特集

マイナンバーカードの電子証明書の更新に行ってきた

~いたって簡単、青色申告の個人事業主は注意~

 筆者がマイナンバーカードを取得したのは2019年の夏。5回目の誕生日が来たので、マイナンバーカードの電子証明書を更新してきた。半年ほどすると、多くの読者の手元にも“更新”のお知らせが届き始めると思われるので、初めて行うマイナンバーカードの更新手続きについてお知らせしよう。

確定申告の際、「マイナポータル」にログインすると、電子証明書の有効期限のお知らせが表示された

 筆者は自宅マンションと住民票は愛知県名古屋市(=名古屋市民)で、神奈川県川崎市にオフィス兼住居を借りている。今回、5年ぶりの運転免許証の更新と初めて行うマイナンバーカードの電子証明書の更新の時期が重なったので、名古屋に戻って手続きを行った。知人に「免許証とマイナンバーカードの更新をしに来た」というと、全ての人が「マイナンバーカードの更新?」と聞き返してきた。普及率は70%を超えたマイナンバーカードだが、ぶっちゃけ利用率や理解度が高いとは言えず、「マイナンバーカードの更新……何それ?」と思うのは筆者の知人だけでなく、読者の中にも多いと思う。手続きはいたって簡単、マイナンバーカードを持って役所に行くだけだが、半年~1年後には多くの人が対象となるので、心構えとしてお読みいただきたい。

マイナンバーカードだけ持って役所に行っても更新可能

 他人のマイナンバーカードを見たことはないが、筆者のマイナンバーカードの「電子証明書の有効期限」には油性ペンの手書きで“2024年3月18日”と書かれていた。取得した2019年夏から数えて5回目の誕生日だ。更新期間は3カ月前から誕生日まで。筆者の場合は令和5年(2023年)12月19日から令和6年(2024年)3月18日となる。

「電子証明書の有効期限」には油性ペンの手書きで“2024年3月18日”と書かれていた

 更新期間の始まる少し前に、更新を知らせる封書が届く。内容物は「電子証明書の有効期限通知書」、裏面が「代理人に電子証明書更新申請を委任する方のみ」と書かれた回答書・委任状。もう1枚が「電子証明書の更新手続」というチラシ。それと代理人申請に必要な封書だ。

更新を知らせる封書
電子証明書の有効期限通知書
裏面は回答書・委任状
「電子証明書の更新手続」のチラシ
チラシの裏面

 PDFでも公開されているチラシには「交付時に設定した暗証番号が必要です」と書かれている。必要な暗証番号は
①署名用電子証明書暗証番号=6~16桁の英数字
②利用者証明用電子証明書暗証番号=4桁の数字
③住民基本台帳用暗証番号=4桁の数字
の3つだ。うろ覚えの人は確認しておこう。

 ただし、暗証番号を忘れた場合も悩むことはない。そもそも再設定をする際に訪れるのは、今回マイナンバーカードの更新で訪れる役所なので、思い出せない人は「忘れました」と言えば、一手間増えるがその場で再設定ができると思われる。

 e-Taxで確定申告をする人は、これらの暗証番号を入力する機会があると思うが、そうでない人はマイナンバーカードを取得してから一度も暗証番号の入力機会がない人がいると思う。交付時に設定した暗証番号はもう1つ「④券面事項入力補助用暗証番号(4桁の数字)」があり、4つバラバラの暗証番号にすると、覚えるのは困難だろう。

 マイナンバーカード交付時の通知書の注意書きに「②③④の暗証番号の数字4桁は同じ暗証番号を設定することもできます」と書かれていた。もし再設定をすることになったら、例えば①=AB4526、②③④=4526などと、数字部分を同じにしておくと、忘れにくくなるだろう。

 手続きに必要な持ち物はマイナンバーカードと封筒に入っていた有効期限通知書。顔写真は不要だ。有効期限通知書に関しては“お忘れでも手続可能です”となっている。と言うことで、マイナンバーカードだけ持って、役所に行けば更新は可能だ。

