レビュー

経理・簿記の知識はゼロ。人生初の青色申告に「freee」で挑戦!

(1)準備から明細の取り込みまで~さっそくチャットサポートへ救いを求める

 2013年3月に突如として登場したクラウド型の会計サービス「freee」。ブラウザーだけで利用できる手軽さに加えて「経理/簿記の知識はいりません」という強烈なキャッチコピーに影響され、青色申告も初めてなら簿記の知識もまるで持たない筆者が、freeeを使って実際に青色申告に挑戦する模様を赤裸々にお届けする。

「専門知識不要!」に惹かれてfreeeを利用することに

 freeeとは、グーグル卒業生の佐々木大輔氏が立ち上げた、クラウド型の会計サービス。個人事業主には必要不可欠な確定申告を行なうための帳簿や書類作成を、専用ソフトを必要とせずWebブラウザーのみで利用できるという新しい形のサービスだ。

 クラウド型でWebブラウザーがあれば利用できるため、利用端末はWindows、Macどちらでも対応するのはもちろん、iPadやAndroidタブレットからも利用できる。アプリケーションをインストールする必要がないため、複数の端末からも利用可能。銀行口座やクレジットカードの明細を取り込み、自動で会計帳簿データに変換してくれるなど、非常に便利な機能を備えている。

クラウド会計ソフト「freee」トップページ

 こうした機能ももちろんだが、筆者が最も興味を持ったのはWebサイトの「経理/簿記の知識はいりません。」というキャッチコピーだ。筆者の場合、フリーランスはまだ2年目を迎えたばかりであり、後述は詳細するが1年目は白色申告を選択したため、青色申告は今回が初めて。専用ソフトを購入せずクラウドで使えるというメリットはもちろんだが、「青色申告のために今年はまず簿記を勉強するか……」と思っていた筆者にとって、専門知識も不要という言葉は心に強く響いた。

 とはいうものの、freeeはまだ新しいサービスのため周りで使っている知人も少なく、困ったときに相談する相手も見当たらない。フリーランス仲間が多く使っている会計ソフトを買うのが一番安心ではないか……、と保守的な方向に進んでいた筆者の前に、今回のレビュー依頼が舞い込んだ。なにぶん青色申告が初めてのため専門的な評価はできないものの、そうした青色申告が未経験の人でもどこまでfreeeを使いこなせるかがテーマ、というお話を聞いて、この機会にfreeeに挑戦することにしたというのが今回の経緯だ。

 そのため、今回はあえて経理や帳簿の知識をつけずに、いきなりfreeeにユーザー登録して青色申告に挑戦することにした。なお、筆者はこれまでに会計ソフトを利用したことがないため、freeeと一般の会計ソフトとの機能比較はしていない。あくまで初心者がいきなりfreeeを使い始めたらどうなのかという視点からレポートするので、その点あらかじめご理解いただきたい。

確定申告前に必要な資料や機材を準備

 freeeを始める前に、そもそも確定申告に必要な準備も確認しておこう。freeeというサービス以前に確定申告を行なうために必要なもの、そしてe-Taxを行なう前に必要なものを筆者の理解している範囲内でまとめておく。入手に時間がかかるものもあるので、初めて確定申告に挑戦する人や初めてe-TAXを利用しようという人は早めに確認しておいて欲しい。

 確定申告に必要なのは、端的に言えば自身の収入を示す証拠と支出を示す証拠だ。具体的には銀行やクレジットカードの明細、レシートや領収書、支払調書などが挙げられる。

 銀行やクレジットカードの明細は、紙の明細のほかに最近ではWeb明細も主流になっており、freeeを活用するためにもできればWeb明細が望ましい。ただし、Web明細はサービスによって一定の期間しか保持していないサービスもある。Web明細に無い期間についても銀行やクレジットカード会社に問い合わせると紙で再発行してくれるが、その場合は1~2週間程度の期間が必要になる。確定申告締め切り直前では間に合わないので、2月上旬くらいまでに確認しておきたいところだ。

