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ダウンロード違法化、どこまで合法? 福井弁護士に聞く


骨董通り法律事務所の福井健策弁護士

 権利者に無断でアップロードされている音楽と映像を、違法ファイルと知りながらダウンロードする行為が違法となった。いわゆる"ダウンロード違法化"を盛り込んだ改正著作権法が、2010年1月1日に施行されたためだ。

 改正前の著作権法でも、権利者に無断で著作物をアップロードする行為は違法だったが、これらの著作物を私的使用目的でダウンロードする行為自体は、著作権法第30条が認める「私的使用のための複製」の範囲内とされ、法的責任は問われなかった。

 改正著作権法では第30条から以下の場合が除かれることにより、違法にアップロードされた音楽と映像について、その事実を知りながらダウンロードする行為が「私的使用のための複製」の範囲から除外され、違法となった。

 「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」(改正著作権法30条1項3号)

 ただし、違法ダウンロードを行ったユーザーへの罰則はない。また、「ニコニコ動画」や「YouTube」などのストリーミングサービスを閲覧する行為、音楽と映像以外の違法ファイルをダウンロードする行為については、違法化の対象外とされている。

 多くのインターネット利用者に関係すると見られるダウンロード違法化だが、どの程度の影響があるのか。果たしてどこまでが合法で、どこからが違法となるのか。知的財産権に詳しい、骨董通り法律事務所の福井健策弁護士に聞いた。


Q1:ダウンロード違法化の対象となるサービスは?
A1:主に違法な着うたサイトやファイル共有ソフトが該当します。


Q2:違法ダウンロードを行ったユーザーは逮捕される?
A2:私的使用を目的とする限り、現行法では刑事処罰されることはありません。
解説:現行法では違法ダウンロードには罰則は適用されませんから、刑事処罰されることはありません。ここで「違法」と言っているのは、あくまでも「法律上許されておらず、理論的には民事裁判で損害賠償などを請求される可能性がある」という意味です。


Q3:ファイル共有ソフトを起動しただけで違法になる?
A3:それはないでしょう。
解説:違法なファイルを提供したり、意図的にダウンロードしなければ、ファイル共有ソフトの利用は違法にはなりません。もし、違法というのであれば、「Winnyは価値中立なソフトで、適法な目的にも使える」とした先日の大阪高裁の判決と整合性がとれないことになります。


Q4:ファイル共有ソフトで音楽や映像のタイトル名でファイルを検索してダウンロードした場合は違法?
A4:その可能性はあります。
解説:例えば、特徴のある人気アーティストの曲名でファイルを検索して、ヒットした同じ名前のファイルを、そのアーティストの演奏曲だと期待してダウンロードしたとしましょう。現状ではこうしたファイルは無断でアップロードされている可能性が極めて高いので、これは「その事実を知りながら行うダウンロード」にあたりそうです。

 ちなみに、私的使用のためのダウンロードには罰則がないとはいっても、Winnyなどで違法ファイルをダウンロードして放置しておくと、(罰則のある)アップロードにあたる可能性もあるので要注意です。

(編集部注:Winnyでは、ダウンロードしたファイルは暗号化したキャッシュファイル形式で転送され、ダウンロードしたユーザーのキャッシュフォルダに格納される。ファイル転送が完了すると、ファイルはキャッシュファイル形式からオリジナルのファイルに復元され、ダウンロードフォルダに置かれる。さらに、キャッシュフォルダに残ったファイルも公開され、他のユーザーがそのファイルを検索したり、ダウンロードできるようになる)


Q5:ファイル共有ソフトで音楽や映像のジャンル名(コミック、ドラマなど)でファイルを検索してダウンロードしても違法?
A5:同じく、その可能性はあります。
解説:問題は、どのような検索ルートでそのファイルに行き着いたかではなく、何を考え、何を期待してダウンロードを行うかです。上の例と同じで、ヒットしたファイルについて、それが特定のアーティストの演奏曲だと期待してダウンロードした場合、「その事実を知りながら行うダウンロード」にあたりそうです。


Q6:海外のサーバーに違法アップロードされた音楽や映像をダウンロードするのは違法?
A6:これは明らかに違法行為ですね。
解説:改正著作権法に追加された条文には、「国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む」と記載されているので、違法となります。


Q7:「Skype」や「Windows Live Messenger」などで音楽や映像の受け渡しをすることは違法?
A7:受信者側は違法とは言えないでしょう。しかし、送信者側は、場合によっては違法とされる可能性があります。
解説:送信者側が送信ボタンを押すなど個別のアクションを必要とする場合、ファイルの受け渡しは「自動公衆送信」にはあたらないので、ダウンロード違法化の対象になりません。よって、受け取る側にとってはこれまでと同様、私的複製が成立する余地はあります。その場合には、違法とはいえないでしょう。

 ただし、提供する側が、私的使用の範囲を超えて第三者に提供するつもりで音楽や映像をコピーしていた場合など、提供者側は違法とされる可能性があります。この点は今回の改正以前から同じで、罰則のある「違法」です。


Q8:専用ツールを使ってYouTubeやニコニコ動画から動画をダウンロードするのは違法?
A8:「違法にアップロードされたものである」と知った上でダウンロードした場合は、違法と見なされる可能性が高いでしょう。


Q9:YouTubeやニコニコ動画で提供されている権利者の動画と違法動画の見分けが付かなかったというユーザーはどのように扱われる?
A9:そのようなユーザーはおそらく責任を問われません。
解説:改正著作権法第30条には、「その事実を知りながら行う場合」という文言が記載されていますが、これは、違法コンテンツであることを知らずにうっかりダウンロードしたとしても、違法ではないということを意味します。

 ただし、Q8のような専用ツールを使ってダウンロードを行う場合、YouTubeなどの利用規約の違反にあたる恐れはあります。


Q10:2ちゃんねるなどの掲示板では、画像などをまとめて全部欲しいというユーザーが「ZIPでくれ」などと書き込むことがあります。音楽や映像のファイルをまとめたZIPファイルのリンクが掲示板に貼られて、それをダウンロードした場合は違法?
A10:まず、「ZIPでくれ」というのは、そもそも違法なアップロードを依頼しているという意味で、「教唆行為」と見なされる可能性があります。ZIPファイルをダウンロードする行為については、誰でもダウンロードできる状態に置かれたケースであれば、違法ファイルと知りながら行えば、違法です。


Q11:掲示板にリンクを貼られたZIPファイルにパスワードが付いている場合でも違法?
A11:場合によります。
解説:ダウンロードの面だけに絞って回答すれば、そのパスワードが厳格に管理され、特定のわずかな人数の人しかダウンロードできない状態に置かれるならば、受け手が「公衆」ではないので、「自動公衆送信」とは言えないと思います。

 よって、ダウンロード違法化の対象にはならず、ダウンロードする側には私的複製が成立することも、理論的にはあり得ます。ただ、比較的レアケースでしょう。


Q12:違法ダウンロードの方法を紹介する雑誌やサイトが、違法ダウンロードの幇助と見なされる可能性は?
A12:よほど悪質・具体的ならば、違法と見られる可能性はあるでしょう。
解説:刑事責任について言えば、先に述べたように、現状では私的使用のための違法ダウンロードには罰則が適用されていないため、幇助の罪も成立しないでしょう。これに対して、不法行為などの民事責任については、理論的にはあり得ます。

 ただし、書籍の場合などは個別の行為との結びつきはやや薄い上、表現の自由との関わりがあるので、違法とまで評価されるのは、かなり具体的に違法コンテンツのダウンロードを勧めたり容易にするようなケースに限られそうです。


Q13:違法ダウンロードを行ったユーザーはどのように特定される?
A13:一般的には特定困難でしょうが、弁護士法の「23条照会」(弁護士は受任している事件について、所属弁護士会を通して、公務所または公私の団体に照会して、必要事項の報告が求められる)でISPに問い合わせるケースが考えられます。
解説:違法アップロードを摘発するに当たって権利者は、「プロバイダ責任制限法」に基づいて、ISPにユーザーの情報開示請求を行うことがあります。しかし、同法では、違法ダウンロードしたユーザーの情報を開示請求することはできません。


Q14:違法ダウンロードユーザーのPCが警察に押収されることはない?
A14:可能性はやや低いでしょう。
解説:ダウンロード違法化には罰則がないため、警察はまず動きません。ということは、家宅捜索も行われないことになります。これに対して、刑事罰が適用される違法アップロードは、これまでも警察が摘発の際にPCを押収することがありました。

 営利目的など、私的使用のためでないダウンロードならばもともと罰則がありますから、強いて言えば、そうした疑いのあるダウンロードをしたユーザーのPCが押収されるケースはあるかもしれません。

 とはいえ、可能性が高いのはやはり、大量の違法ファイルをアップロードしたような悪質な人物への直接的な強制捜査でしょう。


Q15:「違法と知りながらダウンロードした」というのはどうやって証明する?
A15:難しいですね。
解説:ダウンロード違法化には刑事罰がないため、「その事実を知りながら行う場合」を証明するケースは民事訴訟です。立証責任については、原告側である権利者が負うと考えられます。

