特別企画

非破壊型スキャナーで自炊代行に影響は? “蔵書電子化”関係者座談会(後編)

 スキャン代行業者に電子化の許諾を付与することを協議する「Myブック変換協議会(正式名称:蔵書電子化事業連絡協議会)」の代表者らによる、スキャン代行業の将来を探る座談会の後編をお届けする。今回は、座談会の直前に発表されたPFUの非破壊型スキャナー「ScanSnap SV600」(※1)の話題や、電子書籍の所有権や利用権の話題、さらに保存先となるストレージの話題など、スキャン代行業のみならず蔵書全般についてお届けしたい。前編(※2)もあわせてお読みいただきたい。

参加者
瀬尾太一(Myブック変換協議会/日本写真著作権協会)
藤田剛士(日本蔵書電子化事業者協会/株式会社ブックスキャン)
鷹野凌(ライター、自炊非利用者)
山口真弘(ライター、自炊利用者)

司会
西田宗千佳(ジャーナリスト、自炊利用者)

左から山口真弘氏、藤田剛士氏、西田宗千佳氏、瀬尾太一氏

非破壊型スキャナーの自炊代行でも本を溶かすのはマスト

――今回の基本合意の中で、必ず溶解処理などを行って処分するという項目がありますが、例の非破壊型スキャナー(編注:「ScanSnap SV600」)が登場したことによって、このスキームに何らかの影響はあるのか、多くの読者の方は知りたがっていると思うんですよね。その点を具体的にお伺いしたいのですが。

瀬尾:今回のスキームにおける最大のポイントは再資源化です。以前のインタビューでもお話しましたが、今の日本は、本が飽和しているために本が売れないという側面は否めない。つまり、デジタル化と同時に本棚を空けることで電子や紙を問わずに新刊の販売を刺激するという経済政策的な意味なんです。

 もともと所有権があるものを、媒体の変化をうたっているわけでもないのになぜ溶かさなければいけないかというと、これは契約でそうしていただいてるだけ。我々は本を溶かすことで間接的なメリットがあるから安い金額でも許諾してもいいと言っているわけで、本を溶かすのはマスト。非破壊であったとしてもこれは同じです。だから、もしそれが嫌だという方は(個人で)非破壊でやることになるでしょう。

 もうひとつルール化したいのは、自分の家であれ業者に依頼する場合であれ、本をスキャンする場合は必ずタイムスタンプなどのメタデータを入れるということです。

――それはすなわち、スキャナーで紙幣を読み取ろうとすると自動的にドライバーが警告を出すのと同様に、本の形状をしたものをスキャンする時には、何らかのメタデータが自動的に書き込まれると。

瀬尾:そうです。本をスキャンするモードだと、いつスキャンしたかという情報と、PCの所有者の名前がメタデータとしてデフォルトで刷り込まれる。でもいいでしょ、個人使用の範囲でしか使わないんだから。自動ページめくり装置付きの非破壊型スキャナーが出回る前に、どのスキャナーであっても本をスキャンするモードにはこの仕組みが入っているよう、メーカーさんと交渉していきたい。けっこう時間との戦いで厳しいですね。もしも自動ページめくり装置が半年で出ちゃったら、スキームを変えなくちゃいけない(笑)。

非破壊型スキャナーの世界を前提にした許諾ルール

――自動ページめくり装置の安価なものは、最低でも5年とかそのくらいかかると思いますけどね。メカものってトライ&エラーを重ねないといけませんし。

瀬尾:私としては、大日本印刷のテスト機が、簡単にスケールダウンできるのかが最大の興味ですね。あれはすでに開発されてしまっているので、200万円を2万円に落とすだけで済む。それが先ほどの5年なのかどうか。需要があればもっと早いかもしれない。

山口:今回のPFUのスキャナーも、読み取りを行う駆動部の寿命が20万回くらいらしく、しかもドキュメントスキャナーのローラーのように交換ができず、買い替えてくれという話なんですよ。なのでページめくりみたいにもっと複雑な機構を要求されるものは、現実的に出て来ないのではないかと。出て来ても5年やそこらはかかると思います。

瀬尾:そこなんですよね。PFUさんってスキャナーのメーカーであって、ページめくりというのは全然違うレイヤーの話で、一定の速度で本をめくっていくページめくり装置が開発されるとしたら別の会社じゃないかと思うんですね。それとPFUのスキャナーを組み合わせると。

