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国会図書館のアーカイブを電子書籍に、紀伊國屋書店BookWebで無料実験配信

 株式会社紀伊國屋書店は1日、「文化庁eBooks プロジェクト」の一環として、電子書籍化した芥川龍之介「河童」直筆原稿など7作品の実験配信を開始した。利用するには「紀伊國屋書店BookWeb」の会員登録が必要だが、すべて無料でダウンロードできる。

 このプロジェクトは、国立国会図書館が保有するデジタルアーカイブ(デジタル化資料)を電子書籍化して配信するもの。著作権処理などの手続きを経て実際に電子書籍の制作から配信までを実験的に行うことで、課題などを洗い出すのが目的。配信期間は2月1日から3月3日までの約1カ月間。13作品がラインナップされているが、2月1日にはまず7作品が公開された。

 「河童」では、国会図書館所蔵の芥川龍之介の直筆原稿に、解読の補助となるよう青空文庫のテキストを併載した。同じく芥川龍之介の「羅生門」は1917年の初版(阿蘭陀書房)で、「下人の行方は、誰も知らない」と結ぶ有名な末尾の文章が異なっているという。こちらも青空文庫から新字新仮名によるテキストを掲載し、読み比べできるようにした。

 「おほかみ」は、明治中期のグリム童話の翻訳作品(上田萬年訳)。参考に青空文庫版の「おおかみと七ひきのこどもやぎ」を掲載している。竹久夢二が子供向けに描いた「コドモのスケッチ帖〈動物園にて〉」では、デジタル化資料からの挿絵と青空文庫からのテキスト部分を組み込むハイブリッド型とした。

 酒井潔「エロエロ草紙」は戦前の発禁本で、当時の社会風俗を知る上で貴重な資料だという。国会図書館のデジタル化資料におけるアクセス数ランキングで、2012年に5カ月連続で1位を記録した。

 浪花禿箒子著・石川豊信画「絵本江戸紫」は、江戸中期の女性生活文化を紹介した書籍。
「平治物語〔絵巻〕」は、絵巻物の実物そのものを読むように、途切れることなくスクロール表示できるようにした。

 閲覧は、紀伊國屋書店の電子書籍アプリ「Kinoppy」を使用する。同アプリは、Windows版、Mac OS版、iOS版、Android版が用意されている。

 7作品のフォーマットは「平治物語〔絵巻〕」のみ.bookで、他はEPUB。なお、「平治物語〔絵巻〕」は、Windows版では仕様上ページ区切りができるため、ひと続きで閲覧できないとしている。

 2月8日からは、柳田國男「遠野物語」、夏目漱石「硝子戸の中」、永井荷風「腕くらべ」、宮澤賢治「春と修羅」「四又の百合:宮澤賢治童話集」、「トツパンの写真絵本」の1つである「きしゃでんしゃ」の配信を開始する。

「紀伊國屋書店BookWeb」のサイトに開設した「文化庁eBooks プロジェクト」のページ

(永沢 茂)