必要な持ち物

更新手続きはいたって簡単

 いざ区役所へ。自治体により違いはあると思うが、筆者は受付機で印字された番号札を受け取り、15分ほどで順番となり窓口へ。「署名用電子証明書/利用者証明用電子証明書 更新申請書」なる紙に住所、氏名などを記入。さらに待つこと10分、カウンター脇に設置されたマイナンバーカードの手続きコーナーで更新作業が始まった。

名古屋市の瑞穂区役所へ
証明書・マイナンバー関連は5人待ち、15分ほどだった
窓口で署名用電子証明書/利用者証明用電子証明書 更新申請書を記入

 筆者がマイナンバーカードを受け取った2019年には1台しかなかった専用端末が6台に増強されていた。「4桁の○○の暗証番号を入力してください」「6から16桁の※※の暗証番号を入力してください」と言われたとおり3回(たぶん)暗証番号を入力。手続きはいたって簡単、しばらくすると、「電子証明書の有効期限」の油性ペンの手書き部分が書き換えられたマイナンバーカードを手渡された。「次回、5年後はマイナンバーカードが更新となります」と言われ、電子証明書の更新手続きは完了となった。2019年はまだ申請者が少なかったので、現時点で更新する人も少ないと思われ、区役所に滞在した30分ほどの間に、マイナンバーカードのコーナーを利用した人は筆者だけだった。

カウンター脇に設置されたマイナンバーカードの手続きコーナー
専用端末が6台に増強されていた
タッチパネルに暗証番号を入力
「電子証明書の有効期限」の油性ペンの手書き部分が書き換えられた

マイナンバーカード申請受付は1億を突破

 久しぶりに総務省の「マイナンバーカード交付状況について」というサイトを見てみると、有効申請受付数が1億を超えたようだ。令和6年4月21日時点で約1億50万件、交付枚数は約9900万枚、保有枚数は約9200万枚となっている。

 数字の違いは?と思われた読者がいると思う。それぞれの数の意味は以下となっている。

  • 有効申請受付数:再交付、更新を含む累計の有効な申請の受付数
  • 交付枚数:再交付、更新を含む累計の枚数(=亡くなった人も含む)
  • 保有枚数:保有されている枚数(交付枚数から死亡や廃止された枚数を除いたもの)

 マイナンバーカードの有効期限は成人は10年、未成年者は5年。マイナンバーカードの交付開始が2016年1月なので10年の更新を迎える人はいないが、2019年以前に取得した未成年者はカードの更新が始まっている(=2回目の申請)ので、1億の有効申請受付数には未成年の2回目がカウントされている。2~3年すると成人も2回目のカウントに入るので、有効申請受付数は将来的には人口を超えて1.5億、2億と意味のない数字となる。

 交付枚数も、紛失して再交付した人の二重カウントや、亡くなった人がカウントされているので意味はなく、保有枚数が普及度合いの目安となる。

更新の山(=混雑)はいつ来る?

 次のグラフはマイナンバーカード交付枚数率、保有枚数率と伸び率のグラフだ。青線が「人口に対する交付枚数率」。前述のとおり亡くなった人もカウントする交付枚数に意味はないとの指摘を受け、途中から緑線の「人口に対する保有枚数率」となっている。

 筆者が取得した2019年7月ごろの交付枚数率は約14%(グラフのオレンジ線)。現在の保有枚数率は約74%なので60%の人は、これから順次マイナンバーカードの電子証明書の更新が始まる。

 赤棒グラフは枚数率の伸び率を表している。2020年度(令和2年度)から毎月公表されるようになり、そのころから青折れ線の確度がグッと上昇に転じ、赤棒グラフの値も増えている。2020年の春に何があった?

