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楽天とVISA、IC内蔵クレカで決済できるスマホ対応リーダー

 楽天株式会社とビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社は15日、楽天が運営するスマートフォン決済サービス「楽天スマートペイ」にて、ICカード内蔵クレジットカードによる決済に対応した「楽天スマートペイ IC・磁気対応カードリーダー」の申し込み受付を開始した。

(左から)楽天株式会社スマートペイ事業事業長の小林重信氏、楽天株式会社代表取締役副社長の穂坂雅之氏、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社代表取締役の岡本和彦氏、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社の井原亮二氏

 IC・磁気対応カードリーダーは、スマートフォンなどのモバイルPOS決済に対応するリーダーとして、日本で初めてICカードに対応。スマートフォン専用アプリ「楽天スマートペイ」とBluetooth接続することで利用できる。本体には、暗証番号を入力するPINパッドを備え、店側はアプリに金額を入力、客はカードリーダーで4桁の暗証番号を入力することで決済が完了する。対応カードは、ICチップを内蔵したクレジットカード、デビットカード、プリペイドカード。

「楽天スマートペイ IC・磁気対応カードリーダー」本体
スマートフォンとBluetooth接続し、専用アプリから金額を入力後、カードリーダー側で暗証番号を入力すると決済完了
複数のリーダーを使用する場合、Bluetoothの接続先を変更することで対応する。識別には、シリアル番号の下3桁が端末名として表示されるデバイス名を利用する
オプションでレシートプリンターも用意。Bluetooth接続で、専用アプリからそのままプリント指示を出すことができる

 セキュリティについては、ICカードに関するセキュリティの国際基準である「PCI DSS」、PIN入力端末でのセキュリティ要件である「PCT PTS」、ICカードリーダーの互換性を確保するための国際標準仕様「EMVレベル1」、IC対応クレジットカードの処理内容・方法を定めた国際標準仕様「EMVレベル2」に準拠している。暗号化方式はトリプルDESで、決済ごとに固有のキーを生成する「DUKPT(Derive Unique Key Per Transaction)」を採用している。アプリ、端末側にはクレジットカード情報、PINコードは保存されず、高いセキュリティ環境を確立しているという。

 本体価格は7980円(税込)。キャンペーンとして、12月15日以降に新規に申し込んだ加盟店のうち、審査通過月を含む4カ月以内に合計3万円以上の楽天スマートペイでの決済があった店舗に対し、7980円のキャッシュバックを実施。実質0円で導入できるとしている。電源は内蔵バッテリーで、充電専用のMicroUSB端子から充電する。バッテリー持続時間は最大8日間(充電後、一切使用せず放電された場合)。

 なお、IC・磁気対応カードリーダーの発売にともない、これまで提供してきた、磁気カードに対応した、スマートフォンのイヤフォンジャックに挿して使用するタイプのドングルは販売終了となる。

EMVと呼ばれる、ICカード取引の国際標準規格に準拠している
「楽天スマートペイ」の特徴である6大国際ブランドの手数料(一律3.24%)をIC・磁気対応カードリーダーでも利用可能
祝日や年末問わず365日入金に対応するため、中小零細企業に利用しやすいとしている
これまでのICカード対応リーダーの欠点であった、高価な費用などが軽減されるという

日本はICカード化の最後進国に、犯罪の温床になる可能性も

 楽天とビザ・ワールドワイド・ジャパンは15日、都内で記者発表会を開催。楽天代表取締役副社長の穂坂雅之氏が登壇した。楽天スマートペイでは、クレジットカード決済に対応してこなかった中小零細企業や個人事業主でもクレジットカード決済できるようになり、利用者数は順調に伸びているという。一方で、不正利用を回避するには、国際基準のEMVタイプのICカードに対応する必要があったため、IC・磁気対応カードリーダーの開発に至ったとした。

 ビザ・ワールドワイド・ジャパンでリスクマネジメントを担当する井原亮二氏は、ICカード普及率の低さがもたらす危険性を指摘した。今から20年前の日本は偽造クレジットカード大国であり、ピーク時には年間300億円程度の偽造被害があったという。その後、法整備、警察との連携、IC内蔵クレジットカードの登場により沈静化したが、ここ数年、世界的に急速なICカード化が進んだことで、相対的に日本の取り組みが遅れている状況となり、偽造犯が再び日本に舞い戻ってくる懸念があるという。

 現在、国別でICカード対応が遅れているのは米国(クレジットカードで13%、POSシステムで7%)と日本(クレジットカードで60%、POSシステムで17%)。特に米国では今年、磁気カードのPOS端末を狙った大手流通業による情報流出事件が発生し、約1億人に何らかの影響が出たという。事態を重くみた米国政府は、セキュリティに関する大統領令を発動しており、2015年の第4四半期には、IC内蔵クレジットカードの普及率が70%、IC対応POS端末の普及率が47%となる見通しだ。その結果、日本がICカード化の最後進国になる可能性が高まっている。

 この動きには、Visaが2015年10月から適用する「EMVライアビリティ・シフト」も影響している。今までは偽造被害の責任をイシュア(カード発行業者)が負担していたが、適用以降はIC内蔵クレジットカードにもかかわらず、磁気端末で被害が発生した場合、“防げたはずの被害”として、責任がアクワイアラ(加盟店契約業社)に移る。このルールは、日本国内取引でも同じタイミングで施行される。

楽天株式会社代表取締役副社長の穂坂雅之氏。楽天カード株式会社の代表取締役社長も兼任している
ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社の井原亮二氏
日本国内での偽造カード被害額。2年半前から増加傾向にあるという
全世界でのICカード対応状況
米国のICカード対応状況
2015年10月より施行される「EMVライアビリティ・シフト」

 なお、経済産業省は東京五輪を見据え、2020年までに国内で流通するすべてのクレジットカードのICカード化を表明しており、クレジットカード読み取り機器も、同年までにすべてICカード対応を掲げている。

(山川 晶之)