電話をクラウドサービスとして提供する「Twilio」、開発者登録は15万人を突破


Twilio Conference 2012

 米国で注目を集めるクラウド電話API「Twilio」に関するカンファレンス「Twilio Conference 2012」が、米国サンフランシスコで10月16日~18日の3日間に渡り開催された。

 Twilioが手がけているのは、「電話(VoIP)をクラウドサービスとして提供する」事業だ。ユーザーがTwilioにアカウントを登録すると、すぐに実際の電話番号が購入でき、さらにその電話番号を使って音声やSMSを送受信するためのAPIも提供されるため、電話の機能を組み込んだウェブアプリやモバイルアプリが簡単に構築できる。

 電話番号は1番号につき月1ドルで購入でき、通話料金は発信が1分2セント、受信が1分1セント。このほか、テキスト読み上げエンジンや録音用のストレージなど、電話を利用したアプリを作成するために必要な各種の機能が提供される。

実際の電話番号を購入できる通話料金は発信が1分2セント、受信が1分1セント(米国の場合)

 電話の制御も、「TwiML」と呼ぶ簡単な構文のXMLファイルをAPIに渡すだけで、送受信時の処理やテキスト読み上げ、音声ファイル再生、録音、ダイヤルキー入力の読み取りなどを行える。例えば下記のファイルは、かかってきた電話に対して「メッセージを残してください」という文章を音声合成で読み上げ、通話を録音するというものだ。たったこれだけの記述で留守番電話の機能が実現できる。

 VoIP用の装置を購入する必要もなく、複雑な制御も不要。既存のウェブAPIと同じ感覚で電話の機能をウェブに取り込めるとあって、Twilioは米国で多くの開発者の注目を集めている。

日本を含む世界40カ国でサービスを展開、AT&Tとも提携

TwilioのJeff Lawson CEO

 TwilioのCEOであるJeff Lawson氏は、Twilio Conference 2012で16日に行った基調講演で、Twilioに登録した開発者が15万人に達したことを紹介。Twilioを通じた通話も1日100万件以上に上っているという。

 採用例も、小規模なビジネスからコールセンターのような大規模なシステムにまで及んでいると説明。カスタマーサポートソフト「Zendesk」での電話サポートシステムや、映像サービス「Hulu」のカスタマーサポートにおけるシステム構築にもTwilioが用いられることなどを紹介した。

 今後はさらにTwilioを世界各国で使えるようにしていくとして、日本を含む世界40カ国でサービスを展開していき、1300以上のキャリア、180カ国以上に対して通話やSMSの発信に対応することを発表。世界各地に6つの拠点を構築し、キャリアグレードの通話品質を保っていくとした。

 また、開発者向けにはさらに便利な機能を提供していくとして、プログラムのテスト用に無料で利用できる環境や、使用量の集計などを簡単に行えるAPI、エンタープライズ向けにSIPとの統合を行えるAPIのベータ版などの提供を発表。カンファレンスに参加した1000人を超える参加者から大きな拍手を集めた。

開発者登録数は15万人を突破今後世界40カ国にサービスを展開
カンファレンスには1000人を超える開発者が参加し、講演や技術セミナーなどが行われた

 Twilioは2007年にサンフランシスコで創業した企業だが、これまでに500 Startupsなどのベンチャーキャピタルから3300万ドル以上の資金を集めており、投資家からの関心も高い。

 また、9月26日には米AT&TがTwilioとの提携を発表。TwilioのAPIにより構築された中小企業向けアプリケーションを、AT&Tが「Advanced Communications Suite」として販売する提携となっており、米国最大手の通信キャリアであるAT&Tも、Twilioのようなクラウド電話APIの可能性に注目している。

スマホからリムジンを呼べる「Uber」など既に実サービスでも活用

スマホからリムジンを呼べる「Uber」

 実際のサービスとTwilioの電話APIを組み合わせた実例としては、スマートフォンアプリからリムジン(タウンカー)の配車を依頼できるサービス「Uber」が、来場者の関心を集めていた。

 Uberは、iPhoneやAndroidアプリから空車状態のリムジンを地図で確認でき、場所を指定するだけでリムジンを配車してもらえるサービス。配車を指定すると、担当する車と運転手の名前、顔写真が表示され、アプリから運転手に電話をかけることもできる。通常の携帯電話からも、SMSを利用した配車依頼が可能で、こうした電話機能の部分にTwilioが利用されている。

 Uberからは、契約しているリムジンサービスの会社や運転手にiPhoneを専用端末として貸与しており、運転手側もiPhoneで配車依頼や通話に対応する。料金はUberにあらかじめ登録したクレジットカードによる決済となり、Uberが決済代行を行う形となる。

 実際にサンフランシスコの街でUberを使って配車を依頼し、サービスを利用している運転手に話を聞いてみた。利用したのは平日だったが、午前中だけでも8件の依頼があったということで、主に口コミベースで利用者が増えているという。利用する機器もiPhoneだけでよく、カード決済のため現金を狙われる心配がないといったメリットもあり、Uberに支払う手数料のことを考えても、Uberを導入して満足だと語っていた。

 Uberは2009年にサンフランシスコで創業したベンチャー企業で、現在ではサンフランシスコの他、ニューヨークやロサンゼルスなどの全米の大都市や、ロンドン、パリなどでもサービスを展開している。従来であれば、ウェブサービスに電話を組み合わせたこのようなシステムの構築には多額の費用と複雑な制御が必要だったが、Twilioを使うことで短期間にサービスを展開・拡大できたという。

日本で言うハイヤーのような車をスマホで呼べる運転手側もiPhoneで配車依頼に対応する

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(三柳 英樹)

2012/10/22 17:02