 続けてe-Taxの場合は、住民基本台帳カード(住基カード)と、住基カードをパソコンで読み解くためのICカードリーダーが必要になる。住基カードは写真あり・写真なしから選択でき、申告にはどちらを選んでも問題なく利用できる。さらに、e-TAXを利用するには住基カードで電子証明書を取得する必要がある。住民基本台帳カード取得時に電子証明書の発行を申請すれば、カードの中に電子証明書が格納されるので、合わせて手続きを済ませておくと良いだろう。

 ICカードリーダーは、「e-Tax」対応という製品を選べば問題ないだろう。筆者は今回NTTコミュニケーションズの「SCR3310-NTTCom」というリーダーを使うことにしている。

NTTコミュニケーションズのICカードリーダー「SCR3310-NTTCom」
http://www.jpki.go.jp/
公的個人認証サービスポータルサイト。電子証明書の取得方法や電子証明書で利用できるオンライン手続きなどがまとめられているので一読しておこう

いよいよfreeeを利用開始。まずは銀行口座の明細を取り込む

 入力に必要な情報があることを確認したら、いよいよfreeeの利用開始だ。freeeは無料プラン含めて3種類の料金プランが用意されているが、無料プランは法人向けプランを含むほぼすべての機能が、3カ月まで自由に利用できる。確定申告の締め切りは3月15日のため、今から利用するならまずは無料プランで登録しておき、来年以降も使い続けたい、と思えるようであれば有料プランに切り替えるといいだろう。

 ユーザー登録はメールアドレスとパスワードのみと非常にシンプルに作成できる。その後は事業者登録として、名前のほかに法人・個人事業主の区分、利用を開始する事業年度の決算日を設定する。決算日というと難しそうに思えるが、「個人事業主であれば必ず1月1日になる」という備考もあるため入力は迷わずに済んだ。

freeeのユーザー登録。トップページからユーザー登録が行なえる
事業者登録は名前と事業年度を登録

 事業者登録後はプランを選択する。今回はレビューのためにAmazon.co.jpで販売している個人事業主向けパッケージを購入したが、3カ月無料プランもデータの保持期間以外は機能が変わらないため、まずは無料プランで試してみるといいだろう。

 プラン設定が終わると、いよいよ具体的な取引の登録作業だ。取引とは業務に必要な金銭のやり取りで、要はビジネス上の収入と支出のようなものだ。まずは銀行やクレジットカードのを登録して自動で明細を取得、取引を作成するか、自分で取引を作成するかを選択する。

有料プランと無料プラン、いずれかを選択
明細を自動で取得するか、自分で取引を作成するかを選択

 自動取得の場合、Web明細に対応している銀行やクレジットカードであれば、Web明細から自動でデータを取得し、freeeに登録してくれるという、freeeの要とも言える機能だ。すべての銀行やクレジットカード会社で使えるわけではないが、面倒な入力作業を自動で省けるだけでなく、中編で紹介する明細の自動登録を活用するためにも必要となる。

 最初に筆者が主に利用している三菱東京UFJ銀行の「三菱東京UFJダイレクト」のアカウントを設定してみたところ、同期OKのマークの確認ののち、自動でWebの明細が取り込まれた。ただし、残念なことに筆者は過去2年間の明細を保持する「Eco通帳」を申し込んでいなかったため、直近1カ月のデータしか取り込むことができなかった。

三菱東京UFJ銀行の口座を登録
オンラインサービス「三菱東京UFJダイレクト」のアカウントを登録
正しいアカウントを登録と同期が完了する
1カ月分ではあるが無事に明細が取り込まれた

