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2019年の日本は、ネットユーザーの3分の2がMになる――CiscoがIPトラフィック予測

 米Cisco Systemsは27日、IPトラフィックの動向を予測した年次報告書「Cisco Visual Networking Index(VNI)」の最新版を発表した。2019年までの5年間で世界のトラフィックは3倍に増加し、2ZB(ゼタバイト)に達するという。世界的なインターネットユーザーおよびデバイスの増加、固定ブロードバンド接続の平均速度の向上、動画の普及などが大きな要因だとしており、プロバイダーのネットワークがこれらに対応する必要に迫られる。

2019年のネット人口は39億人、IPデバイスは244億台でM2Mが4割以上を占める

 Cisco VNIによると、2014~2019年のIPトラフィックの年間平均増加率は23%。前回予測の2013~2018年における21%を上回る。グローバルのトラフィックは、2014年は1カ月あたり59.9EB(エクサバイト)だったのが、2019年は1カ月あたり168.0EBに。その結果、2019年の1年間のトラフィック量が、1984~2013年までの“過去のインターネット時代”の総トラフィックを上回る規模になるという。

 トラフィック増加の要因としてまず挙げられるのが、インターネットユーザーの増加だ。2014年は総人口の39%にあたる約28億人だったのが、2019年には約39億に増加。推定総人口76億人の51%となり、半数を超える。

 IPデバイス/接続の数も、2014年の142億から、2019年には244億へと増加する見通し。この中には、タブレット/スマートフォンやPCのほか、テレビ、ウェアラブルデバイス、M2Mなどが含まれるが、その中でも多数を占め、かつ増加も著しいのがM2Mだ。

IPトラフィック増加の要因(Cisco VNI公式ブログより画像転載)

 M2Mは、2014年の時点ですでにIPデバイス/接続の24%を占めていたが、2019年には43%にまで拡大する。このほかは、スマートフォンが19%(同19%)、テレビが12%(11%)、PCが6%(2014年は11%)、タブレットが4%(同3%)など。PCは台数としてはそれほど増減がないようだが、比率は2014年から半減。一方、スマートフォン、テレビ、タブレットは台数・比率ともに増加するが、M2Mほど大きな増加ではない。

 M2Mの中の分野別内訳は、ホームオートメーションやホームセキュリティ、ネットワークインフラ(プリンターやルーター)、家電といった「コネクテッドホーム」が48%、オフィスオートメーションやビルセキュリティ、ネットワークインフラ(同)、商用アプライアンスなどの「コネクテッドワーク」が17%、電気自動車充電スタンドやスマートメーターなどの「ユーティリティ」が11%、車載システムなどの「コネクテッドカー」が8%、健康モニタリングや遠隔医療などの「コネクテッドヘルス」が7%、環境・公共・交通管理などの「コネクテッドシティ」が4%など。

 コンシューマー向けのコネクテッドヘルス分野は比率こそそれほど大きくないが、年率平均54%で成長し、同分野のM2Mデバイス/接続は2014~2019年で8.6倍に増加するとしている。

M2Mデバイス/接続の内訳(Cisco VNI公式ブログより画像転載)

トラフィック容量の8割が動画、超高精細テレビやタブレットなどで消費

 一方で、トラフィック容量で見れば、M2Mはその性質上、占める割合は小さい。Cisco VNIの予測では、2019年時点でM2Mモジュール1台あたりの月間平均トラフィックは433MB(2014年は92MB)となっている。これに対して、スマートフォンが8419MB(同1640MB)、セットトップ/スティック端末が14800MB(同6213MB)、タブレットが32880MB(同6258MB)、PCが36311MB(同23824MB)、超高精細(UHD)テレビが50177MB(同22415MB)だ。

 M2Mを含め、いずれも2014年から大きく増加するが、増加率が大きいタブレットや、2019年にはPCを逆転するUHDテレビに注目されるという。

 Cisco VNIではトラフィック全体の容量増加の要因の1つとして、高度な動画サービスの普及を挙げている。動画視聴のトラフィックは2014年の時点ですでに全体の67.0%を占めていたが、これが2019年には80.1%に拡大するという。高度な動画サービスとしては、4K/8Kコンテンツのほか、全天球/360度動画なども含まれる。こうしたサービスがUHDテレビやタブレットで多く視聴されるようになるというわけだ。

2019年の日本、IPデバイス台数の7割弱がM2M、トラフィック容量の8割近くが動画

 日本法人のシスコシステムズ合同会社が開催した報道関係者向けの勉強会では、Ciscoのグローバルテクノロジー政策担当バイスプレジデントであるロバート・ペッパー氏がCisco VNIについて説明。日本に特化したデータも紹介した。

米Cisco Systemsグローバルテクノロジー政策担当バイスプレジデントのロバート・ペッパー氏

 それによると、日本における2014~2019年までのIPトラフィックの年間平均増加率は26%で、世界平均を上回っている。また、1カ月あたりのトラフィックは、2014年の2.7EBから、2019年は8.3EBに増加する。

 IPデバイス/接続の数は、2014年の7億から、2019年は14億に倍増。内訳は、M2Mが68%(2014年は46%)、スマートフォンが10%(同11%)、テレビが9%(同14%)、PCが5%(同11%)、タブレットが2%(同2%)など。台数ベースで見ればスマートフォン/タブレットは2014年よりも増加するようだが、全体における割合はほぼ横ばい。また、台数ベースでの大きな増減のないテレビやPCは、比率が縮小するとの見通しだ。

 一方、工場などでM2M分野が先行していたという日本は、2014年の時点でM2Mがすでに半数近くを占めていたが、これがさらに増加・拡大。2019年の日本は、ネットユーザーの3分の2が人間ではなく機械になる時代を向かえることになる。

 トラフィックの容量では、M2Mは6%(2014年は4%)にとどまり、スマートフォンが37%(同25%)、タブレットが18%(同6%)へと拡大する。これに対して、PCは29%(同54%)へと縮小。テレビは9%で横ばい。

 トラフィックの種類では、動画の占める割合が2014年の65.2%から2019年には77.2%へと拡大する。これに対して、ウェブ/データは18.9%(2014年は28.3%)、ファイル共有は3.9%(同6.4%)へ縮小。このほか、ゲームが0.02%で横ばい。

IPv6対応デバイス、2019年に4割を超える

 IPデバイス/接続が増加し、あわせて高度なネットワーク管理およびセキュリティなども要求されるようになることで、通信事業者は総合的なIPv6戦略が不可欠になるという。2019年には世界のモバイル/固定ネットワークのデバイス/接続の41%がIPv6対応になるとしており、2014年の22%から増加するとの見通しだ。

 日本では、この割合は少し低く32%だが、それでもモバイルデバイスで2億1200万台(2014年は7500万台)、固定通信デバイスで2億3100万台(同6200万台)がIPv6対応になる。

(永沢 茂)