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QNAPが日本法人設立、個人・法人向けNAS製品の国内展開強化へ

 台湾のNASメーカー・QNAP Systems, Inc.は20日、都内で製品発表会を開催した。同社CEOのTeddy Kuo氏らが出席し、同社製NAS向けのOS最新バージョン「QTS 4.2」などの魅力をアピールした。また、10月21日付けで日本法人を設立したことも発表。今後、テクニカルサポートなどを強化していく。

組み込みメーカー傘下で自社工場も───QNAPは品質に自信あり

台湾QNAP Systems, Inc.のCEOであるテディ・クオ(Teddy Kuo)氏

 説明会冒頭では、来日したテディ・クオ(Teddy Kuo)氏が登壇した。QNAPとしてのストレージ・NAS開発事業が15年目を迎え、現在のNAS製品ラインアップは第4世代に位置付けられることなどが紹介された。

 この第4世代NASではインターネットとの機能融合を一層進めると同時に、サードパーティによるアプリ開発を可能とするなど、オープン化にも道を開いている。クオ氏は「ソフトウェア開発の可能性はまさに無限大だ」とアピールした。

 また、ハードウェア面についても自信を見せる。QNAPは台湾の組み込み(Embedded)メーカー「IEI」のグループ企業であり、自社工場も構える。この規模を生かし、品質をフルコントロールする体制を構築済みだとした。クオ氏は「ソフトウェアとハードウェアのコンビネーションでお客さまを今後もサポートしていく」と述べている。

QNAPは、組み込み製品を主力とする台湾・IEIのグループ企業
QNAP Systems, Inc.の企業概要

QNAP日本法人が設立、中小企業向け製品市場でトップシェア獲得目指す

QNAP株式会社代表のジョージ・チェン(Geroge Chen)氏は日本語でプレゼンを行った

 10月21日付けで設立された日本法人「QNAP株式会社」については、同社代表のジョージ・チェン(Geroge Chen)氏から概要が解説された。資本金は2000万円で、従業員数は5名。現在、QNAP製品はテックウインド株式会社、株式会社フォースメディアなどの代理店を通じて国内流通しているが、この営業サポート体制を強化する。顧客向けにはセミナー開催を積極化するほか、テクニカルサポート体制の拡大も図っていく。

 チェン氏からはQNAP製品の販売実績についても発表された。これまでの世界累計出荷台数は約600万台。その地域別構成比は北米30%、欧州30%、アジア25%、その他10%、日本5%で、国際展開を確かなものにしているという。

 直近の4年間については売上も着実に上昇。2015年には全世界で240億円、うち日本で12億円の販売を見込む。

 チェン氏は「展示会やイベントを通じてユーザーの皆さまと触れあう機会を増やし、製品に関する声もドンドン聞いていく。システムインテグレーター向けのセミナーなども開いていきたい」とコメント。日本市場向けのマーケティングを本格化させ、特にSMB(中小企業向け)市場についてはトップシェアの獲得を目指すとしている。

QNAP株式会社の活動目標。営業強化のほか、ユーザーサポートの拡充も挙げられている
これまでのNAS出荷累計台数は600万台を突破
直近4年の売上実績
こちらは販売台数の実績

最新OS「QTS 4.2」のセールスポイントは?

QNAPのデビッド・ツァオ氏

 説明会後半では、製品の具体的な特徴や機能が解説された。QNAPのデビッド・ツァオ氏はQNAP製NASのOSにあたる「QTS」の最新バージョン「4.2」(すでにリリース済み)についての詳細な説明が行われた。

 QTS 4.2で強化された機能は多数あるが、中でもスナップショット機能はユーザーからの要望が多かったという。ボリュームおよびLUN単位でのスナップショット取得が可能になったほか、スナップショットのクローン作成にも対応。さらに,スナップショットを別サーバーで管理するための「Vault」機能などが追加された。

 このほかにも、データ保護機能は全体的に強化。バージョニング対応のバックアップなども利用できる。変わったところでは、GmailのデータをNASへバックアップする機能があり、一度バックアップしたデータをさらにGmailへリストアすることも可能という。

 パフォーマンス面では、SSDによるキャッシュ機能がファイル書き込み時にも有効化されるようになった。また「Qsirch」はx86系CPUかつ2GB以上のメモリーを搭載するNAS限定の機能となるが、ファイルを全文検索できる。

「QTS 4.2」ではスナップショット機能が充実
競合製品との比較
バージョニング対応のバックアップ機能
GmailのデータをQNAP製NASにバックアップする機能も
全文検索システム「Qsirch」の概要。一部のハイパフォーマンスNASで利用可能
このほか、仮想化機能も強化している

コンシューマー向けから企業向けまで幅広くラインアップ

 説明会で取り上げられた3製品のうち、コンシューマー利用を最も意識したモデルが「TAS-168/268」。QTS 4.2で動作するNASとしての基本を抑えつつ、さらにHDMIによる映像出力に対応。家庭用テレビと接続してAndroidベースのメディアプレーヤー的に利用できる。Google Playからアプリのダウンロードも可能。

 Androidの操作のためには、USB接続のキーボードやマウスが必要。また、4K(H.265)映像を出力するためのハードウェアデコーダーを内蔵している点も特徴という。

HDMI出力を使ってAndroid端末的にも使える「TAS-168/268」
NASなのにHDMIを搭載するのが最大の特徴

 「TVS-871T」は、インターフェースとしてThunderbolt 2を採用。転送速度(理論値)は20Gbpsで、ギガビットイーサネットの20倍にあたる。Thunderbolt 2採用NASはTVS-871Tが世界初という。このほか、10GB対応LANポートも2系統備える。

 実環境におけるベンチマークでも、Thunderbolt 2経由でのコピーは秒間900MB前後の速度を確認。QNAPでは中小の映像編集スタジオにおける4Kリニア編集などの用途をアピールしていく。なお、TVS-871Tの筐体価格(ハードディスクを除く)は50万円前後。

「TVS-871T」
端子類は非常に豪華。Thunderbolt 2が2ポート(写真上部)のほか、全部で6系統の有線LANのうち10GB対応ポートも2つある

 ラックマウント型の製品についても、新たに「TVS-ECx80U-SAS」が発売される。QTS 4.2との連携によるファイル自動階層化機能「Qtier」をサポートするのが大きな特徴。SSDとHDDが混在するNASにおいて、アクセス頻度の高いファイルをSSD上へ自動で再配置することにより、パフォーマンスが大きく改善するという。

ラックマウント型の「TVS-ECx80U-SAS」シリーズ
端子部

(森田 秀一)