レビュー
経理・簿記の知識はゼロ。人生初の青色申告に「freee」で挑戦!
(5)待望の確定申告書B出力機能と、iOSアプリの使い勝手を試す
(2014/3/11 06:00)
クラウド型の会計サービス「freee」が、確定申告書の出力、iOSアプリの提供など新機能をリリースした。全4回に渡って紹介したfreeeレビューに追加する形で、待望の確定申告書出力機能とiOSアプリの使用感をレポートする。
◇第1回:準備から明細の取り込みまで~さっそくチャットサポートへ救いを求める
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20140127_632007.html
◇第2回:売上、経費の取引登録~自動マッチングで漏れやミスのない帳簿を作る
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20140210_634109.html
◇第3回:毎月決まった支払いや入金は「自動化」が便利
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20140212_634521.html
◇第4回:経理・簿記の知識はゼロ。人生初の青色申告に「freee」で挑戦!
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20140217_634978.html
確定申告に必要な書類をfreeeですべて作成
確定申告書に関してはこれまでのレビューでも触れているが、今回の対応にあわせて改めて説明しておこう。通常、個人事業主の確定申告では、決算書と確定申告書の提出が必要。決算書は自分の所得を他者(この場合は国税庁)へ説明するための資料で、賃借対照表や損益計算書といった書類が含まれる。
一方の確定申告書は、決算書に基づき所得控除や税額控除などを適用、実際の納税額や還付額を決定するための書類だ。今回freeeが対応したのは確定申告書Bだが、もう1つの確定申告書Aというのは、サラリーマンのように給与所得が基本であり、確定申告で納税する予定がない人のための申告書のため、個人事業主であれば基本的に確定申告書Bのみということになる。
以前までfreeeでは決算書の作成のみ対応しており、確定申告書についてはfreeeで出力したデータに基づいて手動で入力する必要があったが、今回確定申告書の出力に対応したことでそうした手間が不要になる。郵送または税務署へ直接提出するのであれば、freeeから出力したPDFデータを印刷して提出するだけでいい。国税庁サイトの仕組みを覚える必要もないため、確定申告に対する手間も心理的なハードルも大幅に下げることができる。
決算書データを確定申告書に取り込み。操作は非常に簡単
確定申告書の作成は、決算書と同様「決算」「決算書の作成」から行なえる。なお、決算書の作成については第4回で触れているのでそちらを参照してほしい。
以前までは決算書と減価償却費のPDF出力ボタンのみだった画面に「確定申告書Bを出力」「「確定申告書Bを作成する」という2つのボタンが追加されているので、まずは「確定申告書Bを作成する」を選択し、確定申告書作成画面に移る。
確定申告書の作成画面には、右側にある「青色決算書からデータをコピー」を選び、作成済みの決算書からデータを取り込む。freeeのデータ入力がきちんと完了していれば、基本的にはこの画面で新たに入力する項目はなく、データ取り込みだけで作業を完了できる。あとは住所や名前など見落としがちな情報入力に漏れがないかを確認すれば作業は完了。画面上部の「確定申告書BをPDF出力」から確定申告書を出力しよう。
なお、出力したPDFを見るとわかる通り、確定申告書には生命保険料や社会保険料などの控除関係書類を添付する添付書類台紙が含まれている。e-Taxの場合これらの書類を省略できるが、郵送で提出する場合は添付が必要になるため、提出書類をきちんと準備しておこう。
決算書に加えて確定申告書も作成できるようになり、非常に便利になった。筆者が試用した時点では確定申告書は印刷のみに対応、e-Taxソフトで利用できるxlx形式でのファイル出力には対応していなかったが、その後xlx形式でのファイル出力にも対応した。
個人的にはデジタルデータを送るe-Taxのほうが、国税庁の負担も軽減されるため総合的にいいことではあるとは思いつつ、初心者にとっては、新たにe-Taxサイトやソフトの操作方法を覚える必要があるため、やはりハードルが高いのも事実。確定申告書の出力対応により、国税庁のサイトを使う必要も一切なくなったため、確定申告に不慣れな人はfreeeのみで完結できる印刷での提出をおすすめしたい。
