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Synologyが都内でNAS発表イベント開催、新OS「DSM 6.0」ベータ版を公開

 台湾を本拠とするNASメーカー「Synology」は7日、都内でイベントを開催した。同社製NAS向けオペレーティングシステムの最新バージョン「DSM 6.0」のベータ版や、新製品に関する発表が行われた。

「Synology 2016」登壇者の皆さん

NAS総販売台数320万台、Synologyってどんな会社?

 Synologyは、ソフトウェアソリューション会社として台湾・台北で2000年に創業。その後、ソフトウェアとハードウェアを統合的に提供したいとの狙いから2004年に自社ブランドでのNAS製造・販売を開始した。現在は、法人向けのラックマウント型高性能モデルを筆頭に、コンシューマー向けの低価格モデルまで幅広くラインナップ。加えて、監視用IPカメラの管理システム、それらに関連した録画用NASも手がけている。なお、IPカメラそのものは製造していない。

 Synologyでは、NAS関連の発表イベントを世界各地で実施してきたが、東京での開催は7日の「Synology 2016」が初。平日の夜18時30分から秋葉原で開催されるということもあって、販売店関係者のほか、一般・法人ユーザーも集まった。

SynologyでSales Directorを務めるMike Chen氏

 SynologyでSales Directorを務めるMike Chen氏は登壇後、ユーザーをはじめ、国内代理店である株式会社アスクの関係者らに謝意を表明。創業15年の若い企業ながら、従業員450人以上、米・英・ドイツ・フランス・中国に海外拠点を構えるまでに成長できたと述べた。

 Chen氏によれば、Synology製NASの総販売台数は320万台超。特に欧州での販売実績が好調で、2015年上半期のEU市場シェアは32%で1位だった。また、製品面では「DS215j」の人気が高く、日本以外にも英国・フランス・ドイツ各国のAmazonでベストセラーになったという。

 Chen氏は「Synologyは世界最高品質のものづくりを目指すのはもちろんだが、何より真摯(しんし)に商品開発に取り組んでいく。ぜひ私ども、そして販売関係者の皆さまへの信頼をちょうだいできれば」とあいさつした。

海外展開の状況
これまでに320万台超のNASを販売
EU市場の2015年上半期シェア。Synologyがトップを獲得した
イベントでは、販売代理店である株式会社アスクの代表取締役 武藤和彦氏も登壇。「ユーザー、販売店関係者、メディア関係者が一堂に集まる機会はなかなかない。どうか、懇親会のような感覚で楽しんでほしい」とあいさつした

新OS「DSM 6.0」のベータ版が公開、64ビット/Btrfsなど新機能が続々

アスクの児島雅之氏

 製品の技術的な解説については、アスクのエンジニアである児島雅之氏が行った。SynologyのNASには「DSM(DiskStation Manager)」という独自のOSが採用されており、これをアップグレードすることで機能を向上させている。発売済みの製品にも適用できるケースが大半のため、PCやiOS端末のように、最新機能が継続的に使えるのもSynology製NASの大きな魅力だ。

 現在のDSMの最新バージョンは「5.2」だが、後継バージョンとなる「6.0」のベータ版が間もなく公開されることがイベントで発表された。6.0では64ビットアーキテクチャーを全面的にサポート。32ビットアーキテクチャー特有のメモリー4GB制限がなくなるため、ハイエンドNASなどでの大幅なパフォーマンス向上が期待できる。

 また、インテル製クアッドコアCPU採用NAS限定ながら、ファイルフォーマットの「Btrfs」を新規にサポート。Bit Rot対応チェックサム、スナップショットによるデータ保護と復元、クォータ機能などが利用できるようになる。

「DSM 6.0」64ビットアーキテクチャーをサポート
「Btrfs」にも一部のモデルで新規対応

 バックアップ機能も全体的に強化。eSATA接続の外部ハードディスク、Synology製NAS、パブリッククラウドのいずれをバックアップ先と指定する場合でも、マルチバージョンでの保存・管理が可能になる。

「DSM 6.0」64ビットアーキテクチャーをサポート
仮想化機能も充実

 一方、Synology製品を利用する法人ユーザーの立場から、芋焼酎「白霧島」などで知られる酒造メーカー・霧島ホールディングス株式会社の堀之内茂幸氏が登壇した。同社ではディザスタリカバリー(DR)の観点から製品導入を検討していたが、コストなどの課題があった。

 そこで、本番システムを100%完全に代替する環境を常時構築するのではなく、被害を受けたシステムが復旧するまでの間、特に重要な部分のみを暫定的に稼働できるようにすることでストレージ費用を圧縮する方針とした。Synology製品の導入に至った背景としてはコストパフォーマンスに優れている点が大きく、性能についても満足できるものだったという。

霧島ホールディングス株式会社の堀之内茂幸氏
ディザスターリカバリー環境のベンチマーク結果

新モデル「DS216play」「DS716+」も間もなく登場

Synology製NASの命名ルール。数字の下2けたは年号となっており、2016年製品にあたる「x16シリーズ」が今後登場することになる

 DSM 6.0では利用者からのフィードバックをより多く集めるため、ベータテスト期間を従来の2カ月から6カ月へと延長。正式版のリリース時期については明言しなかったが、2016年4月が目安となりそうだ。

 新ファイルフォーマットである「Btrfs」の導入に関係なく、DSM 6.0対応機種全般で利用できるようになる機能の1つに「MailPlus Server」がある。これはNASをメールサーバーとして使うための機能となっており、クライアントはブラウザーでGmail風のインターフェイスを操作しながら、メールの送受信が可能。同様に、ブラウザー操作対応のスプレッドシード(表計算)機能では複数ユーザーによるリアルタイムでの同時編集ができる。

 NASの新モデルについても発表された。「DS216play」「DS716+」はともに4K映像のトランスコード配信に対応。4K品質で撮影した映像を新モデルに保存しておき、スマートフォンで閲覧するといった用途が可能になる。両モデルとも近日中の発売を予定しているという。

「DS216play」が間もなく発売予定
新製品「DS716+」のスペック

 なお、イベント終了後にはChen氏のほか、Product ManagerのNicole Lin氏、Sales ManagerのWillie He氏が加わってのメディアインタビューが行われた。3氏によれば、Synologyはユーザーからのフィードバックを非常に重要視しており、質問に対しては原則1日以内に返答。外部ショッピングサイトでの製品レビューもチェックし、その場でコメントを付ける対応も行っている。

 アスクとの協力による日本市場展開はすでに3年目に入っており、今後も新製品の継続的な投入など、投資を拡大させていくという。

(左から)Mike Chen氏、Nicole Lin氏、Willie He氏

(森田 秀一)