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図書室の本をドローンで自動配送、秋田県の小中学校で実験、制御通信を暗号化して乗っ取り防止
(2016/4/12 19:38)
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と株式会社プロドローンは12日、ドローンによる学校間図書配送の自動航行実証実験に成功したと発表した。セキュア通信技術を組み込んだドローンや地上局、図書室端末などで構築した「図書配送システム」の通信をすべて暗号化することで、情報漏えいやドローンの乗っ取りを防いでいるのが特徴。
実験は、国家戦略特別区域(地方創生・近未来特区)である秋田県仙北市で行われた。市内の西明寺中学校から図書配送システム経由で西明寺小学校へ図書配送リクエストを送信。これを受信した西明寺小学校では、約1kgの図書をドローンへ積載し、ドローン制御地上局に対して配送先の情報を送信。その後、西明寺中学校までの約1.2kmのルートをドローンが高度約50mで自動航行した。なお、着陸時の制御はオペレーターが行っている。
NICTらによれば、ドローンと地上局との遠隔制御に使われる無線通信は傍受や干渉、妨害の影響を受けやすく、また、現状では標準的な暗号化すら行われていないケースが多いため、ドローンの制御通信における情報セキュリティ対策が不十分としている。
今回の実験では、ドローンの離着陸時における地上局との制御通信について、2.4GHzの電波信号をパケットごとに異なる真正乱数を用いて暗号化する「ワンタイムパッド暗号」を適用した。真性乱数と制御信号パケットの単なる足し算で暗号化を行う仕組みのため、複雑な関数や膨大な計算が不要となり、処理遅延のないセキュア制御通信を小型・安価なデバイスで実現できるのだという。
一方、図書室端末やデータセンター間を結ぶ地上の通信は、AES方式の共通鍵暗号に真性乱数を組み合わせることでセキュリティレベルを向上させている。将来、重要個人情報を扱う薬の配送などにおけるドローンの利用を想定した技術実証になっているという。ドローン特区での実証実験により運用技術やノウハウを蓄積し、高機密用途への展開を目指す。