ジャスト、タブレットを使った小学生向け通信教育「スマイルゼミ」


株式会社ジャストシステムのライセンス事業部 事業部長 植松 繁氏

 株式会社ジャストシステムは11月20日、クラウド型の小学生向け通信教育「スマイルゼミ」を12月17日から開講すると発表した。「スマイルゼミ」の会費は月払い、6カ月分一括、12カ月分一括から選択できる。12カ月一括払いでは割安になり、月あたり2980円から。

 「スマイルゼミ」は、2012年12月17日に開講。11月20日より申し込みを受け付ける。カリキュラムは学年ごとに決まっており、小学1・2年生は国語、算数、漢検ドリル、計算ドリル。小学3~6年生は、国語、算数、理科、社会、漢検ドリル、計算ドリル。

 受講料は毎月払いの場合、1年生3580円~6年生5980円など学年ごとに異なる。また、6カ月分一括払いと12カ月分一括払いの場合は、スタートする月によって一括払いの金額が異なる。

 ジャストシステムでは「スマイルゼミ開講 3大キャンペーン」として、11月20日から12月20日までの1カ月間に「スマイルゼミ」を申し込んだ顧客全員に、(1)通常価格2万8350円のタブレット代が0円(6カ月間の「スマイルゼミ」継続受講が条件)、(2)「スマイルゼミ」を利用して納得できなかった場合は、タブレット到着後30日以内なら会費を全額返金(タブレットは要返却)、(3)スマイルゼミオリジナルデザインの図書カードを1000円分プレゼント――の特典を付与する。

 なお、2013年度の新1年生向けには、2013年1~3月までの期間限定で入学準備講座を特別開講する。


13年間の学校向け学習・授業支援ソフトのノウハウをもとに開発

 株式会社ジャストシステムのライセンス事業部 事業部長 植松 繁氏は、ジャストシステムは、1999年に小学校向けに学習・授業支援ソフト「ジャストスマイル」を開発、13年間にわたって提供してきことを紹介。現在全国の公立小学校の約8割が導入しているという。

 植松氏は、同じ文章でもたとえば、1・2年生用では「色えんぴつ」、3・4年生用では「色えん筆」といったように学年別配当漢字を反映するなどきめ細かい現場の意見を取り入れた「ジャストスマイル」は学校現場で高い評価を得ていると述べた。作文やレポートのコツがつかめる「ひらめきライター」、「聞き手を意識したプレゼン資料が作れる「はっぴょう名人」などの機能も備える。

 ジャストシステムでは「ジャストスマイル」提供で得た13年間のノウハウをもとに、今回家庭学習のための専用タブレットと教材を開発。クラウド型の通信教育「スマイルゼミ」として、保護者向けの学習状況を把握できるサービスも含んで提供する。

 タブレットはタッチパネル付き9.7インチIPS液晶を搭載したAndroid OSベースのタブレットで、解像度は1024×768ドット。タッチパネルは静電容量方式で、マルチタッチにも対応する。背面カメラ、ステレオスピーカー、マイクを内蔵する。無線はIEEE 802.11b/gに対応、本体サイズは190×241×9.6mm(横×縦×厚)、重量は約600g。

 きょうだいが揃って受講する場合もタブレットは1人1台で学習する。子どもたちは、自分専用のタブレットということで、学習のモチベーションが上がるという。

小学校向け学習・授業支援ソフト「ジャストスマイル」を1999年から提供「ジャストスマイル」が教育現場で受け入れられている理由自分専用の本物のタブレットでモチベーションが上がる


ゆとり教育の反動~自宅学習をしないと追いつかない可能性

 植松氏は、2011年の学習指導要領改訂により、自宅学習をしないと追いつかない可能性がある指摘した。2002年度に、いわゆる“ゆとり教育”と呼ばれる学習指導要領が適用され、学校は完全週休2日制に。“円周率は3.14ではなく「3」で計算してもよい”、“台形の面積は取り扱わない”など主要4教科で大幅な内容削減があった。その結果、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の数学的リテラシー得点では、2000年に1位だった日本は、ゆとり教育導入翌年の2003年に6位、2006年では10位に転落。“ゆとり教育の弊害”と批判を浴びることになった。

学習指導要領改訂による学校教育の変化。2002年度に主要科目のページが大幅に減り、2011年度からは逆にゆとり以前よりも増えている“ゆとり教育”と呼ばれた2002年度学習指導要領ゆとり教育以後落ちたPISAの数学的リテラシーの得点

 批判を受け、2011年から導入された指導要領は、国語算数理科のページが大幅に増加した。しかし植松氏は、教科書の内容はページは3090ページから4534ページへと1.5倍に増えているのに対し、授業時数は2941時間から3242時間へと、1.1倍にしか増えていない点を指摘。

