米Amazon.com、199ドルのAndroidタブレット「Kindle Fire」発表
7インチフルカラー液晶搭載、クラウドも活用
Kindle Fire |
米Amazon.comは28日、カラー液晶ディスプレイのAndroidタブレット端末「Kindle Fire」を発表した。米国内で予約受け付けを開始しており、11月15日に出荷開始予定となっている。価格は199ドルで、iPad 2の499ドルと比較しても半分以下の戦略的な値段設定だ。
大量のコンテンツが用意されていることも、競合する上で大きな利点となりうる。映画、テレビ番組、音楽、雑誌、書籍、アプリ、ゲーム、ウェブブラウジングを楽しむことができ、Amazonのクラウド技術により、単なる端末を超えたサービスを格安で提供するという。
Kindle Fireは、ディスプレイにE-inkの電子ペーパーを採用した従来のKindle端末とは異なり、初めてカラー液晶ディスプレイを採用した。7インチマルチタッチIPS液晶で、解像度は1024×600となっている。重さは413g、サイズは190×120×11.4mm、内蔵ストレージは8GBで、Amazonのコンテンツであれば、無料でクラウドに保存できる。Wi-FiはIEEE 802.11b/g/n。電池持続時間は、読書で8時間、動画再生で7.5時間(Wi-Fiオフの状態)。
対応しているフォーマットは以下の通り。
- 電子書籍とドキュメント:Kindle(AZW)、TXT、PDF、保護されていないMOBI、PRC、DOC、DOCX
- オーディオ:Audible(Audible Enhanced(AA、AAX))、非DRMのAAC、MP3、MIDI、OGG、WAV
- ビデオ:MP4、VP8
- 画像:JPEG、GIF、PNG、BMP
Android端末であることを前面に打ち出してはいないが、Amazon独自のアプリストア「Amazon App Store」にて、ゲームなどを含めたAndroid互換アプリを提供するとしている。
●独自ウェブブラウザー「Amazon Silk」搭載、Amazonクラウドと一体化して動作
Kindle Fireが他社のAndroidタブレットと大きく異なっているのは、Amazonのクラウド技術やウェブサービスを最大限生かし、Amazonのサービスと一体化している端末であることだ。
中でも最大の特徴は、搭載している独自ウェブブラウザー「Amazon Silk」だ。Silkは単なるブラウザーではなく、Amazonクラウドと一体化して動作し、通常より高速にウェブブラウジングできるという。Amazonクラウドが人気ウェブサイトをキャッシュし、複雑なネット接続を最適化することで、ページ読み込みの待ち時間を最小化する仕組みだ。
例えば、CNNのホームページを表示するためには、25の別々のドメインから161のファイルをダウンロードする必要がある。これはCNNが特別ということではなく、典型的なウェブページでは13の異なるドメインから80のファイルがダウンロードされるという。1つ1つのファイルのサイズやダウンロード時間は小さくても、その合計はばかにできない。
Silkはこの問題を、クラウドを利用することで解決しようとする。Amazon EC2は、インターネットのバックボーンに接続されており、大手ISPとも提携関係にある。さらに、多くのウェブサイトがEC2にホスティングされていることから、EC2と直接つなげることができれば、それだけで待ち時間を減らすことができる。
また、何百ものページコンテンツをダウンロードしなければならない場合、非力なモバイル端末はより多くの電力を消費しなければならないが、その作業をAmazon EC2に任せることによって、計算パワーや電力消費を大幅に押さえられる。さらに、Amazon EC2側と主要なウェブサイトとの間で、またユーザーとAmazon EC2との間で、TCP接続を常時確立しておくことによって、通常必要なTCP接続確立までの時間を大幅に短縮できる。
それだけでなく、Amazonが培ってきた協調フィルタリング技術と機械学習アルゴリズムを応用することで、ウェブサイトの先読みを効率的に行う。多くのユーザーがウェブサイトのトップページのリンクをクリックすることがわかっていれば、Silkはあらかじめそのコンテンツをユーザー側にプッシュし、クリック時に即時表示できるようにするわけだ。
こうした技術は、単に便利で高速なブラウジング体験をユーザーに提供するだけではない。ウェブサイトで人気のコンテンツは何かといった情報を、Amazonが集約できることを意味する。Amazon以外のオンラインショッピングサイトやメディアに対しても、また広告配信分野などに対しても、大きな影響力を持ってくる可能性も出てきた。
さらにKindleの電子書籍リーダーで好評のシンクロ技術「Amazon Whispersync」がKindle Fireにも搭載されている。同技術は書籍や雑誌だけでなく、ビデオでも利用できるようになった。そのため、映画の視聴を途中で止めた場合、その位置は記憶されており、再び視聴を開始した時にはそこからストリーミングを開始することができる。
Kindle Fireは、デュアルコアプロセッサーを搭載しており、ウェブブラウジングや読書を行っている間にも、音楽のストリーミングやビデオのダウンロードを同時に行うことができるとしている。
関連情報
(青木 大我 taiga@scientist.com)
2011/9/29 11:48
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