清水理史の「イニシャルB」

これはTailscaleか? 国産WireGuardメッシュ「ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ」を実測で確かめた

WireGuardを利用した接続サービス「ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ」

 2026年7月15日、GMOペパボ株式会社から、デバイス同士を暗号化された通信で直接つなぐネットワーク接続サービス「ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ」の提供が開始された。

 WireGuardを利用して複数拠点、自宅と外出先、VPSなどを簡単に接続できるサービスだ。同様のサービスとしては、ゼロトラストのIDベースの接続プラットフォーム(A Zero Trust identity-based connectivity platform)サービス「Tailscale」が知られているが、サービス内容も料金もソフトウェアも、Tailscaleと非常によく似ている。

 国産サービスであることが特徴だが、機能的にはどうなのか? 実際に試してみた。

ベースはTailscale

 「ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ」(以下「ゼロトラストリンク」)のニュースを目にしたとき、「Tailscaleっぽいなぁ」と思っていたのだが、調べてみると、想像以上にTailscaleそのものに近いサービスだった。

  • WireGuardでP2Pメッシュ接続するという基本的な構成
  • 直接接続できないときのためのリレーを提供
  • 外部アクセスのためのExitノードを設定できる
  • サブネットルーターで内部ネットワークとの中継ができる
  • 名前解決のしくみを提供
  • ネットワークアドレスが「100.x.x.x」
  • 利用する内部DNSサーバーが「100.100.100.100」とTailscaleと同じ

 もちろん、WireGuardでできることをサービスとして提供しようとすると、似たようなサービスになるのだが、これらに加えて料金プランもTailscaleによく似ており、特に無料で利用できるプランについては、デバイス無制限、6ユーザー、3グループと、以下のように条件がほぼ同じだ。

 Tailscaleと提携したサービスなのか? と思ったが特にそうしたアナウンスはない。そこでいろいろ調べてみると、公開されている同サービスの「オープンソースライセンス」に、「github.com/tailscale」が並んでいることを確認できた。

 さらに「オープンソースライセンス」を確認すると、Tailscale本体(tailscale.com、BSD-3-Clause)をはじめ、多数のコンポーネントが並んでいた。つまり本サービスは、オープンソースとして公開されているTailscaleのクライアントコードを土台としていることになる。

 一方、ログを確認すると、接続に使われるリレーサーバーは全て同社のドメイン(○○.relay.ztna.lolipop.jp)で、「よくある質問」でも東京リージョンに設置されていると案内されている。クライアントはTailscale由来だが、接続を仲介する基盤は国内に自前で構築されているとみていい。

Tailscaleのコードを活用しているため動作がほぼ同じ

 もちろん、Tailscaleと比べて足りない部分もあり、例えば、本稿執筆時点(2026年7月26日)ではLinux用クライアントが提供されていなかったり(近日提供予定)、そもそもクライアントアプリのインストール時に発行元を確認できなかったり、Microsoft Entra IDなどとのSSO連携ができなかったり、中継サーバーも現状は東京のみだったりと、厳密に機能を比べると、見劣りする部分はあるのだが、やろうとしていることは間違いなく「国内版Tailscale」と言っていい。

 確かにTailscaleは便利なサービスだが、組織で契約するとなると、国内サービスの方が望ましいうえ、設定画面やヘルプも日本語の方が助かる。個人ユーザーでも契約して自宅サーバーへの接続などに活用できるが、組織のリモートワーク環境や拠点間接続などにも十分活用できるサービスと言えそうだ。

手軽に契約、すぐつながる

 実際に使ってみたが、非常に簡単だ。

 ウェブサイトから無料プランでの開始を選択し、Googleアカウント(Workspaceアカウントだと30日間のトライアルになるので注意。個人向けアカウントが必要)でサインインし、ネットワーク名を設定。画面の指示に従ってデバイスを接続するか、管理画面に移動するだけでいい。

▼サービスのウェブサイト
ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ

Googleアカウントでサインイン後、ネットワークを作成
画面の指示に従ってデバイスを接続
デバイスにアプリをインストールし、申し込みと同じGoogleアカウントでサインインすれば接続完了

