レビュー

ウチの会社でクラウド会計サービス「freee」を使ってみた

〜今夏には給与計算にも対応を予定、“みんながラクになる”「会社でfreee」

 昨年3月にスタートしたWebベースのクラウド会計サービス「freee」が元気だ。POSレジサービスでは従来からの「ユビレジ」に加え、「Airレジ」とも新たに提携。レジアプリとfreeeを使っての売上高自動計上など“他サービスとも連携してより会計業務をラクに”というコンセプトを着々と推し進めている。

クラウド会計サービス「freee」
http://www.freee.co.jp/

 4月下旬には米シリコンバレーのベンチャーキャピタルDCMなどを引受先とした総額8億円の第三者割当増資を発表して話題となった。登録事業所数も、サービス開始からわずか1年余りの4月に7万を超えたと発表された。

 保守的な業務ソフトの分野でわずか1年でここまで利用者が伸びているのは、裏を返せば、既存のインストール型会計ソフトにそれだけ潜在的な不満があったとも言えるだろう。スマートフォンやタブレットが企業にどんどん入ってきているが、インストール型会計ソフトはインストールしたパソコンでしか使えない、税率変更などに対応するため毎年バージョンアップ費用とイントールの手間が必要、Mac OSに対応したソフトがない――などクラウドと多端末の時代にそぐわない部分が出てきている。

 freeeは青色申告や決算書の作成にかかる人的コストを下げたい個人事業主や中小企業向けのWebベースのクラウド会計サービスで、基本的にWebブラウザーがあれば利用可能で幅広いOSに対応できる。機能向上や不具合修正はクラウド側で行われ、管理の手間もかからない。無料のアカウント登録でほぼすべての機能がすぐに使い始められるのもメリットだ。メールサポートに加えて平日はチャットによるサポートも提供しており、わからないことがすぐ解決できるため、経理知識がないユーザーにとってもハードルが低い。

 本誌では以前に、個人事業主が青色申告までをfreeeで行った体験レポートを掲載している(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20140217_634978.html)が、今回は、個人事業主ではなく企業として使ってみたレポートをお届けする。筆者の会社をサンプルに、ごく小規模な企業でfreeeを使う際のポイントとなる点を紹介してみたい。

小さな会社は経理処理に時間を割けない

 筆者はライターだが、個人事業主ではなく会社に所属している。社員数は社長と役員の筆者を含め計4名で、絵に描いたような小規模事業者だ。小さいとはいえ株式会社なので、会社法に則った決算というものを毎年行う必要があるわけだが、決算に必要な書類作成などは全て税理士に任せっきり。社長も筆者も経理に詳しいわけではない。

 「税理士がいるのなら、freeeのような会計ツールは必要ないのでは?」と思われるかもしれないが、そういうわけでもない。請求書の作成、口座の管理、給与の支払いをはじめ、経費のとりまとめと税理士への提出といった、1カ月に1回程度の経理絡みの処理は、どうしても社内の誰かがやる必要がある。

4人の社員でこぢんまりとやっているオフィス
この決算報告書も税理士に作成をお願いしたものだ

 幸い社員はまだ4名しかいないこともあり、今のところは社長が中心となって、本業の片手間で作業する範囲でなんとか足りている状況だ。本当は会計ツールで数字とにらめっこして売上の傾向をつかみ、将来的な事業戦略を錬るなど、経営分析のような活動もした方がいいのかもしれないが……。

 ともかく、まださほど作業ボリュームは大きくないとはいえ、この事務処理もできるだけゼロに近づけたい。少なくとも社長は1カ月間のうち丸1、2日は経理関係の作業に費やしている。個人事業主も同じだろうけれど、全員が全力で「生産部門」として走り続けないと経営が立ちゆかない我々のような小さな企業は、本業以外の経理の仕事には時間を割きたくない(割けない)ものなのだ。

