レビュー
経理知識ゼロからの青色申告でも大丈夫!~クラウド会計サービス「freee」を使ってみた
自動処理で会計が楽しくなる、会計がニガテな人のためのサービス
(2013/12/27 06:00)
クラウド会計サービス「freee」とは
ご存じの方も多いとは思いますが、まずは「freee」についてのご紹介を。freee株式会社は元Googleの佐々木社長が仲間と2人で自宅で立ち上げたという、まさに起業物語を絵に描いたようなベンチャー起業です。現在の社員数は16名、年明けには20名に増強されるとのこと。
freeeの目指すところは「バックオフィス業務を自動化して、中小企業がより創造的な仕事に注力できるようにすること」、freeeの特徴は「クラウドであること、自動で会計帳簿が作成できること、経理知識がなくても使えること」(freee株式会社取締役 東後澄人氏)。
パッケージの会計ソフトはインストールしたPCでしか使えませんが、freeeはクラウドサービスのため、Webブラウザーが使える端末と回線があればどこでも使えます。また、会計データをローカルドライブに保存する場合はバックアップが必須となりますが、そうした手間も不要になります。
自動で会計帳簿が作成できるというのは、銀行口座やクレジットカード、モバイルSuica、ユビレジのPOSデータなど、いろいろな明細の自動取り込みが可能という、freee独自の機能によります。データ取り込みだけでなく、freeeが仕訳まである程度自動で行うため、手入力の手間が省け、入力ミスも防げてしまうという仕組み。
しかも、freeeを使うのに経理の知識は不要という。ほんとか! ということで、社内の出金伝票や支払申請書くらいしか起票したことがなく、経理業務は経験ゼロの会社員であるわたしが実際に使用してみました。
実際に使ってみる~その前に
さて、freeeを使う前段階として、ネットバンキングを利用していない方はまずネットバンキングの利用申し込みを済ませておくことをおすすめします。freeeでは手入力ももちろんできますが、できるかぎり自動化して人間がやらないで済むことはコンピュータにやってもらってラクしよう、というのがfreeeの基本コンセプト。口座の取引情報など自動取り込み機能を活用することを前提としてサービスが設計されているので、使わない手はありません。ネットバンキングの利用申し込みや、クレジットカードのWebサービス利用登録などは済ませておくことをお勧めします。
電車の移動も、JR東日本のモバイルSuicaやJR西日本のSMART ICOCAを使っておけば、履歴をfreeeに取り込むことができます。店舗では、iPadを使うPOSレジアプリ「ユビレジ」を利用すれば、売上げデータをfreeeに取り込めますので、売上を手入力する必要がなくなります。手入力は面倒なだけでなく、入力ミスがつきもの。freeeの機能を最大限活用したいところです。
freeeは、無料登録をすればすぐに使い始められます。プランは無料プラン、月980円の個人事業主プラン、月1980円の法人プランの3つ。無料プランはデータの保存期間が3カ月という制限があるだけで、全機能が利用できます。
今回は、青色申告をする方を想定してfreeeを使ってみましたが、ここですべての機能はご紹介できないので、特徴や機能を一覧できる、freeeの青色申告者向けのページを合わせて見ていただくことをお勧めします。
まずは口座登録
ユーザー登録をすると、「続けて銀行の明細を取得」「手動で取引の登録」のメニュー画面が表示されます。まずはここで口座の登録をしてみます。
銀行の登録画面で、銀行名を入力すると、その銀行に合ったオンラインバンキングのログイン情報入力欄が表示されます。必要項目を入力して、「明細の同期をする」をクリックすると、同期がスタートします。
取り込んだ明細を会計データとして登録する
同期が終わると、同期した銀行の明細一覧が表示されるので、さっそく会計データとして登録します。勘定科目の欄を選択するとプルダウンメニューが表示され、項目にマウスオーバーすると、さらに細分化した項目が右に表示されます。当てはまるものを選ぶだけ。
プルダウンメニューの項目は、「物品の購入等 消耗品・新聞・書籍・リースなど」といった具合にわかりやすい説明もついていて、たしかに知識がなくてもこれなら選べます。
勘定科目の隣の「税区分」というのがよくわからなかったのですが、検索してみると、消費税がかかっている課税取引と非課税・不課税・免税を区別する分類のようです。でも、これは気にしなくてもOK。勘定科目の項目をいくつか変更してみたら、勘定科目に合った税区分が自動で選択されるので、自分で選ぶ必要はないことがわかりました。これはラク!