 クレジットカードの登録も不要だし、WireGuard、P2P接続などといった技術的な背景を知る必要も一切ない。PCに接続用のソフトウェアをインストールし、同じアカウントでサインインすれば、自動的に接続が完了する。

 Tailscaleは難しいという印象を持つ人も少なくないが、本サービスは初心者でも簡単に使えるように、かなりハードルを下げている印象だ。

 ただし、1点注意が必要だ。執筆時点では、接続用のソフトウェア(バージョン1.1.11)のインストール時に発行元を特定できず、Windowsによってインストールが遮断されてしまった。また、検証したPCのうち1台ではWindows Defenderでも警告が表示された。インストーラーのハッシュとファイルそのものをVirusTotalで検証したが問題なかったので、誤検知だったと思われる。

 せめてダウンロードサイトにハッシュでも記載されていれば、確認後に安心してインストールできるので、ここは改善が望まれるポイントだ。

発行元を特定できず警告が表示された

P2P接続になるとは限らない

 基本的に本サービスは、ユーザーが所有するデバイス同士をP2P接続するためのものなので(後述するサブネットルーターを使えばネットワーク間接続も可能)、PCやスマートフォンなど複数台を接続する必要がある。

 今回は、auひかり側にPC1台、フレッツ 光クロス側にPC2台、さらにau回線のiPhone 16というように合計4台を接続してみたが、いずれもアプリをインストールしてサインインするだけでつながるので、何の苦労もなかった。

最終的に4台を接続

 ただし、実際にP2Pでデバイス同士がつながっているのかはネットワーク構成次第(回線や接続方法、ルーターの仕様や設定など)と言える。

 基本的に内部からの通信によって相互接続を確立する(UDPホールパンチングなど)ので、ルーターなどでポートを開く必要はないのだが、NATの形式やファイアウォールの設定などによって直接接続ができない場合は、同社が用意したリレーサーバー経由で通信が中継されることになる。これによって一般的なネットワーク構成であれば、ポートフォワードやファイアウォール設定など、既存のネットワークに手を加えることなく、接続を確立できるはずだ。

 ただし、リレーサーバーの仕様や使用状況についてはよくわからなかった。東京リージョンに設置されていることが公開(よくある質問)されているうえ、ログにはホスト名やIPアドレスが記載されており、複数あることもわかった(「no v6 address」なのでv6ではつながらない模様)。

 しかし、現状の接続がP2Pなのかリレー経由なのかをGUI上で確認する手段は用意されていない。現状、リレー経由かどうかを判断するには実際の速度を計測するのが手っ取り早い。

 以下の図は、筆者宅での検証結果だ。auひかりに接続したPCと、フレッツ 光クロスに接続したPCの間でゼロトラストリンク接続を確立し、iPerf3による速度を計測した結果となる。

リレー経由での接続

 auひかり側は、ホームゲートウェイの配下にUniFiゲートウェイを配置した二重ルーター構成となっている。UniFiゲートウェイのNATはオフにしているが、ファイアウォールやIPS/IDS機能がオンになっている状況で、ホームゲートウェイのNATやフィルタリング設定と合わせて複雑な構成になっている。

 この場合、UniFiゲートウェイ配下のPCで接続すると、上り下りともに50Mbps前後という結果になった。後述する結果から考えると、おそらくリレーサーバー経由での接続だと考えられる。

 同じPCをUniFiゲートウェイではなく、上位のホームゲートウェイに接続すると、今度は下り(フレッツ 光クロス→auひかり方向)が60Mbps前後、上り(auひかり→フレッツ 光クロス方向)が712Mbpsとなった。

