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インテルが法人向けPCをアピール、vProは中小企業でも拡大、サイトも刷新
「AIは日本にとって大きなビジネスチャンス」
2025年3月11日 11:10
インテルはパートナー企業向けのイベント「Intel Commercial Client」を開催した。2025年に見込まれる買い替え需要に対し、Core Ultra プロセッサー シリーズ2のAI性能やビジネス向け機能のvProをどのようにアピールしていくのか情報を共有し、交流する場で、インテル製品や機能の紹介のほか、パートナー企業のソリューション紹介や活用事例紹介も行われた。
AI PCはビジネスチャンス。vProは中小企業でも拡大
冒頭では「優れたAI PCは優れたPCから始まる」を掲げ、インテルの執行役員 マーケティング本部長 上野晶子氏が講演した。
Windows 10のサポート終了、AI PCの登場という要因から「2025年は法人向けPCにとってよい年」であるという。PC市場の現状を見るとコモディティ化が進み、長く値段だけで選定されがちな時代を過ごしてきたが、今年AI PCという新しいカテゴリの製品が出てきたことによってここを変えていけるのではないかと期待をかけている。より多くの顧客にサービスを提供していくことでPC業界全体が大きく成長していけるのではないか、パートナーとともにこれからのPC市場を考えていきたいと訴えた。
また、AIについては「日本という国にとって大きなビジネスチャンス」とも述べている。これまでデータ・セントリック・トランスフォーメーションという言葉を使ってきたが、データを利活用している企業が今後勝っていくということ。データをAIに置き換えれば、今後はAIを使いこなせる企業が大きく伸びてくるとのことだ。
これがなぜチャンスなのか。これまでデータは全てクラウドにアップしていて、データを持っている特定のクラウド企業が大きくなるようなビジネス構造だった。AI PCはAI(ここではデータ)を手元で、ローカルで扱える。今グローバルで活躍している日本のメーカーは少ないが、AI PCによってローカルでAIを活用できるようになった瞬間に日本の企業の誰かが、もしかしたら今世界で活躍しているクラウドサービスプロバイダーのような存在になれるかもしれないという。AIはグローバルで活躍していく企業が生まれる一助になるかもしれないと言うのだ。
そのAI PCだが、昨年、グローバルで20%ほどのPCがAI PCに置き換わったとのこと。日本については新製品の登場時少し遅れる傾向にあるとのことで17%。2025年はグローバルで41%、2年目3年目ともなると日本も40%にかぎりなく近くなるのではないか、がんばれば40%を超えていくのではないかと予想している。AI PCを語るうえで欠かせないのが、AI PCの上で何が動くかとして今回は4社が紹介された。
インテルvProについては、これまで大規模な企業では導入が進んでいるが、「インテルとしては少し中規模、小規模の顧客にもvProを展開していきたい」としている。価格で判断されがちな傾向がより強いこの層にどうやったらこのベネフィットが分かってもらえるか、力を尽くしてきたといい、vProの認知も上がってきており、中規模、小規模企業の販売比率も2年間で10%以上上がってきているといったデータを示した。ただ、「まだまだ伸びしろがある」という。
最新AI PCは実運用で長時間駆動、生産性も高い
「優れたAI PCは優れたPCから始まる」の肝心な部分、Core Ultra プロセッサー シリーズ2の優位性についてはインテル IA技術本部 部長 太田仁彦氏が紹介した。
Core Ultra シリーズ2の優位性については、一般的な買い替えサイクルである3年前のPCに対して、Core Ultra プロセッサー 200V シリーズはバッテリー駆動時間が2倍、生産性は20%向上、AI性能も10倍、そしてネットワークのWi-Fi速度も5倍とのこと。
そしてWindows 11が動作するギリギリの第8世代Core(第7世代Coreに近い性能のイメージ)とは実演で性能比較を行った。2台のPCを並べ、100ページほどのプレゼン資料をPDFに変換するといった内容だ。第8世代Coreと言えば、インテルCPUの中ではWindows 11が動くもっとも古い世代であり、現在運用されている方も多いだろう。実演ではもちろんCore Ultra シリーズ2が速く、15秒ほどで変換処理を終えた一方、第8世代Coreはさらに30秒ほど(計45秒ほど)を要していた。
