レビュー
経理・簿記の知識はゼロ。人生初の青色申告に「freee」で挑戦!
(2)売上、経費の取引登録~自動マッチングで漏れやミスのない帳簿を作る
(2014/2/10 06:00)
経理・簿記の知識はゼロの筆者が、クラウド型の会計サービス「freee」で青色申告に挑戦する本レビュー。第2回は、第1回で登録した銀行口座やクレジットカードの明細を元にして、いよいよ売上や経費などを実際にfreeeへ登録していく。
◇第1回:準備から明細の取り込みまで~さっそくチャットサポートへ救いを求める
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20140127_632007.html
freee本来の使い方に逆行する「年間の帳簿を後からまとめて登録」
第2回のレビューに入る前に、第1回レビューからここまでfreeeを使ってきて改めて実感したことを先に伝えておきたい。それは筆者が1年間に渡る帳簿を今頃になってまとめてつけようとしていること、そしてfreeeは基本的に毎月こまめに帳簿をつける人向けの仕組みだということだ。
freeeとしては、毎月銀行口座やクレジットカードのデータが更新されるたびに新着のデータとしてユーザーに通知し、ユーザーは新着1つ1つに対して売上や経費の処理をしていく仕組みになっており、操作の流れもそれを前提に作られている。しかし、1年間にわたる膨大なデータをまとめて処理しようとする筆者の場合、せっかくの新着情報も量が多すぎて処理しきれず、該当の明細を検索で探す形で作業を進めることにした。
そのため、今回のレビューではfreeeが推奨する通常の手順というよりも、「1年間のデータをまとめて登録する」ユーザーとしての手順になっている。ただし、freeeを初めて使い始めるときは、年初から始める場合を除いて、最初はある程度たまった分をまとめて処理することになるので、「これから使い始める方向け」とご理解いただければと思う。
また、「経理/簿記の知識はいりません」というfreeeのキャッチコピーに敬意を表し、このレビューもできるだけ経理や簿記の知識がなくてもfreeeを理解して使えるよう努めた。そのため経理や簿記の面からすると正しい用語を使っていないケースもあるが、あえて専門用語を使わずに話を進めているということとして理解いただけると幸いだ。
なお、freeeからは2月6日に新しいサポートサービスが発表された。本レビュー第1回では試験的に提供されていたチャットサービスが標準サービスとして提供が開始されたほか、郵送したレシートを代行入力してくれる「レシート郵送サービス」、freeeでの記帳が完了した後の青色申告を代行してくれる「青色申告代行サービス」といった新サービスが提供開始された。さらに、e-Tax正式対応も発表された。e-Taxは今後のレビューで使う予定だったため、このタイミングで正式対応したのは嬉しい。
このほかfreeeでは、個人事業主の青色申告に必要な「確定申告書B」も、今回の確定申告期間中に対応を予定するという。これからfreeeを使おうという人には非常に魅力的な機能になるだろう。今回のレビューに間に合うようであれば、freeeでの確定申告書Bの作成もfreeeで行いたいと考えている。
◇クラウド会計ソフト「freee」、ラクに青色申告ができるお助けサービス
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20140206_634201.html
登録済みの明細に実際の売上を取引としてマッチング
第1回ではfreeeのユーザー登録を行ない、手持ちの口座やクレジットカードを登録するところまで完了した。筆者の場合、収入はすべて銀行振込で行なわれているので、収入のほぼすべては銀行口座を登録した時点でfreee上に存在することになる。
そこで、次に行なうのが取引の登録だ。銀行口座の明細として取り込んだ売上に対し、どのような仕事でその売上を得たかをマッチングし、「取引」として登録していく。本来であれば、自分の業務の対価を発注元へ請求し、請求額に応じて支払いが行なわれるという流れになるはずだが、筆者の場合は年間の明細をまとめてfreeeへ取り込んでいるため、入金されている売上に対して後から仕事内容を登録するというように、手順が逆転してしまっていることをお断りしておく。
今回はこのレビューを掲載しているImpress Watchの原稿料をサンプルにして登録してみよう。Impress Watchでは掲載媒体別にまとめて原稿料を表示するほか、振込は媒体の合計額をまとめて行なう仕組みになっている。また、源泉徴収の金額も別途表記してくれているので今回のようなケースでは非常にわかりやすい。
該当の明細を探すために「取引」「自動で経理」を表示、「すべての口座・カード」プルダウンから「東京三菱UFJ銀行」を選択し、「概要から検索」に「Impress Watch」と入力して更新をかけると、Impress Watchとの取引の絞り込みが可能になる。銀行明細の取り込みが「Impress Watch」と全角表示になっていても半角英数で検索できるのは地味ながら便利でありがたい。