――僕の予想ですけど、たぶん個人用には下りてこないんじゃないかと。というのは、ドキュメントスキャナーは自炊以外にもたくさんニーズがある上、機構的にはほぼプリンターと同じで、技術的に安く作れたこともあってここまで普及したわけです。ではページめくり型のスキャナーはどうかというと、これは本の自炊にしか使えない。本を自炊する人が全人口の何%いるかと考えると、低価格化して量産するほどのニーズがここから10年の間にあるとは思えない。

瀬尾:でも、コンビニに置かれる可能性はありますよね。

――そう、だからあるとすれば業務用だと思うんです。数十万円から数百万円で業務用の高性能なページめくり装置は5年以内に出て来る可能性があって、そういうものをブックスキャンさんが使うのは100%間違いないと思うんですね。

瀬尾:いやいや、それは導入しないで(笑)。我々のルールはあくまで溶かすです。そこは非破壊型スキャナーがある世界を前提に考えていかないと意味がなくて、さっきのメタデータの話も含め、そういう世界になった時こそ重要なスキームになるはずなんですね。

非破壊型スキャナーと同じことがスマホでも

山口:僕の場合、自炊でスキャンしたあとの紙の束は、ページの順番を入れ替えたりもう1回裁断したりして、たとえ拾われても使えないようにしてから捨てているんですけど、自炊に興味があって今まだ手を出してない人にとって最大のネックは、それよりもひとつ手前、本を切るという行為そのものにあると思うんですよ。そういう人にとっては今回の非破壊型スキャナーっていうのは非常に魅力的に見えるはず。なので、これまで自炊をやっていなかったユーザーが入って来る可能性はあるでしょうね。

鷹野:待ってましたという声もあちこちでありますよね。

瀬尾:でもあれを1ページずつスキャンして、(左右を押さえている)指のレタッチまでやると、1冊300ページとして1冊につき20〜30分はかかると思うんですよね。そこまでしてやるかというと、たぶん5冊や10冊やった時点で力尽きちゃうんじゃないかという気もする。

山口:ええ、なので効率うんぬんよりも前に、多少なりともガジェットとして興味があることが購入の前提になると思うんですけど、それにしてもあの値段ですから、深く考えずにとりあえず買おうという人もいるはず。ページがめくられたことを感知してそのたびにスキャンする機能も付いていますから、本を普通に読みながらスキャンができてしまいますし、そうなるとスキャンに時間を取られるという感覚自体がないかもしれない。

 ただ、非破壊型スキャナーはやり玉に挙げられることもありますけど、テクノロジーの進化と時代のニーズの中で利便性が高い製品が出て来たというだけであって、文教用途でも可能性が広がる予感はありますし、自分のような個人ユーザーにとっては、A3サイズがスキャンできるようになるのはものすごく大きい。間違っても機器のメーカーが責められるようなことではないと思うんですね。ただ、こうしたテクノロジーを良からぬことに使おうと考えたり、抜け道を探すことばかり考える人は必ずいるので、そのあたりが課題になってくると思います。

――もうひとつ、この流れのままいけば、非破壊型スキャナーと同じことをスマホのカメラとアプリで実現する仕組みが間違いなく出て来る。というよりもすでに出ていて、そのためのホルダーなども米国では販売されています。クオリティはまだ問題がありますけど、今の状況だとスマホのカメラの精度がフラットベッドスキャナーに追いつくまであと1年もかからない。だから早晩、めくってスキャンする行為そのものが当たり前になると思います。そこで問題になるのは、生成されたデータがどう扱われるか。

瀬尾:その場合も、トレーサビリティの仕組みがルールとして用意されていれば良いわけですよ。個人の本棚を空かせるというのは、ユーザーと著作者と出版社、全員共通の目的であって、異論を唱えている人なんて誰もいない。また、今回のような新しい電子機器を活用したいというのも、みんなが思っているわけですよね。じゃあ、いかに全員が損をせずプラスになるかを考えて仕組みを作りましょうと。

 だからどんな機械が出ようが、枠組みとそれぞれの利益が相反しないように考えてきちんと仕組みを作っていけば、絶対に落としどころはある。今回のMyブックはその最初の落としどころ。ロードマップのどの部分でどうやるかは分からないけど、次は出版さんが儲かるスキームを作りたい。

 問題解決って、みんながぶつかってどうしようもない時は、タイムラインをずらすんです。つまり、この時はあなたが儲けてね、この時は受けてねってずらしていけば解決する。このMyブックも一時期だけじゃなくて全体を見れば、ユーザーも著作者もみんなプラスになるスキームになっている。その途中で非破壊型スキャナーとか、いろんなファクターが入って来た場合も、ロジカルに考えていけばうまくいくんじゃないかと。

電子書籍の将来はダウンロード形式ではなくストリーミング形式?