経費の社内申請・処理の手間を最小限に

 freeeの基本的な機能や使い方については、前述した個人事業主視点のレポート記事を参考にしていただきたいが、まずは弊社で行っている経理関係の作業のうち、最も手間がかかりそうな経費の社内申請と処理を、freeeではどのように楽にできるのか見てみたい。

 freeeは、単純に言えばお金の流れを記録し、決算に必要な書類の準備をするためのツールだ。支払ったお金、受領したお金という取引の内容を適切にカテゴライズ(仕訳)しながら情報登録していくのがメインの操作になる。銀行口座上での取引を手作業で1件ずつ、金額と摘要などを入力して仕訳登録していくこともできるが、通常はfreeeの特長である、銀行口座やクレジットカードの入出金記録の自動取込・自動仕訳機能を利用することになるだろう。

口座から取り込んだ取引内容を確認しながら登録。勘定科目は自動判定されて仕訳される
自動判定された勘定科目に誤りがある場合は指定し直しもOK。簡単な説明もあってどれを選べばいいかわかりやすく、選択した科目に応じて税区分も自動で切り替わる
“自動化”にチェックして登録すれば、以降同じ内容のものは一括で自動処理可能に

 現在は多くの金融機関、クレジットカード会社がインターネット経由で利用履歴を参照できるようになっている。それらのアカウント情報をfreee上で「口座」として登録しておけば、定期的に“同期”して取り込める仕組みだ。freeeでは、2013年末時点で地銀や信用組合なども含め、法人・個人合わせて1600の口座の自動取り込みに対応している。

 万一オンラインサービスを提供していない銀行だったり、過去の記録をネット経由で参照できない場合であっても、所定の書式の取引データがあれば手動でアップロードして取り込むことが可能だ。

 法人口座が対応していない場合には、これを機に、メインバンクを振込手数料などコストが安い銀行に変えることを検討するのもよいかもしれない。freeeでは「世界一ラクにできる銀行比較」サイトを開設しており、freee自動経理に対応する口座を簡単に比較できる。ここで比較してみると、法人口座の場合には、銀行選びだけで年間十万円単位のコストの差が出ることがわかる(なお、比較する上では支障はないが、現時点では銀行比較サイトは消費税8%に対応していない)。

「口座」登録では、都市銀行や地方銀行、各種クレジットカードに対応している
銀行やクレジットカードのオンラインサービスで使用しているアカウントを登録すれば取り込みできるようになる

 口座登録の機能では、銀行やクレジットカードだけでなく、モバイルSuicaも登録できる。つまり、モバイルSuicaを使っていれば、社員が移動するのにかかった交通費の申請を自動的に行えるようになるわけだ。モバイルSuicaの仕様で、前日までの最大50件の履歴しか取り込めないが、freee側の設定で定期的に同期するようにしておけば問題ないだろう。

 また、現金で支払った交通費や物品購入についても、自動取り込みの機能が用意されている。レシートの内容を読み取って解析し、データ化してくれる「RaceReco」や「Dr.Wallet」などのスマートフォンアプリと連携が可能で、たとえば移動に使ったタクシーのレシートをその場で撮影するだけで、freeeへの取引登録が完了してしまうのだ。

「口座」登録画面の“その他各種サービス”から「モバイルSuica」や「RaceReco」を選べる
モバイルSuicaで支払った交通費は、利用者がその後何もしなくてもfreeeに取り込まれる
写真から情報を読み取れるRaceRecoでレシートを撮影
こんな風に撮影すれば……
画像解析により日付や店舗名、金額が情報として読み込まれる
freee側での取り込みが完了

