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観光消費の引き上げに寄与するか~リクルートが沖縄で取り組む観光O2O
(2014/5/30 06:00)
ITにより沖縄の観光を活気づかせる取り組みが4月25日から始まっている。リクルートライフスタイルの提供するポイントアプリ「Airウォレット」と、クラウドレジアプリ「Airレジ」を連携させた実証実験で、O2O施策により観光消費を促進させようという試みだ。
「Airウォレット」は、対象店舗で決済するとリクルートポイントが貯まるアプリ。今回の取り組みでは、ジオフェンシングという技術を用いて、ユーザーが那覇空港に到着してアプリを起動させると、1000ポイントが付与されるシステムを付加した。リクルートポイントを事前に付与することで来店の動機付けを行う。
ポイントが付与されるのは、リクルートライフスタイルが運営する宿・ホテル予約サイト「じゃらんnet」で沖縄エリアの宿泊予約をしたユーザーで、「じゃらんnet」の会員基盤と送客力を活かす狙いだ。
リクルートポイントが利用できる店舗は、沖縄県内40店舗。利用可能な店舗は、位置情報をもとに「Airウォレット」で検索できる。
店舗側では、iPad向けのPOSレジアプリ「Airレジ」を導入。導入に必要なiPadは、リクルートライフスタイルから各店舗に無償提供された。「Airレジ」を導入することで、購入者のリクルートポイント決済が可能となり、観光客を店舗に誘導する効果が期待できる。また、「Airレジ」本来の機能である、売上の自動計上やクレジットカード決済機能も利用できる。
2つのアプリにより、リクルートポイントをきっかけとした消費行動が促されるかが取り組みの主旨となる。
ポイントとO2Oによる観光地活性化
沖縄県は国内で代表的な観光地のひとつだ。1972年度は60万人弱だった入観光客数は、2013年度には10倍以上の658万人にまで膨れ上がった。日本人、外国人ともに、多くの旅行客がこの県を訪れている。
一方で、沖縄県の観光には課題もある。観光収入の伸び悩みだ。沖縄県の観光における1人当たり消費額は、2006年度の7万1560円から2013年度には6万7459円に減少した。減少の原因について、沖縄県 文化観光スポーツ部観光政策課の山川哲男氏は、「宿泊費と土産買物費の減少」を指摘する。沖縄県ではこれらをふたたび上向かせ、観光消費額を引き上げたい考えだ。
また、今回の取り組みはその他の観光課題についても解決の糸口となり得る。
そのひとつが、「Airレジの導入」によりクレジットカード決済対応店舗が増加することだ。外国人旅行客はクレジットカード決済を利用することが多い。山川氏によると、沖縄観光客の満足度調査において、金融決済に満足している人は全体の24.1%しかいないという。しかし、「Airレジ」を導入すれば、同時にクレジット決済に対応可能となり、外国人観光客の満足度も増す可能性は高い。
導入店「ポイント利用の際にコミュニケーションが生まれることもメリット」
土産物店を那覇空港内に構える「エアポートトレーディング」は、今回Airレジを導入した店舗のひとつだ。代表取締役社長の丸橋弘和氏は、以前から社員にiPad/iPad miniを配布しており「操作面でスタッフが戸惑う不安のなかったこと」と「ポイントをきっかけに新規の旅行客を集客できるのではないか」といった点から、導入を決めたという。
同店舗では、現金以外の決済のうち8割はクレジットで、残り2割を電子マネー系が占めているという。電子マネー系の5割はEdyで、残りはWAONとSUGOCAで分け合っているという状況だった。しかし、Airレジ導入後2週間経った時点では、リクルートポイントの利用者がWAONとSUGOCAのレベルまで伸びてきているという。
泡盛販売の「古酒家」も、Airレジを導入した。運営するマコト・オリジナルグッズの営業部長を務める平野晃央氏は、iPad用レジアプリに魅力を感じつつも、「『古酒家』のように商品数の多い店舗では難しい」という不安もあったといい、今回実験的に「Airレジ」を導入してみたという。
導入してみて、開始直後からリクルートポイントを使用する来店者は1日1件はあり、ポイント利用の際にコミュニケーションが生まれることもメリットだと平野氏は感じている。また、iPadでレジ業務をまかなうことについては、店員が持ち歩けることから利便性も高くなるのではないか、と話す。
沖縄県では、今回の施策に参加した飲食店やダイビングショップなど、那覇市を中心にさまざまな店舗で現在「Airレジ」が導入されている。
AirウォレットとAirレジを使った沖縄での実証実験は、8月末まで行われる予定だ。
施策の効果については現段階では数字がまとめられていないが、同じ金額の買い物でも、財布の現金を出すのと貯まったポイントを使うのでは、使い方も変わってくることが予想される。日常生活で多くのポイントを貯めた人たちが、それを沖縄観光で使うというサイクルができるかが、今後のテーマとなる。