瀬尾:つい先日、Kindleで初めて「進撃の巨人」10巻分を買ってみたんですよ。かなりいいですよね、Kindle版って。ただ、あと10年経った時に、きちんと見られるの? という疑問はどうしてもあるんですよね。

 将来的な電子書籍のあり方って、私はストリーミングじゃないかと思うんです。販元かどこかにセンターがあって、そこにアクセスをして見る。我々は権限を買っていて、どんなOSや環境であれそこにアクセスするだけで見られる。DRMはかけないけどストリーミングだから流出することもなく、しかも未来永劫担保される、こういう考え方はどう思います? やっぱりデータはダウンロードしたいもの?

――ゲームの世界の話になりますが、Microsoftが今年末に新型のゲーム機を発売するんですけど、彼らはネット認証を導入したんですよ。つまり自分のIDとパスワードでログインすれば、買ったゲームはディスクがなくてもどこからでもプレイできちゃう。でも、中古で売るには認証を外さないといけないんですよね。本体を売る時もそうだし、友達に貸す時にも制限が出てきちゃう。それは米国人にとってはものすごくマイナスだったらしいんですよ。自分達が買って持っていた権利を誰かに取られることをすごく嫌がった。(※)

(※事後追記:Xbox Oneでのディスク認証については、本対談の収録後、Microsoftは、「初回時以外の認証をしない」「ディスクについて、中古販売や譲渡などに制限をかけない」ものへと、方針を180度転換している。)

 ソニーはそれに対して、ディスクに関しては今まで通り認証をかけず、普通に売ったり買ったりできるようにして、非常に大きな評判を得たんですね。でも、じゃあどっちが未来を向いているかというと、Microsoftの方であることは明らかなんですよ。

 電子書籍についても同じで、DRMに括られていてクラウド上に置いてあるのは、一見所有しているように見えて、そのサービスが永続されている間の貸出権、閲覧権を与えられているにすぎないわけですよ。でもそれって非常に怖いことで。

 一方でストリーミング型にも問題はあって、著者が修正したい、もう読者に見せたくないと思った版でも、買った側は読む権利があるわけです。かつてKindleで「1984」のある版を、Amazonが購入者から引き上げて返金する騒ぎがあった。でもそれは、たとえ返金されたとしても引き上げる権利までは無い。だから最終的にはAmazonが謝って引き上げるのを止めたんですよ。

 というところまで考えると、ストリーミングでいつも見られればOKかというと、実は所有という考え方でいうと必ずしもそうではないかもしれない。またDRMで括られているのは、本質的に所有ではないかもしれない。産業と利便性のバランスを考えた時、何らかの認証があっていろんなところで読めるという方向に行かざるを得ないんだけど、どこが落としどころかは、正直よく分からないですね。

瀬尾:専門書、例えば医学書などはもうデジタル化されてアクセス権が販売されているんですよ。例えば第1書庫、第2書庫があって、月額500円だと第1書庫のみ、月額1000円だと第2書庫までアクセスできて、オプションでその専門書庫をいくつか選べたりとか。読み放題だけど自分自身は所有していない。それが私の将来的な電子書籍のイメージ。スポットで買うことはもちろんできるんだけど、それもアクセス権の延長で、自分が所有したい本は紙で買い、ネットの本は今言ったようなクラウドサービス的な形になっていくんじゃないかなと。音楽もそうじゃないですか。

電子書籍「所有」と「非所有」のバランス

山口:ストリーミングとは少し違いますが、期間を決めてレンタルという方向は面白いと思いますね。そもそもあらゆる本を永続的に読める必要はなくて、買ってハズレの本は1週間程度で権利がなくなってしまってもいい。使い勝手に難があるのでまったく使っていませんが、48時間だけ借りられるような電子書籍ストアも実際にある。ただ現時点でも、日本の電子書店の大半はそもそもライセンス的には所有権じゃなくて利用権ですよね。

瀬尾:そのへんが曖昧だから、サービスをやっていく上で今言った問題にぶつかってしまうんですよ。変に法制度を絡めると面倒なので、先にビジネスモデルとして定着させるべきだと私は思うんです。ただそうなればなるほど、過去のサービスと新しいサービスが乖離していってしまう。昔の本をPDF化して自分の書庫に置きました。新しい本も買って同じところに置きました、となると分かりやすいんだけど、今は二分化されていて、昔の本はPDFで通常の写真データなどと一緒に保管しないといけないじゃないですか。

――本を所有するスキームとしての蔵書電子化はありだと僕は思っているんですよ。所有しない形態で電子書籍サービスを使いつつ、所有したかったら紙を買ってください。紙を持っておくことができなければ、さらにお金を払って電子化してください。そういう3段構えはありだと思います。

瀬尾:ユーザーはオプションが多い方がいいんですよ。紙で買って電子化するとか、最初から電子で買うとか、今言ったようにクラウドだけ使うとか、本に対してオプションが少ないから電子書籍があまり伸びない。これをきちんと系統立てて、紙で読んでから電子化したい人もいれば、電子で読みたい人には電子を提供すればいいし、今言ったように昔の本と新しい本をまとめた蔵書庫サービスがあったり、それを多角的にやっていくことで初めてKindleと違った電子書籍サービスになると思うんですね。

――鷹野さんは、電子書籍の所有と非所有のバランスってどう思います?

