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電子書籍にも「出版権」の設定を可能に、著作権法改正案を今国会に提出へ
(2014/3/6 14:10)
文化審議会著作権分科会は5日、第39回会合を開催した。現在の著作権法では紙の書籍を対象としている「出版権」について、電子書籍に対応した出版権の創設を求めた小委員会の報告を了承した。文化庁ではこれを受け、今国会に著作権法改正案を提出する見通し。
会合では、出版者への権利付与などについて議論を行ってきた出版関連小委員会が、これまでの議論を報告。最終報告書では、インターネット上の海賊版対策として、電子書籍に対応した出版権を設定することにより、著作権者に加えて出版者も海賊版への差止請求ができるようになるとして、電子書籍に対応した出版権の整備を求めている。
現在の著作権制度で定められている出版権とは、著作権者との設定契約により出版者に生じる権利で、出版権を設定した場合、出版者は独占的に紙の出版物を出版することができ、紙媒体の海賊版にも出版者自ら差止請求を行える。しかし、現行の出版権は電子書籍に対応した制度になっていないため、電子書籍では出版者にどのような権利を付与するかについて小委員会で検討が行われた。
小委員会では、出版者に付与する権利として「著作隣接権の創設」「電子書籍に対応した出版権の整備」「訴権の付与」「契約による対応」の4つの方策を検討。これらのうち、著作隣接権の創設については著作権者などからの反対が多く、関係団体ヒアリングなどでは出版権の整備を求める意見が多かったとして、電子書籍に対応する出版権の整備を求めることでまとまった。
電子書籍と紙の出版権の扱いについては、日本書籍出版協会などが「紙と電子を一体とした出版権」としての整備を求め、著作権者団体や日本経済団体連合などは「紙とは別の電子書籍の出版権」を求めるなど、意見が別れた。
小委員会では、出版権制度は著作権者と出版者との設定契約を基礎としているため、権利を一体とするか別個とするかの差異は特段ないとした。一方で、関係者の意見に隔たりがあるのは、電子出版についての契約慣行が十分に確立していないことが一因だと指摘し、出版者に対しては著作権者に契約の範囲を説明し、契約上明示していくなどの取り組みを求めた。また、立法化にあたってはこうした関係者の意見や出版・電子出版の実態などを考慮することが必要だとして、具体的な条文については文化庁に委ねた。
文化庁では、著作権分科会での検討を踏まえて法制化の準備を進めており、今国会に著作権法改正案を提出する予定だとした。