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ヤフー、プライバシーを侵害する検索結果の削除基準を明文化

 ヤフー株式会社は30日、検索結果ページの表示とプライバシーとの関係について検討を行ってきた「検索結果とプライバシーに関する有識者会議」がまとめた報告書を公表した。ヤフーでは、報告書で示された方針に基づく対応を3月31日から開始する。

 検索結果とプライバシーの関係では、2014年5月の欧州連合(EU)司法裁判所の判決において、いわゆる「忘れられる権利」として、Googleなどの検索エンジンに対して個人の名前を含む検索キーワードによる検索結果の削除を求める権利が個人にあることが認められた。

 ヤフーでは、検索結果ページの表示内容について、プライバシーを理由としてユーザーから削除を求められた場合など、検索サービスにおける「表現の自由」や「知る権利」と「プライバシーの保護」とのバランスを検討するため、外部専門家による有識者会議を2014年11月に設置。この会議の検討結果が報告書としてまとめられた。

 報告書では、プライバシー侵害の基本的な考え方としては、表現の自由とプライバシーの保護が衝突した事案における最高裁判決の判断基準を採用し、「公表する自由(表現の自由)」と「公表されない利益(プライバシー)」を比較衡量するとしている。

 ただし、直接の表現者(作者など)が被告とされる過去の裁判例とは異なり、検索サービス提供者は検索結果を自動的・機械的に表示しているもので、表現への関与の度合いは低いと説明。本来的にはリンク先ページの管理者に削除を求めるべきだが、「検索結果の表示内容自体から権利侵害が明白な場合」には、検索サービス提供者が検索結果の非表示措置を講じることが望まれるとしている。

表現の自由とプライバシー保護のバランスを踏まえて判断

 プライバシー侵害を理由とした検索結果ページへの要請の対応としては、検索結果ページにおいてタイトルやスニペットを非表示にする対応と、検索結果ページに該当ページのリンク自体を掲載しない対応の2種類について、基準を示している。

 タイトルやスニペットの非表示措置については、タイトルやスニペット自体にプライバシー情報が掲載されているといった、プライバシー侵害が明白な場合に限って行うとしている。また、この場合にはプライバシー侵害情報が含まれるタイトルやスニペットの部分だけを非表示とし、対象となるページは被害申告者の名前で検索した場合など、被害申告者と関係する合理的な検索キーワードの結果ページに限るとしている。

タイトルやスニペットを非表示にする判断基準
具体例1
具体例2
非表示措置の例

 検索結果ページにリンク自体を掲載しない措置については、リンク先ページの管理者またはプロバイダーに対して削除を命じる裁判所の判決(または決定)がある場合には、原則として非表示措置を講じるとしている。

 ただし、判決や決定がない場合でも、リンク先ページの記載から権利侵害の明白性および侵害の重大性、または緊急性があるとヤフーが認めた場合は、例外的に措置を講じるとしている。こうした場合の具体例としては、「特定人の生命、身体に対する具体的・現実的危険を生じさせうる情報が記載されている場合」「第三者の閲覧を前提としていない私的な私的動画像が掲載されている場合」を挙げている。

リンク自体を掲載しない措置の判断基準
具体例

 ヤフー執行役員社長室長の別所直哉氏は、「検索結果から自分の望まない情報を消してほしいという要望は決して新しいものではなく、以前からYahoo! JAPANに対して同様の要望が寄せられてきた」として、これまでもそうした要望には個別のケースに応じて判断し、対応を行ってきたと説明。今回の有識者会議での検討を受けて、ヤフーの対応が変化するというものではないが、対応方針を明文化して公表することで、この問題に対する対応についてのユーザーの理解を深めたいとした。

ヤフーの別所直哉氏
(左から)有識者会議委員の長谷部恭男氏(早稲田大学大学院法務研究科教授)、委員長の内田貴氏(東京大学名誉教授、弁護士)、別所氏

(三柳 英樹)