適用タグには品目と取引先をカンマ区切りで書きます。「複合機リース料」と入力するとき、「ふ」を入れれば過去に入力した「ふ」で始まる品目→「ふ」以外の品目→取引先の順で表示されます。便利便利。過去に登録されていない適用タグは新規登録して、メニューに追加され、メニューから選択して入力します。
「複合機リース料」は過去に登録されていなかったため、新規適用タグの編集ウィンドウが表示されました。次々にアシストメニューが表示されるので、予備知識ゼロでも使っていくだけで覚えられそうですな。毎月月末月初は伝票処理が鬱なわたしですが、これはなんだかだんだん面白くなってきたかも。
ソフトを使っていて、「おおこんな機能が!」とか「これ便利すぎでしょ!」とか感動したりして、使うのが楽しい時ってありますよね。ICT技術って本当に素晴らしいと思える瞬間です。ちょうどそんな感じで、使っていて、他にどんな機能があるのかな、どんな仕掛けで驚かせてくれるのかなという楽しさがあります。
さて、新規適用タグ詳細編集画面では、「複合機リース料」(←ここはさっき入力したので自動で入ってます)のタグの種類を、メモタグ・取引先・品目から選びます。ここでは品目を選択。ショートカットキーは、頻繁に入力する項目なら設定しておくと良いかもしれません。
カンタン登録が終わったら、「登録」を押します。登録した項目はこの画面から消えます。この“残件が減って、どんどん片付いていく”のが目に見えるのがなにげに気持ちいいですね。
明細を自動で登録する
次行きましょう。東京電力と東京ガスの明細が表示されています。freeeではこうしたよくある支払い、水道光熱費や通信事業者の引き落とし分などは、最初からfreee側で推測して仕訳してくれます。
推測エンジンの学習機能で、新規登録した取引先のデータも、次回からは自動で推測して仕訳入力してくれるので、確認だけで登録できるようになります。使い続けるとどんどん便利になる仕組みですね。
さて、電気代やガス代は、勘定科目も適用タグも変わらない経費なので、ここで自動化してしまいます。
基本的に取引明細はひとつずつ確認して登録していくのですが、自動化するとこの確認作業をパスして自動登録が行われます。毎月同じものはいちいち確認しないで登録したいという人は、どんどん自動化してしまうと良さそうです。
クレジットカードの明細も同様に確認します。freeeが推測で各項目をあらかじめ埋めてくれているので、確認して登録するだけです。日経新聞の購読料や携帯電話料金は、自動化してしまえば、次回から確認も不要になります。モバイルSuicaも、口座登録メニューから登録しておけば、取引明細が取り込めます。事務用品など、適用タグを入れて登録を進めます。
こんなふうに自動化できる分は自動化設定をしつつ、登録をしていきます。作業中のアシスト機能はプルダウンメニューやバルーンで表示され、画面遷移がないのでストレスなく作業を進めることができました。
また、ユーザー登録→銀行口座登録→自動取り込みした明細の確認までは、ウィザードのように自然に誘導されるので、ここまででマニュアルやヘルプのたぐいを見る必要はほぼないと思います。
freeeで青色申告する人におススメの本
freeeを使うことを前提とした青色申告者向けの書籍で「世界一ラクにできる確定申告」という本が技術評論社から出ていますが、その本の中には「勘定科目は覚えるな」という、まさに“目から鱗”な見出しがあります。
勘定科目は法律で決まっているわけではないので、自分がわかるように決めれば良いとのこと。freeeでは操作に迷うことはほぼなかったのですが、実際にやってみると「適用タグはどう入れよう?」といったところの方が時間がかかっていました。でも、勘定科目が法律で決まっていないなら、適用はさらに自由でいいハズ。なので、「ティッシュは消耗品、適用タグはティッシュ」など、自分が覚えやすい“俺ルール”を決めて入力していけばOKのようです。かなり気がラクになりますよね。
ちなみに、青色申告に慣れていなくて、freeeでやってみようかという方は、この「世界一ラクにできる確定申告」の本を一読することをお勧めします。freeeそのものの操作は、メールサポートや、平日であればチャットによるサポートも受けられますし、使い方はいじっていればだいたいわかりますので参考書のたぐいはさほど必要ではないと思いますが、freeeをうまく活用するためのノウハウだけでなく、個人事業主ではどこまでを経費にできるかといった、経理実務面での実用的ノウハウも学ぶことができます。
現金支出の登録も簡単~スマホでレシート撮影、手入力どちらでもお好みで
現金支出の登録も、もちろん手入力も可能ですが、せっかくfreeeを使うならできるだけ自動化。というわけで、まずは「ReceReco(レシレコ)」を同期させてみました。ReceRecoは、スマホのカメラでレシートを撮ると自動データ化してくれる無料の家計簿アプリです。