AIについてはまず互換性をアピール。世界中多くのソフトウェア企業を強力、協業することでCore Ultra シリーズ2上で99%の互換性を実現し「きちんと動く」と紹介した。
続いて「AI PCは安心、安全でもなくてはいけない」としてvProを紹介。インテルはセキュリティレポートも発行しており、自社の製品に対する脆弱性を調査、報告、修正する機構を設け、脆弱性全体の94%を自社で発見している。また、それをオープンにしている。
セキュリティは運用管理も重要。その一例として紹介されたのが、昨年問題となったCrowdStrikeのブルースクリーン障害。vProチームは数時間のうちに問題を特定し、どのファイルを削除すればよいか把握した後、簡単な手順書を作成し問題が起こった企業に送付したという。
その手順書は、vProの画面とリモート端末から、1つずつ、ここを開いてここを押して、このファイルを削除して……といった単純なものだったとのこと。そしてこの手順書を受け取ることができ、vPro機能をちゃんと活用していた企業では、ものの数時間のうちにブルースクリーン問題から開放され、システムを再稼働できたと紹介した。
こうしたvProの強力なリモート管理機能がなければ、管理者自らがUSBメモリとキーボードを手に全ての端末を回って問題を修正するほかない。
vProサイトを刷新、「システム管理者の日キャンペーン」も
最後に立ったのはマーケティング本部 コマーシャル・キャンペーン・マネージャー 安永真理子氏。マーケティングの視点から、vProについては「企業事例を求める声が圧倒的に大きい」とのこと。これについては、ちょうど昨年末にCore UltraとvProを活用した企業事例を刷新していることをアピールした。大企業向けのソリューションと思われがちなところ、中堅企業や、都市部のみならず地方の事例も掲載。
vProで業務のスピード感を実現、AIでよりセキュアに、各社が講演
講演の中から活用事例やソリューションを紹介しよう。
カタオカの総務部 情報システム課の大崎一樹氏は「中小企業こそスピード感が命」と題してvProの活用事例を紹介した。同社は食品を扱う企業であり、PCに問題が発生した際に現場へ向かうにも、立ち入るためには食品安全のための国際規格「FSSC22000」準拠の厳格な手順が求められる。移動時間にこうした手順を合わせると、かなりの時間を要するとのことだ。その間は工場がストップ、自身も時間をとられ、待機時間が生まれる人もいるといった状況という。
こうした状況を解決したのが、強力なリモート管理機能を備えるvProだったという。システム管理のほか、業務ではプログラミングのサポートや企画作成、Excel VBAなどで生成AIも活用。通常、AI処理は電力も必要でACアダプターを携行する必要があるところ、Core UltraプロセッサーのAIアクセラレーターでAI性能とともにバッテリー駆動も可能になったとのことだ。
NSWはvPro関連の導入検証、導入・構築、Daasとの連携といったサービスを行っている。vProによるPCのリモート管理を実際に利用できる状況なのかの評価、インテルEMAサーバの導入支援といった事業内容を説明した。
マイクロソフトはCopilot+ PCを紹介。一定以上のAI性能を基準としたことでCopilot+ PCなら高性能、独自のAI体験、そしてビジネスではハードウェアベースの先進的なセキュリティが得られるとしている。
アクセルはオフィスワークのためのAIが1つになったDXアプリ「DX insight」を紹介。ChatGPT/Azure/GeminiなどのAIを選べるほか、ローカルLLMにも対応する。
トレンドマイクロはCore UltraプロセッサーのNPUを活用した不正メール対策の強化を紹介。判定処理をローカルモデルで行うことで、クラウドでの判定に比べ5倍以上の高速化や高精度を実現するとした。
Blackmagic Designは、最新DaVinci Resolve Studioで利用できるトラッキングやノイズ除去といったNPUを利用したさまざまなAI機能を紹介した。