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米Microsoft、“物言う株主”に取締役の座~Ballmer CEO退任と関係か

 米Microsoftは30日、“物言う株主”として知られる投資会社ValueAct Capital社 社長のMason Morfit氏を取締役に迎えると発表した。

 Morfit氏は、MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏辞任を求めていたと噂されている。Microsoftが取締役の座を迫られて提供する形となったのは歴史上初めてだ。Ballmer氏はわずか1週間前の8月23日に引退発表をしたばかりで、この2件は関係があるのではないかと噂されている。

 報道発表が行われたタイミングも注目に値する。米国では9月2日月曜日はLabor Dayの祝日であり、土日と合わせた3連休となる。3連休直前の金曜日にこの発表が行われたことから、Microsoftとしてはできるだけ人目につかないように発表したかったと見られている。

 米国サンフランシスコに本社を持つ投資会社ValueAct Capital社の総資産額は120億ドルで、現時点でMicrosoftの普通株式0.8%を保有する。創業者のJeffrey Ubben氏は株主を軽視する経営者を厳しく批判する「アクティビスト(物言う株主、活動家)」として知られてきた。

 MicrosoftとValueAct Capitalは合意の下で、ValueAct Capital社長のMason Morfit氏を取締役に迎える。Morfit氏には2013年年次総会後最初の取締役会から出席する権利が与えられている。この年次総会は2013年11月に開催予定だ。

 Microsoftの発表文でSteve Ballmer CEOは、「我々の取締役会と経営陣はMicrosoft株主のために成長と価値を高めることを約束しており、ValueAct Capitalによる見解を聞くことを楽しみにしている」とコメントした。

 またMorfit氏は、「同社の進化におけるこの重要な変曲点で、私はすべての株主のために価値を創造し続ける取締役会とMicrosoftの経営陣と共に、積極的に働くことを楽しみにしている」とコメントしている。

 Microsoftは、ValueAct Capitalとの間の合意文書を米証券取引所に提出している。この合意内容には、ValueAct CapitalによるMicrosoft株の保有割合を5%未満にとどめることや、Microsoftの元または現役幹部を誹謗しないことなどが含まれている。

 Steve Ballmer氏の退任発表は、公式発表にあるような予定されていた事ではなく、想定外の出来事ではなかったのかとの憶測が発表以来広まっていた。

 現にBallmer氏は退任発表文の中ですら、当初はそう考えていなかったことを「私の退職時期についての当初の考えは、デバイスとサービス企業への変革途中で起こることだった」と述べている。

 さらにBallmer氏は文章の中でBill Gates氏に対する感謝の言葉を述べることもしなかった。Gates氏がMicrosoftの創業者であり、Ballmer氏とハーバード大学時代の同級生であり、30年以上近く苦楽を共にして経営してきたにもかかわらずである。

 さらに言えば、Bill Gates氏も発表文中でこの長年のパートナーを称賛することもなく、淡々とコメントしたに過ぎなかった。

 こうしたことから、Ballmer氏の退任が円満ではなく、またGates氏がその中で一定の役割を果たしたのではないかと憶測されていた。ValueAct Capitalによる圧力が関係したことは十分に考えられる。

 いずれにせよ、ValueAct Capitalは、Microsoftの株式を1%も保有せずに取締役の座を得ることになった。その中でMicrosoftは極めて複雑な事業をやりくりするための後任CEOを見つけるという難しいかじ取りを迫られることになる。

(青木 大我 taiga@scientist.com)