ReceRecoでレシートをデータ登録したら、freeeでReceRecoのデータが取り込めるように設定します。freeeトップ画面左側の「口座を登録」をクリック。下の方にある「ReceReco」を選んでクリック。ReceRecoアカウントにfreeeがアクセスするのを許可するかを尋ねるログイン画面が表示されるので、ReceRecoのIDとパスワードを入力してログイン。次画面で「許可する」を押すと、ReceRecoデータのインポートができるようになります。
ここでReceRepoのタグマッチングを設定しておきます。支払い方法は「現金」、勘定科目は、現金で購入するものはだいたい消耗品でよかろうと思ったので、「消耗品費」としました。
タグマッチングを設定してから「いますぐ同期」で同期し、「インポートした取引」をクリックして取引データを確認。無事ReceRecoに登録した2件が表示されました。この画面でまとめて登録もできますが、1行ずつクリックして適用タグを入力して登録することもできます。登録が済んだら、画面丈夫の青いメニューバーで「取引」→「取引の一覧」を開いてみると、ReceRecoからインポートして登録したデータが表示されているのが確認できます。
freeeでの手入力もやってみました。「取引」→「取引の登録」から行います。年始のご挨拶に行くときの手土産を購入したとしましょう。例によってプルダウンメニューを頼りに勘定科目を入力。「営業関係の支払い」→「交際費」というのが当てはまりそうです。すでに登録されている適用タグに「贈答品」があるので選択。適用タグの取引先は「〇×百貨店」を新規登録して選択。金額「2100円」を入れて、最後に上の日付を入力して「登録」を押します。これで手入力完了です。
勘定科目がわかっていれば、プルダウンメニューを頼らずにテキスト入力できるので、少し慣れれば入力はかなりサクサク進められると思います。
入力したデータはレポート出力で「見える化」
データをさまざまな形でレポート出力できることも、freeeの特徴のひとつ。収入レポート、支出レポート、売掛レポート、買掛レポート、現預金レポートが出力できます。
財務表は、月次推移(損益計算と貸借対照表)、試算表(損益計算と貸借対照表)、仕訳帳、総勘定元帳の6種のほか、期間や勘定科目、品目、取引先、メモタグなどで自由に集計できる「集計表」が用意されています。
経理担当者がいない会社などでは通常、税理士に作成してもらう貸借対照表も自動生成できます。レポートも財務表も、プルダウンメニューから選ぶだけで表示されます。
例として、収入レポートを見てみます。2003年11月までの6カ月を指定すると、取引先別と品目別の推移がグラフと表で一覧できます。取引先別のグラフ表示を見ると、11月に大きく伸びているのは新規取引先である「Kデザインオフィス」の売上が大きいことがひと目でわかります。品目別推移でも、Kデザインオフィスへのデザイン素材の売上100万円が売上総額の約3分の1を占めていることがすぐにわかります。
売掛金も「売掛レポート」をプルダウンメニューから選ぶだけでチェックできるのも便利。細かい売掛金が多い仕事では、売掛のチェックもひと仕事ですが、プルダウンメニューを選ぶだけなのでこまめにチェックでき、決算の時にはじめて未収金が複数件あることに気づく、といったことも防げそうです。
freeeでは会計だけではなく、現状把握と分析のための“見える化”ができるのは、経営者にとっては大きなメリットでしょう。
手作業で集計していたら、半年間では、1年間では、特定品目だけでみると――など条件を変えて集計するのは大変な作業になりますが、freeeを使えば、期間設定や品目での絞り込みをやり直すだけで自動で表示できてしまいます。
簡単に切り口を変えてデータを見ることができるので、売上や経費などをいろいろな角度からチェックすることができ、新しい発見もできそうです。手作業では、帳票を作ったりシートに入力するまでで精一杯で、どの勘定科目の経費が大きいのか、年間クレジットカードをどのくらい使っているのかなどをじっくり見直す余裕はあまりないのではないかと思います。
パラメータを変えてみて、いろいろグラフが変わるのを眺めるのはなかなか楽しいです。大企業などで導入している、高価な経営者向けの意思決定支援システムのような活用方法もできるサービスが、月980円や月1980円で使えるのはかなりお得感があるなあと思いました。
freeeの佐々木社長によれば、来年には勤怠データを取り込める給与計算機能も装備する予定とのことで、パッケージでもクラウドサービスでも会計と給与計算は分かれていることがほとんどで、それぞれにソフト代や利用料が別に必要なので、ひとつのサービスで両方できるようになったら、さらにお得感が大きくなりそうです。
青色決算書の出力