 これら電子マネーサービスやレシート読み取りアプリなどとの連携は、「口座」登録で行う。登録にはモバイルSuicaなど各サービスのアカウント情報が必要になる。

 詳しくは後述するが、freeeではアカウントにより権限を設定できるようになっている。これは、会社の経理情報を一般従業員にすべてオープンにするわけにはいかないためで、法人向けには必須の機能と言える。このため、取引登録だけ行えるように設定された従業員ユーザーでは口座登録はできない。

 freeeの自動取り込み機能を活用するためには、経費利用する各サービスのアカウントを会社が管理する形とするのが望ましい。社用スマートフォンの貸与が難しければ、プラスチックのカードでは「SMART ICOCA」と「PiTaPa」に対応し、いずれのカードも西日本在住でなくても利用できるので、これらのカードを会社で取得して支給し、社用で使うカードとプライベートで使うカードを分けると良いだろう。

 会社支給のスマートフォンやスマートICOCAなどを用意するのが管理の手間などから難しい場合、従業員の経費処理には別の手段を用いる。社員ごとの仮想的な「口座」を登録した上で、日付・摘要・金額が記載されたCSVファイルを社員各自が作成し、経理担当者がそれを受け取って各「口座」の取引記録としてアップロードし一括登録する方法だ。モバイルSuicaを使った時のような即時性は望めないが、経費の精算は一般的には月1回のイベントなので、大きな手間ではない。

経費申請用のCSVファイルは、ある程度書式は決められてはいるものの、取り込み時に各列の意味を指定できるなど、比較的フレキシブルに対応可能

 筆者の会社の場合、CSVファイルを各自作成する方法を取ったが、以前からGoogleドライブ上のスプレッドシートで経費を記録・申請する形にしていたため、freee化にあたり従業員側はこれまでのやり方を変える必要はほとんどなかった。実際にfreeeに登録する経理担当者も、Google ドライブにあるデータをファイル化してfreeeにアップロードするだけだ。しかも後述する複数ユーザーの管理機能により、全体的に見れば今後は手間やコストを削減できる可能性が高いことがわかった。

税理士との共同作業も可能にするユーザー管理・権限設定

 個人事業主であれば、freeeを利用するのは本人のみで、1人で全ての情報を管理することになる。しかし企業の場合、freeeのデータ登録や管理を行うのは複数人になる場合があるし、特定の立場の人だけに全ての情報を見せられるようにしたい場合もある。少し規模の大きい企業であれば専属の経理担当者がデータ全体を見ることになったり、一方で社長はレポート機能を使って現状分析できれば十分、ということもあるだろう。

 このように複数のユーザーでそれぞれ異なる使い方をする場合、freeeが備えるユーザー管理と権限設定の機能を活用できる。有料の標準プラン(個人事業主・法人)では合計3ユーザーまで同時にfreeeにアクセスでき、それぞれに「管理者・一般・取引登録のみ・閲覧のみ」という4種類の権限のいずれかを設定できる。ユーザー数は追加料金で増やすことも可能だ。

「管理者・一般・取引登録のみ・閲覧のみ」の4種類の権限を割り当てられる

 「管理者」はfreeeの全機能を使うことができ、経理責任者などに割り当てることになる。「一般」は決算関連の機能を除く全機能を利用できるため、レポート機能や取引登録の機能を使いたい役付の社員に向いた権限だ。また、「取引登録のみ」は文字通り取引の登録のみが可能な権限で、取引相手との見積書・請求書のやりとりを行う従業員に合った権限だ。「閲覧のみ」は、経理作業は行わず、レポート分析のみをしたい経営者向けだろう。

「管理者」の画面
「一般」の画面。「決算」メニューは表示されない
「取引登録のみ」の画面
「閲覧のみ」の画面。経理作業に関わらない経営者向け

 ということで、専属の経理担当者がいない弊社では、社長と筆者を全機能使用可能な管理者ユーザーとして登録することにした。「一般」ユーザーとして他の従業員を参加させることも考えたが、弊社の場合はあまり意味はなさそうだ。というのも、取引相手とのやりとりは社長と筆者の2人が行っているため、他の用途としては従業員自らが直接経費の申請をすることしか考えられない。この場合、前述の通りGoogle ドライブ上のデータを用いた経費申請の方が、freeeで一括処理できる分作業としては簡単になるため、結局経費申請用としても使わないだろう。