 権利者としては、「著作物がどれだけダウンロードされたか」や「被告が違法であることを知ってダウンロードを行っていたか」を証明しなければなりません。そうなると、立証が可能か、不可能かという以前に、相当な負担になることは間違いありません。

 特に「その事実を知りながら行う場合」を証明するのは難しい。こうしたことから、「ちょっとやってみた」という程度の人ではなく、簡単に証明できるほど悪質なユーザーが民事提訴の対象となる可能性が高いと思われます。


Q16:違法ダウンロードを行ったユーザーへの訴額はどう決まる?
A16:例えば、正規配信サイトの料金などをもとに、違法ダウンロードによる損失額が決められる可能性があります。
解説:著作権法には、著作権者は著作権を侵害した者に対して、「使用料相当額」を請求できるという規定があります。違法ダウンロードの「使用料相当額」については、正規配信サイトの料金などが参考にされるかもしれません。

 「使用料相当額」の具体的な例を挙げますと、私たちはかつて、人気コミックを無断配信していたサイト「464.jp」の裁判で井上雄彦さんなど漫画家の代理人を務めました。その判決では、464.jpのページビュー数をもとに、「Yahoo!コミック」の正規配信の場合の使用料から、1億8000万円もの損害額が認定されました(お金が主目的ではなかったので、漫画家はその一部だけ受け取りました)。

 ただし、先ほども述べましたが、違法ダウンロードユーザーが民事訴訟を起こされるケースとしては、「その事実を知りながら行う場合」を簡単に証明できるほど悪質なユーザーが対象になる可能性が高いと思われます。

 とはいえ、(Q4にあるように)Winnyに関しては、違法ファイルをダウンロードすると、キャッシュフォルダにも違法ファイルが置かれるため、キャッシュを削除しなければ違法ファイルをアップロードすることになりそうです。

 つまり、Winnyで音楽や映像などを大量にダウンロードすれば、その分だけアップロードすることになる。いくら本人は知らなかったと言っても、賠償責任も過大になる可能性があるので注意が必要です。


Q17:ちなみに、民事訴訟を起こされた場合の弁護士費用はどれくらい?
A17:弁護士によってまちまちですが、例えば請求額が2000万円の裁判では、着手金として110万円、勝訴した際に支払う報酬金がさらに220万円などです。
解説:現在は廃止されましたが、私が所属している第二東京弁護士会の以前の「報酬会規」によれば、賠償金の請求額が300万円までの部分については、弁護士の着手金はその8%、300万円から3000万円までの部分については、着手金として請求額の5%、勝訴した際の報酬金としてそれぞれの倍額が目安になっています。

 これは原告も被告も同じです。例えば、請求額が2000万円の裁判では着手金が約110万円、報酬金がさらに220万円となります。ただし、敗訴した際には報酬金を支払う必要はありません。これはあくまで一例で、タイムチャージ制の弁護士事務所(当事務所も基本的にそうです)もあるので一概には言えません。

 また、原告側が勝訴したとしても、資力のない被告が賠償金を払えないというケースもあります。そのような場合には、原告側の権利者も弁護士に報酬額全額を支払うことを躊躇するケースもあるでしょう。


Q18:極端な話、ユーザーは「違法とは知らなかった」と言い張れば違法にはならない?
A18:「大丈夫」とは言いたくありませんが、「その事実を知りながら行う場合」というのを証明することはかなり難しいでしょう。
解説:そもそも、今回のダウンロード違法化については、権利者側が「違法アップロードされた音楽や映像をダウンロードする行為は違法なんですよ」と告知できることが大きい、とされます。その結果、萎縮効果として、違法ダウンロードに歯止めがかかることが期待されています。


Q19:違法ダウンロードの抑止効果が見られなければ、罰則が導入される可能性もある?
A19:それは十分に考えられます。
解説:創作者には、このまま違法流通が拡大するとビジネスが成り立たなくなるという危惧があります。場合によっては、さらに強固な措置を求める可能性はあるでしょう。

 一般的に、成熟した正規市場の周辺には若干の違法行為はあるものです。例えば、YouTubeに無断アップロードされた動画がプロモーションにつながることもあるでしょう。とはいえ、正規市場を侵食するほど違法流通が拡大していれば、何らかの歯止めが必要です。

 現時点でダウンロード違法化は「違法だが罰則はない」という状況ですが、このまま違法流通が拡大すれば、権利者が罰則の適用を求めたとしても、その声に立法者が説得力を感じる可能性も高まるでしょう。


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(増田 覚)

2010/1/8 06:00