ニュース

クラウドドライブを容量無制限で提供、「Bitcasa」が日本進出、年額99ドル

10GBまでの無料トライアル版も

 米Bitcasaは28日、“どこでも使える容量無制限のストレージ”を掲げるオンラインストレージサービス「Bitcasa Infinite Drive」を、日本を含むアジア市場で提供開始すると発表した。料金は年額99ドルまたは月額10ドル。アジア市場でのサービス開始を受けて9月15日までの期間、新規ユーザーを対象に20%割引の年額79ドルの特別価格を設定している(登録時にプロモーションコード「ASIA20」を入力)。有料サービスのほか、10GBまで無料で使えるトライアル版もある。

記者発表会でサービスを紹介するBitcasaプロダクトディレクターのルーク・ベンキ氏

 Bitcasa Infinite Driveは、端末の内蔵/外付けハードディスクなどのローカルストレージと同じ感覚で、クラウド上にドライブを持つことができるサービス。WindowsおよびMac OSのデスクトップアプリ、iOSおよびAndroidのスマートフォンアプリ、Windows RT、ウェブから利用でき、Bitcasa Infinite Driveに置いているデータには各端末から瞬時にアクセス可能だという。

 例えば、WindowsやMacにインストールすると、Bitcasa Infinite Driveがローカルドライブと同列に表示され、ドラッグ&ドロップなどによるファイル/フォルダー操作も同様に行える。見かけはローカルドライブと同じだが、異なるのはその容量表示だ。Windowsでは「7.99EB」、Macでは「562.95TB」となっている。本来は容量が無制限のドライブとしてマウントされているわけだが、それぞれのOSで対応できる容量の制約から、そのような容量表示になってしまっているのだという(Bitcasaでは、きちんと「無制限」と表示できるよう、OSのベンダーにバグレポートを提出しているとのことだ)。

Windowデスクトップアプリ
Macデスクトップアプリ

 クラウドにデータをアップロードする際は端末側で256ビットAESにより暗号化され、クラウド側には暗号化されたデータが保存される。また、最低3個のコピーがデータセンターに保管されるため、ローカルに保存しておくよりも信頼度が高いという。

 そのため、従来のようにローカルドライブをメインハブとして使用し、そのデータをクラウド側にバックアップした上で、所有する複数端末にそのファイルのコピーをダウンロードするという“同期型”オンラインストレージとは大きく性格が異なると、Bitcasaでは説明する。Bitcasa Infinite Driveをプライマリドライブとして使用し、すべてのデータをクラウド側に置き、各端末からそこにストリーミングでアクセスするという考え方だ。これにより、ファイルの同期をとる必要がなくなり、端末側のストレージ容量を気にすることもないとしている。

 もちろん、それにはレスポンスの速さが重要になるが、Bitcasaによれば、登録ユーザーの9割で150ms以下で使えるという。端末からクラウドにデータを送信する技術や、クラウドから端末へデータをストリーミングする技術などを独自開発。65件の国際特許を申請中だとしている。例えばハードディスク上のローカルキャッシュの一部を使用してクラウドからのダウンロードを高速化するなどしており、データがダウンロードされるのを待つような感覚はなく、動画の再生なども通常のローカルドライブから行っているような感覚だとしている。

 一方で、データを完全にクラウドに移行するのではなく、ローカルにもデータを置いておきたいというニーズにも、ミラーリング機能により対応する。これは、フォルダーを選択してメニューから「Mirror This Folder to Bitcasa」を選択することで、ローカル/クラウド間で同期できるものだ。オフライン時にローカル側で変更したデータも差分が自動的にアップロードされる。

 また、クラウドに置いた写真などのファイルを友人らと共有することも可能だ。ファイル/フォルダーを選択し、メニューから「Send to Friend」を選ぶことで、そのデータを共有するためのリンクが生成される。パスワードを設定することも可能だ。共有されるデータは、写真なども圧縮されることなくフルサイズ/フルクオリティでダウンロードできる。

 このほか、ウェブサイト上のファイルをBitcasa Infinite Driveに直接保存できるGoogle Chrome用拡張機能も提供。近日中にFirefox版とSafari版も公開するという。また、開発者向けAPIも間もなく公開するとしている。

iOSアプリ
Androidアプリ

 Bitcasaは2011年に米国でベータ版サービスを開始、2013年2月に正式サービスに移行した。現在、世界160カ国以上(有料サービスは140カ国以上)にユーザーがおり、30PB以上のデータを保管しているという。米国以外では日本のユーザーが最も多く、有料サービス会員のうち12%を日本のユーザーが占めるという。

 すでにユーザーが多数いる日本だが、今回、アジア市場向けにサービスを日本語、中国語、韓国語にローカライズするとともに、グローバルでストレージを強化。日本でも、他の地域のユーザーと同様のパフォーマンスでBitcasa Infinite Driveが利用できるようにした。Bitcasaのデータセンターは2014年までに世界8カ所に展開する計画だが、そのうちの1カ所がすでに東京にあり、東京にもローカルキャッシュ機能を整備することでアップロード速度やストリーミング機能の向上を図ったという。

電話/CD/DVDの次は、ハードドライブがストリーミングで変わるべき時

 28日、Bitcasaが東京都内で記者発表会を開催し、同社プロダクトディレクターのルーク・ベンキ氏がサービス内容を紹介するとともに、“どこでも使える容量無制限のストレージ”を提供するに至った背景を説明した。

 ベンキ氏は、スマートフォンで日々撮影される写真など、さまざまな端末がデータを生成するようになり、ユーザーが保有するデータ量が驚異的なスピードで増加していること、あわせてそれらのデータにありとあらゆる場所からネットワーク経由でアクセスするニーズが加速したことを受けて、「ストレージの新時代が始まった」と表現。そのキーワードとして「ハードウェアがいらないストリーミング」を挙げた。

 これは、電話というものがSkypeへ、音楽コンテンツがCDからSpotifyやiTunes Storeへ、映像コンテンツがDVDからHuluやNetflixへと、主流がストリーミングに移行していることだという。そしてこれらの次に「ハードドライブが変わるタイミングに来ている」と、ベンキ氏は指摘する。ストレージ分野ではこれまで、容量を拡大するといった流れはあったが、データの保管方法そのものについての考えた方はほとんど変わっていないという。ネットワークの帯域がアップした現在、データをデバイスに保管するという考え方ではなく、ストレージ領域でもストリーミングが取って代わる時期に来たというのだ。

 ガートナーの調査によると、一般世帯におけるデジタルコンテンツの保存量は、2012年の464GBから、2016年にはその7倍の3.3TBに増加すると予測されるという。その巨大なデータをどこに置くのかという課題に対しての回答が、クラウドストレージを使うことだというわけだ。クラウドに保管されているデジタルコンテンツは2012年は7%に過ぎないが、2016年には33%に拡大するとし、「ここにBitcasaのビジネスチャンスがある」とした。

 なお、オンラインストレージ/クラウドストレージに関連する事業としては、競合サービスも含めてさまざまな企業が存在しているが、容量を提供するドライブメーカーに始まり、セキュリティに力を入れたサービス、あるいはメンテナンスに特化した企業、同期/アクセス機能や共有機能、バックアップ機能などさまざまなレイヤーがあり、「それぞれの企業が1つずつストレージのパズルのピースを埋めていっている」という。これに対してベンキ氏は、機能の集約化が必要だと指摘。これらすべてのピースを容量無制限のクラウドストレージで提供するのが、Bitcasa Infinite Driveだとした。

(永沢 茂)