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オープンデータで救える命を救え、心停止者の救命支援アプリ「AED SOS」開発中

 心停止の現場に付近の救助者を呼ぶためのスマートフォンアプリ「AED SOS」を、Coaido株式会社が開発中だ。突然の心停止者に遭遇した時、スマートフォンの位置情報を活用してSOSを発信。付近の救助者を迅速に呼んでAEDを届けてもらうことにより、適切な処置を施すことで救命率を上げるのが目的。iPhone/Android向けに無料で提供する予定としている。

 心停止者を発見した場合にAED SOSを起動して「SOS」ボタンを押すと、半径500m以内にいるAEDの運搬協力に同意したユーザーにプッシュ通知で自分の位置情報を送信。その場所にAEDと心肺蘇生が必要な人がいることを即座に伝える。

 SOSの通知を受けた側のユーザーは、アプリを起動すると地図が立ち上がり、ユーザーの現在地とSOSの発信地、付近のAEDの位置が表示される。協力できる状態のユーザーが「AEDを取りに行く」ボタンを押すと、SOS発信者や他の協力表明者と音声通話可能になる。

 その後、近くのAEDを確保した上で、「どのビルの何階か」「どの入口から入れるのか」といった救助現場の詳細な場所を通話で確認してAEDを届ける。こうした仕組みによって救急車到着前にAEDを使用できる確率が高まると同時に、救命熟練者のユーザーが現場に急行することで心肺蘇生の適切な応急処置にもつなげられる。

 複数ユーザーの同時通話を実現するにあたっては、AED SOSではクラウド電話API「Twilio」のカンファレンスコール(電話会議)機能を利用している。Twilioのカンファレンス機能は最大40人まで同時通話が可能で、これにより電話番号非通知で複数人が同時通話できるシステムを構築できる。なお、アカウント認証はFacebookのアカウントを利用し、不正利用やいたずらを抑止する。アプリ内ではニックネームでの表記となる。

 AEDの設置場所についての情報は、自治体が提供しているオープンデータを使用する。ただし、Coaidoのサイトによると、こうした情報を公開しているのは福井県鯖江市・越前市、千葉県流山市、秋田県横手市、北海道室蘭市、静岡県裾野市、長野県上田市、北海道函館市、福井県の9自治体のみ。AED設置場所のオープンデータを提供する自治体が少ないことが課題の1つとなっている。

 AED SOSは、「アーバンデータチャレンジ東京2013(UDCT2013)」「オープンデータユースケースコンテスト」「Mashup Awards 9 Mashup Camp 東京」などのコンテストで上位の賞を獲得しており、受賞後も実用化に向けて開発が進められてきた。AED SOSの開発者であるアプリプランナーの玄正慎氏は、同アプリの開発・運営法人として2014年6月にCoaidoを設立。8月には京都大学環境安全保健機構付属健康科学センターの石見拓准教授とともに、アプリ開発に関する産学共同研究も開始している。

 一方で、AED SOSは前述したようにTwilioのカンファレンスコール機能を使ったシステムを構築するため、その際の通話料やシステム維持費をすべてCoaidoが負担するかたちとなる。アプリを多くの人に使ってもらうとなると、年間で数百万円~1000万円近くのコストがかかる見込みだという。短期的に収益を生み出せるような事業ではなく、初期運営資金の調達も大きな課題となっていることもあり、現在、クラウドファンディングサービス「READYFOR?」においてサポーターを募集している。

(片岡 義明)