 上下で経路が異なる可能性は低いのでは? とも考えたが、上り側は700Mbps以上出ているので、接続環境次第では700Mbps近い速度で通信することが可能だ。

方向によって違いがある理由は明確ではないが、おそらくauひかり→フレッツ光クロス方向の712MbpsはP2P通信と考えられる

 ちなみに、フレッツ 光クロス側に2台のPCを接続し(いずれも10Gbps接続)、このPCの間でiPerf3を実行したところ、ローカルIPアドレスの場合は9.4Gbps前後で通信可能で、ゼロトラストリンク経由の場合は700Mbps前後となった。この構成は明らかにP2P接続なので、WireGuardのボトルネックを考慮した最高速度が700Mbps前後であることが推測できる。

 要するに、P2P接続できれば700Mbps前後、リレーサーバー経由の場合は60Mbps前後と考えるとよさそうだ。

Exitノードとサブネットルーターを試す

 続いてExitノードとサブネットルーターの機能を検証してみた。

Exitノードとサブネットルーターのイメージ

 Exitノードは、文字通り外部アクセスのための出口として特定のデバイスを利用する機能だ。例えば、自宅のPCをExitノードに設定しておくと、外出先のスマートフォンでゼロトラストリンクに接続した際、インターネット接続がExitノードに設定した自宅のPC経由となる。固定IPが設定された環境にExitノードを設置すれば、送信元IPアドレスでフィルタリングされたVPSなどに、外出先などからも接続できることになる。

 設定は簡単で、Exitノードに設定したデバイスのアプリで「このデバイスをExitノードとして登録する」を有効化する。すると、管理画面に承認を求めるメッセージが表示されるので許可すれば、そのデバイスがExitノードに設定される。

 あとは、外出先のスマートフォンなどで「Exitノードを使う」を選択し、承認されたExitノードを選択すれば、以後、インターネット接続がExitノード経由となる。設定が行ったり来たりになるので、はじめての場合は戸惑うかもしれないが、さほど難しくはないだろう。

インターネット接続に使うデバイスをExitノードに指定
管理画面で承認
他のデバイスで「Exitノードを使う」をオンにする

 続いて、サブネットルーティングを試した。これは、本来、Linuxなど軽量のデバイスを設定したいところだが、本稿執筆時点ではLinuxクライアントが提供されていないため、Windowsマシンで設定した。

 サブネットルーターとして設定したいデバイスのアプリで、設定を有効化し、「広告するサブネット」を設定する。

 例えば、自宅のネットワークが「192.168.40.0/24」の場合、このネットワークに設置したデバイスをサブネットルーターに設定し、広告するサブネットとして「192.168.40.0/24」を設定すればいい。

 つまり、「192.168.40.0/24に所属するデバイスにアクセスする場合はこのサブネットルーターを経由してください」という設定になる。

LAN内のデバイスでサブネットルーティングを有効にすると、このデバイス経由で公開されたネットワーク上の他のデバイスにアクセス可能になる

 前述したように、ゼロトラストリンクでは基本的にP2P接続なので、接続したいデバイスに個別にアプリをインストールする必要があるが、サブネットルーターは自分自身に加え、自分が所属するネットワークに対して通信を転送できる。このため、ゼロトラストリンクアプリをインストールしていない(できない)デバイスにもアクセスできるようになる。

 NASやネットワーク家電などにもアクセスできるようにしたいときに活用するといいだろう。

わかりやすいうえに実用的

 以上、「ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ」を実際に試してみたが、実質的にTailscaleと基盤を共通化しつつ、国内企業が提供するサービスであること、日本語によるわかりやすいユーザーインターフェースやヘルプを参照できることを考えると、Tailscaleの代替として魅力的なサービスと言える。

 現状、Tailscaleを使っているのであれば乗り換えるほどではないが、同様のしくみをこれから使ってみたいと考えている場合は、こちらの方が使いやすいだろう。

 現状では、足りない機能や不満点があるのも事実だ。また、今後ユーザーが増えてきた場合、果たしてリレーサーバーで十分な帯域が確保されるのかが気になるところだが、少なくとも現状は、仮にリレーサーバー経由でも実用上は問題ないと言える。

 自宅サーバーやNASを活用したり、VPSをより活用したりしたいと考えている人は、無料で使えるので、試してみる価値は十分にあるだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中