電子書籍中間フォーマット策定やEPUB日本語化が、事業仕分けの対象に?


行政刷新会議「事業仕分け第3弾」のサイト

 週明け15日からスタートする「事業仕分け第3弾」の後半日程で、総務省の「新ICT利活用サービス創出支援事業」が仕分けの対象となった。2010年度の同事業は「電子出版の環境整備」がテーマ。「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」や「EPUB日本語拡張仕様策定」といった、日本の電子書籍市場の発展に欠かせない案件も含まれている。仕分け結果しだいでは、これらの事業がストップしてしまうことになるのか?

 「新ICT利活用サービス創出支援事業」とは、「新しいビジネス分野の基盤となる技術の確立、技術標準化、運用ガイドラインの策定等を実現するプロジェクトの実施を委託するもの」(総務省の発表資料より)。2010年度の予算は8億円で、10案件が実施される。

 このうち「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」は、各種電子書籍配信フォーマットに変換可能な、オープンかつフリーな電子書籍の交換(中間)フォーマットを策定するというもの。一般社団法人日本電子書籍出版社協会が代表提案者だ。

 「EPUB日本語拡張仕様策定」は、イースト株式会社が代表提案者。EPUB対応デバイスで、縦書き、ルビなどの日本語組版を実現させるためのものだ。

 このほかの案件としては、「次世代書誌情報の共通化に向けた環境整備」「次世代電子出版コンテンツID推進プロジェクト」「アクセシビリティを考慮した電子出版サービスの実現」「図書館デジタルコンテンツ流通促進プロジェクト」などがある。


「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」の概要(総務省の発表資料より)
「EPUB日本語拡張仕様策定」の概要(総務省の発表資料より)

 政府の行政刷新会議が9日に決定した仕分け対象事業のリストでは、「新ICT利活用サービス創出支援事業(ユビキタス特区事業の推進)」と記載されているが、これは、同事業が“再仕分け”の対象とみなされたためだ。

 「ユビキタス特区事業の推進」は2008年度にスタートした事業で、民間における新たなビジネスモデルの構築が目的。農業へのICT導入や、港湾における電子タグによる貨物管理などの案件が進められたという。しかし、今年6月に総務省で行われた行政事業レビュー(省内仕分け)において、「廃止を前提とした全面的見直し」との評価が下され、2010年度で終了することが決まっている。

 一方で、総務省は2010年度より、これとは別事業として「新ICT利活用サービス創出支援事業」をスタート。さらに2011年度予算概算要求にも8億円を計上した。この点が、行政事業レビューの評価結果をきちんと反映しておらず、名前を変えて同じ事業を復活させようとしていると判断されたものと思われる。

 これについて総務省の担当課では、「新ICT利活用サービス創出支援事業」は前述のように、新しいビジネスの基盤となる技術の確立や標準化が目的であり、対象が異なると説明する。

 また、2010年度の同事業はすでに委託先候補も発表され、動き出している。特に電子書籍の中間フォーマットなどは、総務省、文部科学省、経済産業省の3省合同による「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」のもと、業界関係者が広く合意して取り組みが開始されるものであり、電子書籍市場の本格的な始動のためにも、ここで打ち切られるようなことがあってはならないという見方もある。「新ICT利活用サービス創出支援事業」の必要性の判断はあくまでも仕分け人がこれから下すことになるが、現実的には今年度の事業について今から廃止が求められるといったことは考えにくそうだ。

 もちろん、来年度以降が見直される可能性は残されている。しかし同事業は1年ごとにテーマを設定して推進するもので、今回の「電子出版の環境整備」事業も、総務省の委託事業として支援するのは基本的に今年度限り。来年度からは、委託事業での成果をもとに、民間で事業を継続・展開していくことを想定しているという。

 事業仕分け第3弾の後半では、このほかにもICT関連の事業がリストアップされている。総務省の事業としては、「アジアユビキタスシティ構想推進事業」「地域ICT利活用広域連携事業」「フューチャースクール推進事業」「地域コンテンツの海外展開に関する実証実験」「ICT海外展開の推進(ICT先進事業国際展開プロジェクト)」がある。経済産業省の事業では、「情報セキュリティ対策の推進」「情報システムの信頼性向上」「高度IT人材の育成」「オープン・クラウド環境整備」があるり、いずれも独立行政法人情報処理推進機構(IPA)と書き添えられている。

 「新ICT利活用サービス創出支援事業(ユビキタス特区事業の推進)」の仕分けは、「アジアユビキタスシティ構想推進事業」とセットで、約1時間の議論時間が割り当てられる予定。具体的なスケジュールは、事業仕分け第3弾のサイトで追って発表される。


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(永沢 茂)

2010/11/12 06:00