中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/10/6~10/13]

2024年秋、マイナンバーカードと健康保険証が一体化 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 2024年秋、マイナンバーカードと健康保険証が一体化

 河野太郎デジタル大臣は2024年秋に現在の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化をすると発表した(Impress Watch)。ただし、「マイナンバーカードの取得は『任意』のまま」とされていて、ねじれも感じるポイントもある。加えて、かねて発表されていた運転免許証のマイナンバーカードに一体化する計画は2024年度末(2025年3月)だったが、これを前倒しにするとしていて、健康保険証と同じころになるのではないかとみられる。健康保険証とは異なり、現在の運転免許証は廃止にはならない。

 そして、Android端末へのデジタルマイナンバーカードの搭載は2023年5月という計画も発表されている(Impress Watch)。ただ、従来から変わらず、iOS端末(iPhone)への対応については明らかにしていない。

 デジタル化されることにより、利便性が上がるという期待とともに、カードの紛失や情報漏えいについて懸念する意見もある。そもそもマイナンバーは他人に知られないようにする対応を各所に求めてきていたが、これらが実施されるとなると、マイナンバーカードを日常的に持ち歩くことになるだろう。必然的に、紛失のリスクも高まるわけだが、もし紛失したケースにおいて、国民の正しい対処方法、窓口担当者の対処方法は明確にし、周知してもらいたい。

 また、10月3日、臨時国会における岸田文雄首相の所信表明演説において、「メタバースやNFT(非代替性トークン)を活用した『Web3.0サービス』の利用拡大に向けた取り組みを進める」と表明されたことも報じられている(ZUU online)。政府がWeb3.0に取り組む方針なのはこれまでも報じられてきているところだが、今後もさらにこうした技術コンセプトにのっとった施策が進むものとみられる。

ニュースソース

  • Androidスマホのマイナカード機能搭載、23年5月11日スタート[Impress Watch
  • マイナンバーカードと健康保険証 '24年秋に一体化[Impress Watch
  • 岸田首相、NFT等活用した「Web3.0サービス」の利用拡大に取り組むと表明[ZUU online

2. メタ、フルカラーMR対応の「Quest Pro」を発表

 メタ(旧フェイスブック)が新型のVRヘッドセット「Quest Pro」を発表した(PC Watch)。米国時間10月25日に販売が開始される。日本での価格は22万6800円となっている。

 ディスプレイ解像度は片目あたり1832×1920ドット、リフレッシュレート90Hzと従来品と変化はないが、光学モジュールの奥行きを40%短縮、コントラストが75%向上しているとされている。また、カメラ(センサー)解像度は4倍、ppiは37%、色域は30%拡大、全視野の視覚的な鮮明さは中央部分で125%、周辺部で150%向上した。

 そして、メタはマイクロソフトとのVR領域での連携を強化することも発表している。

 発表では3つのポイントを挙げている(日経XTECH)。

  • 「Microsoft Teams」をQuestから接続できるようにして「没入型ミーティング体験」を導入する
  • 「Microsoft 365」に含まれるTeams以外のアプリケーションもVR内で使えるようにする
  • モバイル管理サービス「Microsoft Intune」とクラウドディレクトリーサービス「Azure Active Directory」の対応

 メタとマイクロソフトという二大巨頭がVR領域での連携を深めるということは業界にとっての影響は大きそうだ。各種の市場調査でも、将来的な市場規模は急拡大することが予測されているが、いまだ多くの人にとっては未来のことと感じているのではないか。市場が沸騰するポイントがいつ来るか、それまでにこうした体力のある企業がハードウェア/ソフトウェアの技術開発を進歩させるという動きが続きそうだ。

ニュースソース

  • Meta、フルカラーMR対応の「Quest Pro」。Snapdragon XR2+搭載で性能1.5倍、光学系改善で40%の薄型化[PC Watch
  • 米メタと米マイクロソフトが連携強化、TeamsもVR空間で[日経XTECH

3. グーグル、マイクロソフトがそれぞれ新製品を発表

 グーグルは新型のスマートフォン「Pixel 7」(ケータイWatch)、「Pixel 7 Pro」(ケータイWatch)、タブレット「Pixel Tablet」(ケータイWatch)、スマートウォッチ「Pixel Watch」(ケータイWatch)などを発表した。それぞれの仕様については記事を参照していただきたいが、製品に共通するコンセプトとして「グーグルが開発する機械学習の技術を体験できる接点がスマートフォンに代表される各デバイスであり、その接点を通じて、『魔法のような未来、体験』を、一貫としてユーザーへ届けようとしている姿勢」が示されている(ケータイWatch)。これまでも懸念されてきたプライバシーへの配慮にも触れられている。

 また、マイクロソフトはキーボード着脱型2in1ノートPC「Surface Pro 9」(ITmedia)、クラムシェル型ノートPC「Surface Laptop」(ITmedia)、オールインワン型デスクトップPC「Surface Studio 2+」(ITmedia)、スピーカーフォン兼ドッキングステーション「Microsoft Audio Dock」(ITmedia)などの製品を発表している。

 そして、ハードウェアに加えて、「Teams Premium」や新たな会議室予約ツールの「Microsoft Place」も発表している(INTERNET Watch)。とりわけ「Teams Premium」は興味深い機能を持つ。それが「インテリジェント・リキャップ」で、会議の自動まとめ作成機能ともいえる。記事によれば「主催者が録音、録画、トランスクリプション(文字起こし)などを有効にすることができ、それをデータとして参加者に提供することが可能だ。そのデータから会議で盛り上がったポイントなどをAIが自動で判別してインデックスを作成し、会議に参加しなかった人にもどこがこの会議の重要なポイントなのかを示すということを自動で行うことができる」という。これが実用になる性能を提供できるなら、使ってみたい人は多いのではないだろうか。もちろん、他の会議アプリケーションも追従してきそうな分野でもあり、今後の競争領域となりそう。

ニュースソース

  • グーグル、6.7インチの「Pixel 7 Pro」を発表[ケータイWatch
  • 「Google Pixel 7」発表――ブレブレ写真も後から補正[ケータイWatch
  • 「Pixel Watch」正式発表、Fitbitの技術でECG搭載、LTE版も[ケータイWatch
  • グーグルの新タブレット「Pixel Tablet」は「Tensor G2」搭載、2023年に登場へ[ケータイWatch
  • グーグルの「Pixel Watch」はSuica対応に[ケータイWatch
  • 「Pixel Watch」のECG(心電図)機能は“日本で利用不可”、認証取得への取り組みも[ケータイWatch
  • Google、クラウドゲーミングChromebookを発表[Impress Watch
  • 「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」「Pixel Watch」いよいよ正式発表、グーグルがもたらす体験とは[ケータイWatch
  • Microsoftが「Teams Premium」を発表、ミーティング後の“まとめ”をAIが自動作成してくれる機能など実装 会議室予約ツールの「Microsoft Place」と新しい「Microsoft 365 app」の計画も[INTERNET Watch
  • 「Surface Pro 9」はIntelモデルとArmモデルの“2本立て” Windows 11 Bloomから着想を得たスペシャルモデルも[ITmedia
  • クラムシェル型「Surface Laptop」は5代目に 13.5型と15型の2サイズを展開[ITmedia
  • Microsoft Teams認定を受けた初のプレゼンテーター「Microsoft Presenter+」登場 Bluetooth接続のコントローラー[ITmedia
  • CPUとGPUを刷新してパワーアップした「Surface Studio 2+」登場 71万9180円[ITmedia
  • 米Microsoftがスピーカーフォン兼ドッキングステーションの「Microsoft Audio Dock」を発表[ITmedia
  • WindowsからiPhone写真にすぐにアクセス。フォトとiCloudが連携[Impress Watch

4. SpaceXの衛星通信「Starlink」が日本でサービス開始

 米Space Exploration Technologies(SpaceX)の衛星通信サービス「Starlink」のサービスが日本でも開始された(ケータイWatch)。ただし、サービスエリアは当面、東日本と北海道に限られる。記事によれば「地球全域をカバーする数千基の衛星で構成される衛星コンステレーションを利用した通信サービス。衛星は高度550kmという低軌道を周回しており、高速かつ低遅延の通信を利用できるとアピールされている。遅延は、通常の600ミリ秒以上に対し、約20ミリ秒になる」という通信基盤となる。料金は東京でのサービス提供について「7万3000円のハードウェアコストと、月々1万2300円の料金」とされている。

 これはウクライナの通信回線が分断されたとき、イーロン・マスク氏が機材とサービスを提供したことでも知られているもの。今後、地上のサービスが十分に行き届かない地域(インフラが比較的充実している日本では山間部など)へのサービスを主として利用が拡大することが見込まれる。

ニュースソース

  • SpaceXの衛星通信「Starlink」、日本の一部地域でサービス開始――アジアでは初のサービス提供国に[ケータイWatch

5. 「AirTag」は航空機内に持ち込める?

 スーツケースの紛失防止を目的として取り付けられるアップルの「AirTag」などのデバイスについて、ドイツのルフトハンザ航空が「機内持ち込みだけでなく、受託手荷物として預けることすら禁止した」と報じられた(INTERNET Watch)。確かに、AirTagのような機器は小さいながらもバッテリーを使用し、かつ電源が切れない。多くの人が利用するようになれば、かなりの数のAirTagが機内に持ち込まれることになる。一方、利用者からすれば、紛失の可能性がある預け入れ荷物にはぜひとも付けておきたいと考える人は多かったようで、反発の声が出ていた。しかし、同社は「AirTagを禁止しておらず、また、AirTagにこれらの規制を適用するかを判断するのは当局であり、解決策を見つけるために各機関と連絡を密にしている」という声明を出した。

 今後、各国の航空当局のルールが定められることになると思われるが、国によって対処が異なるとそれもまたややこしいことになるので、業界で統一した基準ができることに期待をしたい。

ニュースソース

  • AirTagの機内への持ち込みはNG? ルフトハンザ航空の説明で混乱発生中[INTERNET Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。