 しかしながら、複数ユーザーによるアクセスや権限設定は、社内利用に止まらない便利な使い方がある。たとえばすでにお世話になっている税理士の人を管理者としてユーザー登録しておけば、自社のお金の流れを必要があればいつでもチェックしてもらうことが可能になる。また、決算処理に必要な書類をfreee上で簡単に出力してもらうこともできる。

 特に弊社の場合、毎月社内で整理している経費などの支出は印刷して都度税理士に渡しているため、この部分をfreeeを介してやりとりするようになれば、印刷と書類送付の必要がなくなり、コストもその分削減できることになる。freeeは、税理士なしで確定申告や決算処理ができることをウリにしているわけではなく、すでに税理士と契約している我々のような企業が、税理士とコミュニケーションしやすいよう設計しているのも特長だ。

 唯一の問題は、税理士の人がfreeeをきちんと使いこなしてくれるか、というところ。そんな不安を感じる人(企業)のために、freeeの扱いに長けた税理士らを認定するアドバイザー制度も用意されている。freeeの公式サイトで該当者を検索できるようになっているので、これからfreeeを本格的に活用していきたいのなら、税理士の選定も含めて検討してみるのもよいだろう。

freeeの認定アドバイザーを検索できるページ
http://www.freee.co.jp/tax_accountants?referral=aw-bks

ギリギリでやりくりしている小規模事業者の大きな味方

 企業にとっては、企業活動の内容をグラフィカルに把握できるfreeeの各種レポート機能も重宝するはずだ。弊社の事業は原稿執筆がメインで売上の大部分が原稿料であるため、分析するといっても比較的シンプルな内容になる。たとえば売上比率の高い取引相手がどこなのか、ひと目でチェックできるようにする、といった使い方があるだろう。

 たとえば、インプレスからの売上が大部分だとわかれば、万が一インプレスからの仕事の依頼が途絶えた場合、たちまち収益が悪化する。そうなる前に(仕事を失わない努力はもちろん必要だが)、他の媒体とも協力関係を築いていかなければとか、別の事業を立ち上げなければ、といった判断もしやすくなる。支出についても、経費や人件費がどれくらいの割合を占めているのかすぐにわかるため、自らの給料を減らすべき、という悲しい決断を下すこともあるかもしれない。

取引先別に売上比率をグラフ表示したところ
支出の内訳も同様にグラフィカルに見ることができる

 ギリギリの人数でやりくりしている企業の経営を支えるさまざまな機能を、freeeが備えていることがなんとなくおわかりいただけただろうか。当然のことながら、freeeではこの春から引き上げられた消費税にもしっかり対応している。

 また、2014年夏頃には給与計算の機能も追加される予定だ。インストール型の会計ソフトでは、給与計算ソフトと会計ソフトはパッケージが分かれているため、ライセンス管理もバージョンアップもそれぞれ行う必要があるのに比べて、これは大きなメリットと言えるだろう。

 現在は決算書の出力のみとなっている点も、将来的には税務申告書の作成まで対応するようだ。このあたりの着実な機能アップは、やはりクラウドサービスならではと言える。

freeeのAndroidアプリとiOSアプリもリリースされている
スマホならではの左右フリックで、取引の登録や無視を選択して処理できるのが特徴
公園でサボっているように見えるかもしれないが、あくまでもスマホ上で取引登録をしているところ

 3カ月間は無料でほとんどの機能を試用でき、有料の標準プランでも法人は3ユーザーまで月額1980円(年額1万9800円)と、小規模事業者にとっても決して高額ではない。事業年度が4月で切り替わったばかりの企業が多いと思うが、銀行口座等の取引はほとんど自動取り込みでき、CSV形式での取り込みにも対応しているので、移行にかかる時間もそれほどかからないはず。ぜひ気軽に使い始めてみてほしい。

(日沼 諭史)