラからシャッター音! 何か撮影された!?」と驚かせる手口とは?
- SMSで不在通知が届いてもURLはクリック禁止! 偽宅配詐欺に要注意
- そのほかの詐欺事例など、この連載の記事一覧はこちら
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと