レビュー

経理・簿記の知識はゼロ。人生初の青色申告に「freee」で挑戦!

(3)毎月決まった支払いや入金は「自動化」が便利

 経理・簿記の知識はゼロの筆者が、クラウド型の会計サービス「freee」で青色申告に挑戦する本レビュー。第3回は第2回に引き続き、freeeの特徴でもある自動登録や減価償却、家事按分などを登録していく。

◇第1回:準備から明細の取り込みまで~さっそくチャットサポートへ救いを求める
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20140127_632007.html
◇第2回:売上、経費の取引登録~自動マッチングで漏れやミスのない帳簿を作る
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20140210_634109.html

毎月決まった支払いや入金は「自動化」が便利

 経費のうち、電気代やガス代、家賃など毎月決まって支払うものは、freeeの「自動経理」が非常に便利。取引の「自動で経理」を選ぶと、取り込んだ明細を新着順に一覧表示するとともに、取り込んだ明細がどの取引に当てはまるかを自動でお勧めしてくれる。例えば東京電力の電気料金であれば、勘定項目は「水道光熱費」、摘要タグは「電気料金」が自動で設定されているといった具合だ。

明細の取引内容によって勘定項目を自動で判断

 振込明細の概要によっては正しくない勘定項目が設定されていたり、空白の場合もあるが、そうした場合は「編集」から勘定項目を修正するか、空白の欄に入力するだけでいい。電気代など繰り返し発生する場合は、登録の際に「自動化」にチェックを入れておくと、以降は毎月自動で取引の処理を行なってくれる。また、毎月必ず決まった金額で収入が発生する場合などもこの自動登録で処理しておくと便利だ。

プライベートでの現金利用は「事業借貸」で処理

 そのほか、freeeの登録で経費を含めて気になるポイントについても触れておこう。まずは非常に多いシチュエーションであるプライベートでの銀行引き出し。毎月の生活費だったり、突然の飲み会だったりと、銀行口座から直接現金を引き出している人は多いだろう。

 現金を引き出しているのだから口座は「現金」と思ってしまいそうだがこれは間違い。筆者も最初は勘違いしていたが、freeeでいう「現金」とは、事業者視点での「現金」であり、プライベートの財布に出し入れする現金という意味ではないのだ。

 freeeの「現金」口座で取り扱うのは前述した通り、クレジットカードではなく現金で実際に会社に必要な経費などを支払った場合のみ。プライベートのために引き出した金額は「事業主貸」が正解となる。用語はややこしいが、自分の中に事業主という人格と、個人という人格の2人が存在すると考えればいい。事業主として、もう1つの自分である「個人」に対して貸したという扱いになる、という感覚だ。

個人の銀行引き出しは「事業主貸」で処理

 個人と事業主でしっかり銀行口座やクレジットカードを分けていればこうした面倒はないが、そうはいっても面倒だったりクレジットカードのポイント目当てで2つにはしたくないというケースもあるだろう。その場合は事業で使った現金を「現金」、個人で使った現金を「事業主貸」としてしっかり区分しておこう。

クレジットカードの引落しは「振替」で処理

 クレジットカードについては第1回でも簡単に触れたが、クレジットカードは銀行口座から一括して引き落とされる明細と、クレジットカードそのものの明細があるためわかりにくい。筆者の場合で言えば口座として東京三菱UFJ銀行とDCMXカードを登録しており、東京三菱UFJ銀行の明細には「DCMXクレジット」としてカード利用額の一括引き落としがあり、かたやDCMXカードにはカードで購入した項目がすべて明細として登録されている。

 この場合は、東京三菱UFJ銀行の明細に存在する「DCMXクレジット」の明細を編集、「口座振替・カード引き落とし」のタブを選択し、「振替先(元)口座」として「DCMX」を選択する。DCMXカードで5万円の引き落としがあったなら、「その5万円はこのDCMXカードで使っているんですよ」と、引き落としと明細をつなげてあげるイメージだ。

銀行口座のクレジットカード引き落としは、「口座振替・カード引落し」タブから該当のクレジットカードへ振替を行なう

 クレジットカード側には細かな明細がデータとして登録されているので、あとは銀行口座と同様に明細それぞれに取引を登録していこう。

Suicaのオートチャージは思い切って「事業主貸」で処理することに

 クレジットカードに似た仕組みとして、Suicaのオートチャージがある。筆者の場合、Suicaの残高が1万円を下回ると即座に1万円をチャージするという設定にしており、Suicaは交通費だけでなく買い物にも使うため、毎月数万円単位のチャージがクレジットカードの明細に記載されることになる。

 freeeはモバイルSuicaのデータも対応しているためデータの取り込みは可能なのだが、Suicaの利用履歴は直近の最新50件までに限られ、過去の分を再発行することはできない。こまめにデータを取り込んでいるか、Suicaの利用頻度が低い場合は、クレジットカードと同様にオートチャージの引き落としに対してSuicaを「振替先(元)口座」として設定しても問題はないということになる。

 しかしながら、1年間の申告をまとめて行なおうという筆者の場合には、最新50件より以前のSuicaの利用明細をすべて手入力するのはあまりにも手間がかかりすぎることがわかった。そこでSuicaに関しては「、クレジットカードによるオートチャージの引き落としは「口座振替・カード引落し」タブから「現金」を選び、現金として引き出したという扱いにし、交通費などは別途経費として手動で処理することにした。

家事按分は設定だけ、あとはfreeeが自動で処理

 個人事業主にとって確定申告でとても重要なのが家事按分だ。家事按分とは、同じものを事業でも個人でも使っている場合、事業として使っている部分のみを計上し、個人として使用している部分は除外するということだ。

 例えば、自宅を事業所としても利用している例がわかりやすい。事業所でもあるので経費の対象ではあるものの、同時に自宅でもあるため個人の生活の場としても利用している。このため、家賃すべてを経費にはできず、家賃の一部を経費として計上する。

 家事按分に関してはfreeeのヘルプにも詳しく説明があるのでこちらも参考にして欲しい。

◇家事按分の登録方法を教えてください
https://support.freee.co.jp/entries/21959635-%E5%AE%B6%E4%BA%8B%E6%8C%89%E5%88%86%E3%81%AE%E7%99%BB%E9%8C%B2%E6%96%B9%E6%B3%95%E3%82%92%E6%95%99%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84

 ヘルプで挙げられている例では、事業用口座からマンションの賃料20万円/月を支払っている。半分をプライベート分として扱い、残りの50%を事業用経費として決算書に反映させる。

 今回はこのヘルプに従って家事按分を設定してみた。「決算」「家事按分」から「新しい家事按分の登録」を選択。家事按分の対象となる勘定項目を選び、事業で使っているパーセンテージを入力すれば設定は完了だ。

「決算」「家事按分」から家事按分を登録できる
サンプルとして勘定項目が「地代家賃」、タグが「事務所家賃」の取引に対して事業利用比率を50%とする家事按分を作成

 あとはすべての取引を入力し終わった後に、「家事按分」から「仕訳を登録」を選択すると、登録した勘定項目に対して指定した家事按分を自動で設定してくれる。「水道光熱費」に対して「70%」の家事按分を設定したとすれば、取引で「水道光熱費」として登録した明細に対してすべて70%の家事按分を適用してくれる、という仕組みだ。最後に一括して設定を反映できるため、この作業はすべてのデータが入力し終わってから行なえばいいだろう。

家事按分の対象となる取引を新規に作成
「仕訳を登録」で対象の取引に家事按分が適用された

10万円以上のものを購入した場合は「減価償却」で処理

 確定申告で重要なポイントが減価償却だ。10万円を超えるものを購入した場合、それは備品ではなく数年に渡って使用する資産として見なされるため、減価償却の処理が必要になる。個人事業主の場合であれば、業務で使うパソコンを10万円以上で購入した場合などがこの減価償却に当てはまる。

 減価償却という言葉は難しいかもしれないが、要は購入した製品の経費を数年に渡って計上していきましょう、ということ。また、減価償却の期間は国税庁が定めているため、該当する製品の期間で購入した金額を割り、毎年計上していけばいい。freeeが運営する「経営ハッカー」というブログでは、個人事業主が主に使うであろう減価償却の期間をピックアップしてくれているので参考になる。

◇耐用年数表(国税庁)
https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34353.php
◇青色申告のための減価償却
http://keiei.freee.co.jp/2014/01/10/aoiro-koteishisan/

 筆者の場合、2013年は減価償却の対象となるような経費は発生しなかったのだが、今後の勉強という意味も踏まえ、「15万円のパソコンを購入した」という設定で減価償却にも挑戦してみた。freeeの「経営ハッカー」該当記事によればパソコンの減価償却は4年・25%とのことで、この数値をfreeeに登録する。

 減価償却の登録は「決算」の「固定資産台帳」から行なう。入力は赤い※マークがついているところだけでよいので、名前や金額、数量などを入力。耐用年数と事業利用比率はブログにあった通り4年、25%とした。

減価償却の入力サンプル

 償却法が難しいところだが、ここは定額法を選択しておくのが無難。定額法というのは減価償却の金額を年数で均等に割って計上する仕組みで、今回の例で言えば15万円のパソコンを4年間で割り、それぞれの額を毎年計上していくことになる。このほか年によって計上する金額が異なる定率法もあるが、こちらは事前に税務署へ届け出る必要があるため、届け出をしていない場合や手続きが簡単な方法を選ぶのであれば定額法でいいだろう。

 該当箇所を記入して「保存」を押すと、残りの計算はすべてfreeeが代わりに行なってくれる。10万円を超えるものを購入した場合は資産として減価償却が必要であること、減価償却は製品ごと年数が決まっていることだけ覚えておけば、あとは決まった数字を入力するだけでいい。

該当箇所を入力して保存すると後はfreeeが計算してくれる

気軽にテストするために取引や明細の削除方法もチェック

 最後に、freeeに登録したデータの削除方法も確認しておこう。筆者も初めて使うfreeeで勝手がよくわからず、適当にテストでデータを登録するのもためらってしまったが、データの削除方法があらかじめわかっていればテストデータを作るのも気が楽になる。

 削除が簡単なのは、未決済状態の取引だ。これは取引一覧から左側に表示される取引ボタンを押すだけでいい。決済が完了している取引や、未決済であっても請求書から作成されている取引はそのまま削除はできず、取引の解除や請求書の削除が必要となる。この場合も、取引の一覧をクリックすると削除できない旨が表示され、取引を解除するためのガイドが表示されるので、ガイドに従って解除を行なおう。

未決済の取引は一覧の左に表示される×マークから削除できる
すでに決済が登録されている取引はそのままでは削除できず、取引を解除する必要がある
「明細の詳細」から「登録を解除」で取引を削除できる

 明細の削除は一度では行なえず、一度「無視」の状態で登録したのち、「無視」一覧から削除する必要がある。また、取引は後から数値の修正ができるが、明細は一度登録した数字を修正できない。手動入力で間違った明細を登録した場合は、いったん削除してから正しい明細を登録しよう。

明細の削除は一度該当の明細を「無視」に登録
「無視」設定した一覧から「削除」が可能

またしてもチャットサポートが大活躍

 今回のレビューでは売上や経費の取引登録、家事按分や減価償却など、確定申告に必要な帳簿の登録を一通り行なった。簡単に行なっているように見えるかもしれないが、青色申告が初めての筆者の場合は、いろいろなところで詰まってしまい、またしてもチャットサポートに大いにお世話になった。利用開始当初は縁遠い存在だったチャットサポートも、今では救いの女神のように輝いて見えるほどだ。なお、チャットサポートの利用時間は平日の10:00~12:00、14:00~17:00。標準プランのユーザーが対象となっているが、無料プランユーザーも登録後1週間はチャットサポートが利用できる。

 第4回では今回作成したデータを出力し、いよいよe-taxでの確定申告に挑戦する。

(次回は2月17日掲載を予定しています。編集部)

甲斐 祐樹