 新型コロナウイルス感染症による1回目の緊急事態宣言が出されたのが2020年4月。その後、各自治体で1人一律10万円の特別定額給付金の支給が開始された。マイナンバーカードを持っていると給付金が早く受け取れる、と話題になり、暗証番号を忘れた人が役所の窓口に殺到したことを覚えている人は多いと思う。さらにマイナポイント第1弾が2020年9月にスタートし、グラフの大きな山を形成している。

 マイナポイント第2弾は2022年6月末に本格スタートし、終了期日の延長延長を繰り返し、2023年3月1日申請で終了。グラフの最後の大きな山は終了とともに急降下している。

 マイナンバーカードの申請が混雑し始めたのを2020年の夏ごろからとしよう。例えば2020年7月に夫婦で同時期に申請した場合、そこから5回目の誕生日は、9月生まれの夫は2024年(=今年)の9月の誕生日が有効期限となる。5月生まれの妻は2025年5月の誕生日となる。このように家族で同時に申請しても、申請の時期と誕生日で有効期限はズレる。2020年の夏にマイナンバーカードを取得した人は、今年の秋以降に更新となり、その後は、5回目の誕生日を迎える人が続々増え、2028年前半まで大きな山を形成しそうだ。申請時に混雑した人は更新時も混雑する可能性がありそうだ。

 次のグラフは交付枚数と保有枚数の推移とそれぞれの増加枚数を表している。率ではなく実数の推移だが、傾向は同じだ。

コラム:マイナンバーカードの「発行年月日」っていつ?

 マイナンバーカードに手書きされた5回目の誕生日が、自分の想定より1年早い、1年遅いと思った人がいるかもしれない。混雑時、スマホやPCから申請を行って、数カ月後に役所でマイナンバーカードを受け取った人の、5回目の誕生日の、そもそもの起算日はいつなのか。知っても知らなくても、有効期限はマイナンバーカードに手書きされた誕生日なので、深掘りするほどではないがマイナンバーカードの発行年月日について考えてみた。

 筆者が申請を行ったのは2019年(令和元年)7月22日。JPKI利用者ソフトで読み取ったカード情報を見ると、電子証明書の発行年月日は申請から5日後の2019年(令和元年)7月27日。おそらくこの日がマイナンバーカードの発行年月日と考えられる。受け取り可能を知らせる交付通知書が8月上旬に届いた。空いている時期だったので2~3週間と短いが、混雑時は申請から受け取りまで2~3カ月要した自治体もあった。その2~3カ月の間にマイナンバーカードおよび電子証明書の発行年月日があり、その日を起算日として5回目の誕生日が有効期限ということだ。マイナンバーカードの申請から取得の数カ月間が誕生日と重なる人は、前か後ろかで更新が1年ズレることとなる。

数年前に「JPKI利用者ソフト」で確認した電子証明書の発行年月日は、令和元年7月27日だった

 試しに何年も使用していないカードリーダーを引っ張り出して、何年も立ち上げていないJPKI利用者ソフトで確認すると、更新を済ませたマイナンバーカードの電子証明書の発行年月日は更新に行った日となっていた。

更新を済ませたマイナンバーカードの電子証明書の発行年月日は、更新に行った日

 「今どきカードリーダー、持ってないよ」と思われる人がいるだろう。マイナンバーカードの読み取りに対応したスマホをお持ちの人は、JPKI利用者ソフトというアプリ(Android/iOS)を利用すると、初回の電子証明書の発行年月日を確認することができる。筆者はアプリをいつ入れたか記憶がなく、更新後にスマホアプリでも確認すると、電子証明書の発行年月日は更新を行った日になっていることが確認できた。

JPKIMobile=スマホ用JPKI利用者ソフト
発行年月日の項目があり、更新日となっていた

更新期限に注意したい人

 青色申告をする個人事業主で誕生日が確定申告期間中の人は注意したい。筆者は誕生日が3月18日で、確定申告期間中にe-Taxが使えなくなることがないと知りホッとした。普段、マイナポータルのアプリを開くことはないので、冒頭の画像のマイナポータル画面に有効期限が表示されたのは確定申告の期間中だった。

 運悪く、確定申告書をギリギリで完成させe-Taxで送信しようとしたら、電子証明書が数日前に期限が切れていて送信できない。青色申告特別控除の65万円は、確定申告期間中に申告を終えないと控除が取り消される。所得税、住民税、国民健康保険が増額となるのは相当痛い。該当する人は早めに更新をしていただきたい。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。