iOSアプリの機能は非常にシンプル。外出先の手軽な経費登録に便利
これまではPCのみで利用可能だったfreeeだが、2月17日にはiOSアプリが公開され、スマートフォンやタブレットからの利用も可能になった。アプリはApp Storeから無償でダウンロードできる。
iOSアプリで行えるのは入力したデータの閲覧や取引の登録などfreeeの一部機能に留まるが、外出先でも手軽にデータを確認したり、取引を登録できるのは便利。また、3月末にはAndroid対応も予定されており、利用環境はますます広がる見込みだ。
対応OSのバージョンはiOS 7.0以上。対応端末はiPhone、iPad、iPod touch。iOS 7.0以前のOS、たとえばiOS 6搭載のiPhone 4sではインストールできないアラートが表示される。iOS 6のまま利用しているユーザーには残念だが、確定申告に関わる重要なデータを預かるサービスだけに、過去バージョンのOSまですみずみ動作保証するのは大変なのかもしれない。
すでにfreeeでアカウントを作成していれば、ログインするだけですぐにfreeeを利用できる。また、新たにfreeeでアカウントを作成することも可能だ。ただし、iOSアプリで利用できるのは現状まだ一部機能に留まり、ほとんどの機能はPCで行なうことを考えると、アカウントの作成はPCで行なっておく方が便利だろう。
アプリでは登録済みの取引が一覧できるほか、「取引を登録」「口座を登録」という2つのボタンが用意されている。しかし、「口座を登録」に関してはPCでログインするためのURLを登録済みメールアドレスへ送るだけの機能になっており、事実上利用できるのは取引の登録のみだ。
また、取引登録もfreeeの特徴である自動で取り込んだ明細へ対しての取引登録ではなく、現金取引など明細のないものに対してのみ行なうようになっている。そのため利用イメージとしてはPCでできることをiPhoneでも行なえるというよりも、外出先で発生した経費などをすぐに登録しておくという家計簿的な使い方に近い。
とはいえ普段から経費で購入したものや打ち合わせ時の喫茶店代などをこまめにiPhoneから登録しておき、領収書は自宅や事務所に帰ってから大事に保存するようにしておけば、あとでまとめて経費を処理する手間を大いに削減できる。銀行口座やクレジットカードなど明細ベースの取引はPCで、現金での収入や支出はiPhoneで、と使い分けると効率的にfreeeを活用できるだろう。
取引登録で登録できるのは取引日と勘定科目、金額、備考と口座の5項目。このうち取引日は自動で入力されるので、その日に発生した取引であれば入力は不要。また、勘定科目も入力欄をタッチすると自動で項目が表示されるほか、税区分はアプリでは表示されないものの、データとしては自動で登録されている。このあたりの使い勝手はPC版と同じだ。
あとは金額と備考、どの口座で支払ったのかを選択するだけで入力は完了。外出先で空いた時間にさっと登録するのに便利なよう、非常にシンプルに仕上げられている。
確定申告書の対応で国税庁サイトを利用せずfreeeで完結することが可能に
前回までのレビューでは確定申告書の作成機能が非対応だったため、せっかくfreeeで管理しているのにも関わらず国税庁のサイトやソフトを利用する必要があり、「確定申告書の出力に対応すれば不要な作業なのに……」と正直歯がゆい思いをしていた。
しかし、今回の確定申告書出力対応により、書類を印刷して提出する場合であれば国税庁のサイトを利用することなくfreeeで完結できるようになった。わざわざ別のサイトやソフトの操作方法や知識を覚えるのは、不慣れなユーザーには大きな負担だけにこれは非常にうれしい対応。確定申告期間の早い時期に正式対応が発表されたのも、これから確定申告を行なう多くの個人事業主には朗報と言えるだろう。
前述したとおり、e-Taxは提出書類を省略できるというメリットはあるものの、提出には国税庁のサイトやソフトの利用が必須になる。freeeを使えばPDFで出力したデータを印刷し、あとは必要な書類を貼付するだけで済むため圧倒的に簡単で手間もかからない。ある程度確定申告になれたらe-Taxの利用も検討しつつ、まずはfreeeを使って初めての確定申告をできるだけ簡単に乗り切るのがいいだろう。
iOS対応についてはまだ非常に機能が少ないが、「外出時に使った経費をすぐに登録する」という目的に割り切ると非常にシンプルで使いやすい。Android対応は3月とまだ先だが、このアプリは確定申告のためというより「日頃使っている経費をこまめに登録する」ためのアプリであり、確定申告期間に必須というわけではない。むしろfreeeで確定申告を終え、一段落したタイミングで今後こまめにfreeeでデータを登録するのに便利だろう。