取引と入金の金額を一致させて取引の登録を完了
「自動で経理」の一覧の中から、勘定項目などが自動で入力されている場合は「登録」をクリック、入力されていない場合は勘定科目を入力して取引を登録する。なお、通常は「カンタン登録」のタブがアクティブになっており、項目を1つしか入力できないが、源泉徴収がある場合は少なくとも項目が2つは発生するため、「詳細登録」のタブを選択しておくといい。
取引先は、すでに登録済みの場合はインクリメンタル表示されるが、初めて登録する場合は取引先名を入力後、「新規追加」から登録しておこう。これら取引先名はタグとして管理されるため、あとで一括表示する際などに便利だ。管理番号は必須項目ではないが、請求書などに管理番号をつけているときはここに入れておくと管理がしやすい。
肝心の売上内容だが、筆者の場合は原稿料と源泉徴収のみを入力するため、勘定科目の欄に原稿料を「売上」「売上高」として入力。税区分に関しては第1回でも触れたとおり、勘定項目に合わせて自動で切り替わるので入力の必要はない。「摘要」は自分が管理したい名前で構わないが、何文字か入力するとお勧めの候補が自動で表示されるのでそこから選ぶのもいいだろう。筆者の場合は「原稿料」でとりあえず設定している。
今回は複数媒体から原稿料収入があるので「新しい行を追加」。さらに源泉徴収を追加するために「預かり金(源泉徴収税・社会保険等)・支払手数料を追加」を選択。源泉徴収の勘定項目は「その他」「事業主貸」、摘要は用意されているタグから「源泉所得税(個人)」を選ぶ。言葉ではわかりにくいので下記の登録内容を参考にして欲しい。
入力が完了し、入力した金額と振り込まれた金額が一致すると「登録」ボタンがアクティブになり、これをクリックすることで「この仕事に対してこの金額が振り込まれた」という取引が完成する。銀行振込の収入は基本的にこれを回数分繰り返せば終了だ。
請求に一致する入金があると自動でマッチング
なお、この取引登録は冒頭でも述べたとおり、1年間の登録を後からまとめて行なう時の流れだ。毎月きちんと売上の内容を登録するのであれば、freeeをもっと便利に使うことができる。参考までに通常であればどういうフローでfreeeを利用するのかも紹介しておこう。
個人事業で受注した業務が完了し、請求書の発行か相手の振込を待つタイミングでfreeeに登録する場合は、ホーム画面の「取引」から「取引を登録」を選択する。基本的な入力は前述の取引登録と変わらないが、ポイントは決済状況を「未決済」にしておくことだ。
その後、請求に対して実際に振込が行なわれると、該当の銀行口座明細が取り込まれた場合に、すでに登録されている未決済の取引と金額のマッチングを行ない、「入出金予定とマッチ」タブがアクティブになる。あとは内容を確認し、「登録」を押せば取引の登録は完了だ。
登録済みの未決済取引に対し、実際に振り込まれた金額が正しくないと「入出金予定とマッチ」はアクティブにならない。そのため振込金額が予定の金額と異なっていた場合も簡単に把握できる。freeeは、毎月きちんと取引を登録しておくほうがより便利に使えることを改めて実感した。
ベータ版ながら請求書機能も搭載。請求書と取引を同時に作成
freeeにはベータ版ながら請求書を発行する機能も搭載されている。freeeで請求書を発行すると、前述の未決済取引も自動でデータ登録されるため、作業を簡略化できて非常に便利だ。
請求書の作成は画面上部ナビゲーションの「取引」「請求書の作成」から行なえる。請求書の内容はふだんから請求書を発行している人であればさほど問題はなく、勘定科目に関しても前述の取引登録と変わらないため詳細は割愛するが、ポイントは設定の「事業所の設定」であらかじめ詳細を登録しておくことだ。
事業所の設定に登録された項目が請求書に自動で表示されるので、住所や振込先口座といったテンプレート情報は事業所設定に登録しておくのが便利だ。また、社印やロゴもデジタルデータがあれば事業所設定に登録しておくと、社印やロゴつきの請求書を発行できる。
請求書作成から取引登録まで自動で行なえるこの機能は非常に便利なのだが、現状では請求書のデザインは非常にシンプルだ。機能としては必要十分なのだが、今後テンプレート機能の拡充を期待したいところだ。
経費も取引として登録。データのない経費は支出のみの取引を作成
売上と振込を取引としてマッチングし終わったら、次はいよいよ経費の登録だ。1年間に渡って貯めてきた領収書やレシートの整理はここではすでに終わっている、という前提で、freeeへの登録作業を進めていく。
クレジットカードや銀行振込などで、すでに明細を取り込んでいる経費の場合は、売上の登録とやることは変わらない。「取引」の「自動で経理」から該当の項目を選び、取引の内容を決めていけばいい。勘定項目はプルダウンから適したものを選べば税区分は自動で登録してくれる。
現金で買い物した場合、当然のことながら口座の明細やクレジットカードのデータは存在しないので、支出の取引のみを作成し、口座は「現金」を選択する。今までと違って明細とマッチングする必要はないが、該当する領収書やレシートが物理的なマッチング資料になるので、しっかり保管しておこう。
(第3回は2月12日に掲載します。編集部)