freeeではボタンひとつで青色決算書まで作成することができます。法人プランなら、会社法に準拠した決算書を作成できます。また11月から、白色決算書も自動作成可能になっています。2014年1月から白色申告でも記帳義務化がスタートするので、白色申告の人も新年からfreeeを試してみるといいかもしれません。なにしろ無料で全機能が3カ月間使えるので、気軽にお試しできます。
青色申告書を作成するには、メニューバーから「決算」→「決算書の作成」を選び、決算書の作成画面で「青色決算書をPDF出力」のボタンを押せばPDFファイルが出力されます。PDFファイルは、もちろんローカルに保存ができます。決算書の作成画面では、各項目の確認・編集も可能です。
また、決算メニューの「消費税額計算表」を選択すると、消費税申告に必要なデータを集計して一覧表にしてくれます。
e-TAXにも近日対応予定
青色申告を行うには、申告書の作成を行う必要があります。国税庁の「確定申告書作成コーナー」では、e-TAXで申告するか書面で提出するかを選べます。
書面で提出する場合も、「確定申告書作成コーナー」を利用すれば、役所に行かずにオンラインで申告書の作成までができます。ただし、2013年(平成25年度)の申告書作成コーナーはまだ公開されていません。1月上旬公開予定になっています。
青色申告がはじめてで自信がないときは、確定申告時期になると税務署や市役所・区役所で無料相談をしているので、freeeで作成した青色決算書を持って相談に行かれることをおすすめします。また、税務署に行って書面で申告すればそこで質問したりもできるので、最初は書面での提出を選んだ方がいいかもしれません。
青色申告がはじめてでなければ、e-TAXでの申告なら、税務署で並ぶ必要もないし、確定申告時期であれば夜中でも申告が行えますので、e-TAXでの申告の方が便利です。e-TAXでは、保険料の控除証明書など、添付書類の提出が免除されるなどのメリットもあります。ただし利用するには、電子証明書とICカードリーダーが必要になります。
なお、freeeは、電子申告には12月現在はまだ対応していませんが、「近日中に対応予定」とのことです。e-TAXに対応後は、freeeで作成したデータを申告書を提出するe-TAXソフト(Web版もあります)に読み込ませることで、申告書の提出が行えるようになります。
まとめ:これから本気出す派、会計処理が苦手な人にはとくにおススメ!
一人で何でもやらなくてはならない個人事業主や、経理専門のスタッフがいない中小企業などでは、帳票作成の負担感は大きいと思います。freeeは使えば使うほど便利で使いやすくなるシステムなので、最初のうちは新規登録する適用タグなどもそれなりにあると思いますが、一度入力すれば、次からはfreeeが推測して自動処理できると思えば、気持ち的にもかなり前向きに取り組めるんじゃないかな、と実際使ってみて思いました。使うほどお利口になっていくので、ちょっとゲーム的な楽しさがあります。
パソコンやソフトウェアが好きな人なら、使うこと自体が楽しめる会計サービスだと思います。無料で始められますし、いまからなら3月15日の確定申告の締切まで無料で使えてしまう計算になります。「年末年始の休みから本気出す」というような会計処理の苦手な方こそ、使ってみることをおすすめします。
freeeの中の人に聞く――freee株式会社 取締役 東後澄人氏
freeeを作る上で一番こだわったのは使いやすさです。freeeが目指すのは会計や簿記の専門家ではない、経営者のための会計ソフトであることです。そのために使いやすさにはこだわりました。社名、サービス名のfreeeも無料のフリーというより、会計のための作業から解放されてフリーになってもらう、クリエイティブな作業に集中してもらいたいという願いを込めてつけています。
一番の特長は、データの自動取り込み機能ですね。これまでの会計ソフトでは、自分の手で入力しなければならないために、銀行口座の残金と、帳簿の残金が合わないといったことが頻繁に起こっていました。データを取り込んで利用することで、口座の額と帳簿の額が異なるといったことがなくなります。口座やクレジットカードのほか、ユビレジ、ReceRepo、モバイルSuica、SMART ICOCA、Amazon.co.jpの購入履歴、ECデータについてはイプシロンに対応しています。今後もできる限り、自動化を進めていきます。
サービスをローンチする前に、試作版を使っていただいところ、「これまで好きではなかった経理が楽しくなった」、「感動した」といった感想をいただきました。それまで使っていた会計ソフトとは、全く労力が違う! と思われた方が多かったようです。
本来は毎日少しずつ作業をしてもらうのをオススメしたいところですが、忙しくて帳票作成に手が回らない、これから短期勝負という方にとっても、データの自動取り込み機能はメリットがあるのではないかと思います。無料プランはデータ保存が3カ月間という制限があるだけですべての機能が使えますし、ぜひ無料プランで自動取り込みを体験してみていただきたいですね。(談)