 植松氏が小学生を持つ知人に聞いた「普通にやっていたら終わらないので、漢字学習やプリント配布で終えるようにしており、家庭学習でカバーしてほしいとの指導を担任から受けた」との実例を上げて、「学習進度が早まり、理解度の個人差が大きくなるおそれがある」と危惧した。

 こうした背景を受けて自宅学習の必要性が高まっているが、植松氏は、基礎・基本の定着には「その日のうちに」復習・解決することが必要、さらに毎日行えるように習慣化させることが必要だとした。

 既存の家庭学習向けのソリューションとしては、通信添削、学習塾、家庭教師などが一般的だが、通信添削は、添削は丁寧だが、「その日のうちに」解決できないという問題があり、一方、学習塾や家庭教師は、毎日行くわけではなく、費用がかかるという問題があると述べた。

 それに対し、「スマイルゼミ」は、(1)その日のうちに解決できる、(2)子どもたちが夢中になる、(3)自ら学習し、習慣化できる、という長所があるとした。

 植松氏は、タブレットによる教育に疑問を呈する声もあるが、海外の教育先進国では、シンガポールでは小学校で2008年からすでに取り入れが始まっており、韓国でも2013年から2年かけて全小学校に導入することが決定していると紹介。

 日本でも、2020年度までに児童生徒1人に1台のタブレット整備を文部科学省が目標として上げていると述べた。

教科書の内容は1.5倍になったが、授業時数は1.1倍にしかなっていないため、学習進度が早まり理解度の格差が拡大するおそれがあるという通信添削、学習塾、家庭教師などの問題点海外の、教育分野におけるタブレット利用(写真は韓国)


子どもが進んでやりたくなる教材

 コンテンツはクラウドから毎月新しいコンテンツが配信され、入会していた月については過去分も1年分までさかのぼって学習できる。

 1・2年生では1カ月約20講座、1回分が約20分の分量となっている。科目は国語、算数、理科、社会(理科、社会は3年生から)、漢検ドリル、計算ドリル。学習内容は、学習指導要領に定められている各教科の「目標および内容」にもとづいて作成したという。

五感を使って理解が深まる教材

 国語ではまず、朗読を聴いて、その後意味をタッチして調べる。自分でも音読をするが、自分の声を録音して再生できる機能があるため、子どもの興味を引くことができると言う。漢字はなぞり書きで書き順を学ぶ。また、迷子のお知らせを聞いて、絵の中からお知らせの内容と一致する迷子の子どもを見つけるなど、ゲームのような感覚で進められるという。

 算数でも、つまづきやすい図形問題では、立方体と展開図を自分の指でタッチ操作しながら展開したところを立体図を繰り返し確認できる。文章題では、ヒントボタンを押すと図解のイメージ画像を表示するなど、子どもが投げ出さずに楽しんで理解できるような工夫を盛り込んでいる。

朗読を聞いて、意味をタッチして調べ、自分も音読をして録音。再生するなどその場で確認できる
なぞり書きで漢字を覚えるとめや払いも覚えられる音声で流れる迷子のお知らせを聞いて、特徴の一致するこどもを選ぶ
つまづきやすい図形問題も、立体と展開図を何度も繰り返し確認できることで理解を助ける文章題では、ヒントボタンが右に表示されているヒントボタンを押すと図解が表示され、理解を助ける
振り子の問題も、実際に振り子が揺れるところを見せ、理解を助ける社会の問題。昔の生活になかったものの間違い探し通常の選択問題もある。すぐに答えが確認できることで、学習効果とモチベーションが上がる

 タブレットを起動するとカレンダー画面になり、ここで背面カメラで撮影した写真を入れて、絵日記のような日記をつけることもできる。

 子どもに動機づけをするため、「スターナビ」機能を搭載。学習をすると、100点なら星3つ、80点なら星2つというように星が付与され、星3つになると、鍵アイコンをクリックして親に連絡をすると、ゲームを遊ぶことができる。

 鍵アイコンから連絡をすると、予め登録した親のメールアドレスあてに学習状況がメール送信される。子どもからの連絡メールが来ると、親からはコメントやスタンプが返せる。ほめるコメントをおすすめコメントとして提示されるため、選択するだけでコメントが返せる仕組みだ。ほめられたコメントが届くことで、子どものモチベーションを上げるのが狙いとなっている。

 普段の子どもの様子が把握しにくい父親も、「スマイルゼミ」のシステムを通して学習進度が把握でき、また学習状況を正確に把握した上で子どもをほめるコメントも送れるため、コミュニケーションを活性化するきっかけにもなるという。

起動するとまず表示されるカレンダー画面写真を撮影して絵日記をつけたり、壁紙にしたりできるがんばった成果はスターで可視化される
集めたスター分だけゲームアプリで遊べるゲームを遊ぶには、親への連絡が必要。親は取り組みの様子がリアルタイムに把握可能親はウェブサイトで学習の様子を一覧可能。教科ごとにグラフ化して見ることもできる



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(工藤 ひろえ)

2012/11/20 18:18