 とはいえ、今後freeeを利用して定期的にデータを取り込んでいけば、銀行のオンラインサービスにおける明細保存期間が1カ月であっても1年間の明細をすべて取り込むことができる。Eco通帳を契約すると紙の通帳が利用できなくなるため利用にも悩むところだが、freeを併用すればEco通帳を申し込まなくても、Webでの明細確認と紙の通帳を両方うまく運用できそうだ。

操作方法がわからず手詰まりに。チャットサポートへ救いを求める

 なお、freeeの初回登録時は、手順を説明するセットアップガイドがホーム画面に表示されるほか、セットアップの進捗度を示すゲージが画面上部にも表示される。このガイドによれば、口座の登録後は取り込んだ明細を取引として登録すればいいのだが、ここでふと手詰まりになってしまった。

 というのも、取り込んだ銀行明細の中にはクレジットカードの引き落としが含まれているのだが、クレジットカードの引き落としは一括で行なわれているため、実際にはもっと細かな明細が存在する。そもそもfreeeではクレジットカードも銀行口座とは別に登録できるはずだ。

口座登録で悩んでしまったが、ページ右下には「サポートデスクへ連絡」というタブがあるのに気づいた

 そんな時に気がついたのが、ずっと画面の右下に出ている「サポートデスクへ連絡」というウィンドウ。これをクリックするとチャットウィンドウが表示され、どうやらサポートデスクと直接チャットで質問できるらしい。残念ながら土日は稼働していないようでメールで問い合わせるよう表示されたので、週が明けるのを待ってチャットで質問を行なってみた。

 最初はどのような対応が来るのか不安だったが、長文にも関わらず送ったメッセージへの返信は数分もしないうちに返ってきた。また、こちらのログイン状態を先方が把握しているため、初期セットアップ中の質問であることもわかった上で返信してくれているため話もわかりやすい。質問の内容もfreeeだけでなく確定申告そのものに関する領域にまで踏み込んでいたにも関わらず、懇切丁寧に対応してもらえた。

チャットサポートで課題が解決。対応も懇切丁寧

 結果としてわかったのは、明細はどれか1つでも取引として登録すれば初期セットアップは完了し、他の口座も登録できるということと、クレジットカードなどの引き落としは、別に登録した口座へ「口座振替・カード引き落とし」で移せばいいということだ。

 そのため、まずはクレジットカードに関係ない明細をいったん取引として登録してセットアップを終了し、その後複数の口座を登録してから改めてクレジットカードを設定することで問題は解決した。

 明細の登録は、通信費なのか飲食費なのかといった勘定項目や税区分、概要などを設定する。勘定項目は入力欄をクリックすると自動でポップアップが表示され、当てはまる項目を選ぶだけでいい。もう1つの必須項目である税区分は最初どうしていいかわからなかったが、勘定項目を選べば最適な区分が自動で切り替わるため、基本的には自分で選ぶ必要はないことがわかった。非常に便利な機能だが、画面を見ただけでは自動で切り替わることが当初わからなかったので、できればここも備考やポップアップなどで自動で切り替わる旨の説明があるとありがたいところだ。

明細の勘定項目はポップアップから選ぶだけ。税区分も自動で切り替わる

 チャットサポートは使ってみるまで心理的ハードルが高かったが、いざ使ってみるとレスポンスも早く、非常に細かいところまで回答してくれる。また、質問が終わった後も「気軽に質問してください」というコメントももらえたので、「こんな初心者な質問をして困らせないか」という無駄な不安も解消された。確定申告がよくわからない人はぜひとも活用したい機能だ。

 ただし、チャットの場合は相手の入力待ちのタイムラグがあるため、質問と返答が入り乱れてしまうと、わかりにくくなる可能性があるので、利用する前にあらかじめ質問文をまとめておくとよさそうだ。

 なお、チャットサービスは現在のところユーザー登録から7日間のみ限定的に提供されている機能で、8日目以降は利用できない。チャットサービスを使うのであれば、ユーザー登録開始直後からチャットを利用できる期間をフル活用しよう。チャット機能は近日中に有料プランのユーザー向けに提供されるとのことで、チャット機能に魅力を感じるユーザーや、8日目以降にチャットサービスを利用したくなった場合は、無料プランから有料プランに移行するのもいいだろう。