鷹野:ユーザーからすると、所有なのか利用権をただ買っているだけなのかという区別はそんなにないと思うんですよ。どちらかというと購入元であるサービス事業者がこの先も続くのかどうかだと思っていて。これはスキャンしたPDFデータだから俺のもの、こっちのサービスで購入したものは実は利用権でその会社が潰れちゃったら読めなくなっちゃうんだっていう違いを、世の中どれだけの人が認識できるのかというと、まだそこはハードルがあるんだろうなという気がするんですよね。

山口:鷹野さんはブログ(※3)でたくさんの電子書籍サイトを比較されていますけど、あれはどういう経緯なんでしょう。

鷹野:電子書店のレビューを自分のブログで始めたきっかけは、もうすぐKindleが来るぞってみんなが騒いでいる時、日本ですでにやってる電子書店に目を向けると、例えば紀伊國屋書店さんがやってる「Kinoppy」はKindleに負けないくらいのサービスを当時からやっていた。そういうのがあまり世の中に知られていなくて、それをちゃんと比較できる読み物として提供していけばニーズがあるのでは、という観点でレビューを始めたんですね。

 最初に使った電子書店が「honto」だったんですけど、当時は1年間の再ダウンロード期限があって、ダウンロードしたスマートフォンが壊れて再ダウンロードしようとしたら期限が過ぎていた。なんじゃこりゃと。それが非常にトラウマで、あと調べたらガラケーの電子書店を使ってきた方はみんな同じような思いを味わってきたことが分かって、この1年縛りとかっていうのは徹底的に糾弾しなくちゃ、というつもりで(笑)。(※)

(※事後追記:hontoの「1年縛り」は、現在では既に一部を除き撤廃されている。)

自炊代行業者のサーバーが差し押さえられたらデータの所有権はどうなる?

瀬尾:今回、蔵書電子化事業連絡協議会さんと話をした時にストレージの話が出て、潰れたらその所有権はどうなるんだと。例えばブックスキャンさんが独自のサーバーにストレージ領域を持っていたとして、ブックスキャンさんが不幸にも潰れて差し押さえられたら、サーバーの所有権は債権者に移る。そうしたら、中にある自分たちの本はどうなるんだろうと。読むだけの使用権だからデータの所有権はあくまで向こうにあるとか、変換した時点で使用権があるんだからデータは返さなきゃいけないとか、いろんな考え方があるわけじゃないですか。

 ひとつ確実に言えるのは、これを業としてやっていく場合に、本を長期間担保できる信頼性をどう実現するかは、実は大問題だということです。信頼できる業者がいたとしても、ある日潰れてしまってそこに保管しておいた大事な本がなくなってしまい、原本もありませんとなると、それは大変なこと。その対応策を考えないとこのサービス自体が安心して提供できないだろうということで、今練っているところです。

山口:今の話にあったストレージというのは、納品時に一時的に使うストレージ領域ではなく、恒久的な保存場所という意味ですか?

瀬尾:ええ、データがダウンロードされずにそのままストレージに残っている場合もあるわけじゃないですか。つまりパーマネントストレージとして使うという考え方ですね。ストリーミングというよりはそこにアクセスをして参照するという考え方ですね。

――ブックスキャンさんとしては、ダウンロードしてくださいという連絡をした告知をした段階で、責任はユーザーの方に委ねたという解釈なんですか。

藤田:納品完了しましたという連絡が行った後、一定期間はダウンロードできる状態にしておきます。基本は3カ月なんですが、それを越えた場合には、サーバーのストレージの状況によっては削除する可能性があるので早めにダウンロードしてくださいと。

瀬尾:そこを書庫として使うかたちにはなってないということですね。

藤田:そうですね、基本的には。

山口:先ほど、瀬尾さんがおっしゃったのは、どちらかと言うと保存書庫として使うことが前提のお話ですよね。そのクラウドストレージというのはDropboxのような、市販のサービスということですか。

