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NEC、スマホなどの端末間通信のみで情報配信ネットワークを構築する技術を開発

 日本電気株式会社(NEC)は3日、3G/LTEや無線LANのアクセスポイントを使わずに、スマートフォンなどのモバイル端末のみで大規模な情報配信ネットワークを構築する技術を世界で初めて開発したと発表した。

 今回、NECが開発した技術は、無線LANの端末間通信を利用して多数のモバイル端末でネットワークを構築し、効率的に情報を配信するマルチキャスト技術と、無線LANの速度低下を抑制する技術を組み合わせたもの。この技術により、通信インフラが途絶した状況や、通信端末が集中する過密環境でも、高速性を保ったままデータ量の大きい写真や動画なども配信・共有できるという。

モバイル端末のみでネットワークを構築

 従来のマルチキャスト配信は、配信途中のデータ欠落を許容するアプリケーションにしか適用できなかったが、データ欠落の発生しないDTN(Delay/Disruption/Disconnection-Tolerant Network)マルチキャスト配信技術を世界で初めて実現。送信側は従来と同じく一斉配信を行うだけで、配信途中のデータ欠落を多数の受信端末同士が補完しあうことにより、パケットロスが頻発する過密環境でも安定した大規模情報配信が実現できる。

 また、多数のモバイル端末が密集して通信を行う場合は、著しい通信速度の低下が発生するが、これを回避する技術を世界で初めて開発。各端末に搭載したアプリケーションが、電波が届く範囲にある多数の端末の送信タイミングを自律分散的に数10ミリ秒から数100ミリ秒単位で制御し、複数の端末からの同時送信を回避してパケットの衝突を抑制することで、過密環境でも通信速度を低下させず、データ量の大きい写真や動画も高速に配信・共有できるという。

効率的なマルチキャスト配信技術と、過密状態での高速なデータ転送技術を開発

 さらに、ネットワーク全体の状況を把握し、情報の優先度に応じて各モバイル端末の送信タイミングを決定する技術を東北大と共同で開発。警報や応援要請など緊急性が高い情報を優先的に発信し、低遅延で広範囲に拡散することができる。

 NECはこの技術を、地方自治体における災害情報配信・共有システムや、防災無線をはじめとした社会インフラネットワーク、大規模イベントの会場など通信端末の過密環境における情報配信システムなどへの適用を目指すとしている。

(三柳 英樹)