自動で取り込めない明細はCSVで手動登録

 サポートのおかげで無事に複数の口座やクレジットカードも登録が終わり一安心、といきたいところだが現実はそううまくはいかない。前述の通り筆者は口座のWeb明細データが1年分揃っていないため、足りない部分は自分の手動登録がどうしても必要になるからだ。また、Web同期に対応していない銀行口座やクレジットカードを利用している場合も、同様に手動登録が必要になる。

 手動登録はCSVを利用した明細アップロードと、1つ1つの明細をfreeeで入力していく方法の2通りがある。幸い、同期に唯一対応していないDCMXはCSVによる明細ダウンロードが可能だったため、このCSVを使ってアップロードに挑戦してみた。

 明細のアップロードは画面上部「口座」の「口座の一覧」を選び、登録済みの口座から「明細アップロード」ボタンを選択。次にアップロードするファイルを指定し、「新しい形式のCSVをインポートする」にチェックを入れて「次へ」を選択するとCSVが取り込まれる。

「口座の一覧」から「明細アップロード」を選択
該当のCSVファイルを選択してアップロード

 次は取り込んだCSVとfreeeの入力形式をマッチングする作業だ。まずは取り込んだデータを目視で確認し、日付の表示が年月日まとめた表記か、年と月と日でそれぞれ別の表記になっているかを選んで「次へ」を選択。

 今度はアップロードされたCSVのうち「取引日」「出金額・明細額」「利用内容・摘要」がどの列に該当するかを指定する。クレジットカード会社や銀行によってCSVのフォーマットが異なっていても、この3つを手動で割り当てさえすれば取り込めるわけで、なかなか汎用性の高いやり方だ。項目3つを割り当てると「OK」が選択可能になり、実際に明細へのアップロードが可能になる。

年月日を確認して正しい表記を選択する
「取引日」「出金額・明細額」「利用内容・摘要」を正しい列に割り当てる

 また、同じ口座へ明細をアップロードする場合は前回使ったフォーマットをそのまま利用できる。DCMXは明細を月単位でダウンロードできるのだが、2回目の登録は「前回のDCMXへの明細インポートと同じCSV形式でインポートする」を選択するだけでアップロードできる。確かに同じ口座の明細形式であればフォーマットも共通なのだから、2回目以降は前回と同じフォーマットで問題はないはず。こうしたところも、考えてみれば当然ながら配慮が行き届いていると感じた。

 明細を直接freeeへ手動入力する場合は、「口座」メニューの「取得した明細の一覧」から「明細を新規登録」で登録できる。入力欄は非常にシンプルで使いやすいが、前述の通りCSVアップロードなら取引日と金額、概要さえあればどんなフォーマットでも取り込めるため、複数の項目を手動で登録するならExcelなどでCSVを作成したほうが効率がいい。この方法は後で1つか2つ項目を追加する以外はあまり必要なさそうだ。

2回目以降は同じフォーマットを再利用できる
明細の手動入力画面。登録が複数にわたるのであればCSVアップロードのほうが効率的

サポートのおかげで課題を乗り越えつつ本番はこれから

 まだまだ確定申告の道のりは長くゴールは見えないながらも、ひとまずfreeeを使った明細の取り込みはこれで一段落した。口座の複数登録では若干悩んだものの、チャットサポートのおかげで無事に解決。こうしたサポートへの問い合わせは消極的になってしまう性格なのだが、freeeに関しては積極的に活用していこうという気持ちになれた。

 次回は取り込んだ明細に対し、確定申告のメインとも言える売上や経費を登録、1年間の帳簿を完成させるまでをレポートする予定だ。

(次回は2月10日掲載を予定しています。編集部)

甲斐 祐樹