瀬尾:ブックスキャンさんが指定したところで、ブックスキャンさんが持っているストレージでもいいんです。データの受け渡しを兼ねてそこにためていって、ダウンロード期限もないと。そうやって書庫を提供する代わりに、例えば月いくらというストレージサービス。

鷹野:あり得るでしょうね。永続的にする代わりに月利用料は500円とか。

瀬尾:そうそう。上限は決める、もしくはお金を出せば増えると。

――自宅のファイルを消してクラウドストレージを唯一の保存先にしてしまっている方は、実は相当数いらっしゃるんですよね。本来、それは非常に危ないことなんですけど。

瀬尾:そうなんですよね。クラウドは受け渡しのまま置いておけばいいだけだから非常に楽。そういうかたちでためていってストレージ料を払ったほうが分かりやすいし、たぶん一般の人はそっちなんじゃないかなと。

Dropboxの共有機能はどうしても許せない

瀬尾:Dropboxに関しては、共有機能はどうしても許せない。普通の素人さん、デジタルに詳しくない年輩の人が、共有を押さないと見られないのかなと思ってチェックを入れたら、悪意がなくてもそれだけでだだ漏れですよね。ネットでそれが串刺しで検索できたら全部収集できちゃう。それは危険だと思うんですよね。もしそういうことならやはりDRMは必須にしないと、という話になってくる。なので共有機能はどうしてもやめてもらわなくてはいけないというのが、今のところ協議会としての結論ですね。

山口:共用機能の無いオンラインストレージが求められていると。

瀬尾:そうなんですよ。(Myブック変換協議会の幹事団体である)ヤフーさんにそれを聞いたら、もちろんできると。ただそのためだけにサービスを提供するような採算性の悪いことができるかどうかだと。

――むしろ既存のストレージに、このフォルダはどう頑張っても共有できないという実装をすればいいわけですよね。

瀬尾:そうそう。採算性はさておき、ヤフーさんにもとりあえずご相談して、日本のインフラのために協力してほしいという話はしています。まず誰かがやってくれないと、火鼠の皮衣が欲しいみたいなことを言っていると、自炊をやるなと言っているように見られてしまいますから。

山口:僕は自炊ユーザーでありつつライターとして自炊を啓蒙する立場にもいますが、オンラインストレージにどう触れるかはいつもひっかかるところなんですね。共有しないように気を付けましょうと言いつつ、DropboxやSugarSyncを使うとどこからでもダウンロードできて便利ですよとも言ってる。既存サービスの共有機能をなくすのは非現実的だと思いますが、ここでずばり使える何かが出て来れば、それに越したことはない。

瀬尾:クラウドって拡散する方向に伸びてきたじゃないですか。やっぱり誰も使い方をきちんと分かっていないんですよ。共有機能も、個人が共有機能を利用して違法性なくまともに使っている例をいまだに知らない。実際に何に使うかわからないけどこんなこともできます、というたくさんの機能を載せてしまったから、危険があったり使わない機能が乗っていたり、逆に必要な機能が足りなかったりしている状態だとすると、クラウドサービスが機能別に統廃合されていく時期に来ているのかなと。だから専用の電子書庫サービスが出て来るかもしれない。そうなると、蔵書電子化と組み合わせて非常にいいものになるんじゃないでしょうかね。

――ブックスキャンさんは、そういうサービスを提供される可能性はあるんですか。

藤田:ニーズがあればすぐにでもやりたいですね。

山口:以前、Manga Lockerというサービスがありましたよね。もう終了(※4)しましたけど。

瀬尾:それ単体じゃ無理でしょうね。

――オンラインストレージの中に非共有領域を用意するような実装しか、コスト的にはうまくいかないでしょうね。

山口:その代わりものすごく容量が多いとか、あるいはスピードが速いとか。難しいでしょうけど。

瀬尾:それは高そうですね(笑)。でも今回のポイントは、今まで強調されていなかった、昔の本を電子化することに主眼が置かれていることなんですよね。これから電子書籍は最初から電子で買う時代に入っていくわけですが、次の世代のユーザーに対しては、むしろこっちが重要。これが進まないと、先端にいるユーザーはどんどん先に行っちゃうんだけど、ほとんどが残ったままになってしまう。

 そういう意図もあって今回かなり業者団体と話が進んだわけですが、それでもユーザーに対する利便性は常に考えていきたい。ただ、ある一定のルールはユーザーに守っていただく必要はありますし、非破壊型スキャナーのような次世代の環境が来ても通用するルールを定着させたい。エゴイスティックな部分があるのは承知の上ですが、みんなが末長く電子書籍および著作者と付き合って行くためには重要なファクターだと思っています。

(山口 真弘)