金町浄水場の水、妊婦・授乳中女性への健康被害なし~産科婦人科学会が見解


 東京都葛飾区の金町浄水場の水道水に1リットルあたり210ベクレルの放射性物質が含まれていたことを受けて社団法人日本産科婦人科学会は24日、妊娠・授乳中の女性が同様の水道水(軽度汚染水道水)を連日飲んだ場合の健康への影響について見解を示した。

 まず、妊娠期間中の女性が最終月経開始日から分娩までの毎日(280日間)、1リットルの軽度汚染水道水を飲むと仮定した場合、妊娠女性がその間に軽度汚染水道水から受ける総被曝量は1232マイクロシーベルト(1.232ミリシーベルト)と計算されるという。

 次いで、胎児に悪影響が出るのは、胎児の被曝量が5万マイクロシーベルト(50ミリシーベルト)以上と考えられていると説明。日本産科婦人科学会では、米国産婦人科学会の推奨に基づき、放射線被曝安全限界を50ミリシーベルトと定めているとしている。

 放射線被曝安全限界をめぐっては、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告などに基づき、10万マイクロシーベルト(100ミリシーベルト)とする意見もあり、ICRPは「100ミリシーベルト未満の胎児被曝量は妊娠継続をあきらめる理由とはならない」とも勧告している。

 なお、胎児の被曝量は、母体の被曝量に比べて少ないとされていると指摘。胎児が10万~50万マイクロシーベルト(100~500ミリシーベルト)の被曝を受けても胎児の形態異常は増加しないとの研究報告もあるという。

 また、母乳中に分泌される放射能活性を持ったヨウ素は、母体が摂取した量の4分の1程度と推測されると説明。確定的なことはわかっていないとしながらも、現時点では妊娠・授乳中の女性が軽度汚染水道水を連日飲んでも、母体および胎児・乳幼児に健康被害は起こらないと推定されるという。

 その一方で、胎児・乳幼児は成人に比べ被曝の影響を受けやすいとされており、被曝は少ないほど安心であると説明。こうしたことから、軽度汚染水道水以外の飲み水を利用できる場合には、それらを飲用することを勧めている。


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(増田 覚)

2011/3/24 15:12