【業界動向】
~メディア企業の戦略に大きな波紋米連邦地裁がファイル交換ソフトの違法性を否定■URL
P2Pファイル交換ソフトGroksterとMorpheusが、それを利用して交換される著作物の著作権侵害に対して責任を持つとして訴えられた裁判に関して、米連邦地裁は25日、GroksterとMorpheusの違法性を実質的に否定する判決を下した。 この判決に対して全米レコード協会(RIAA)は直ちに控訴する意向を表明したが、この判決は多くの著作物を持つ大手メディア企業がファイル交換サービスを運営する企業を訴えることが実質的に難しくなるという意味で大きな判決といえる。またこれまでファイル交換サービスに不利な判決が多く下されてきただけに、メディア企業に与える衝撃は大きい。 この判決文の中で地裁判事Stephen Wilson氏は、GroksterとMorpheusがファイル交換ソフトを配布してはいるものの、そのソフトウェアを入手した人々の使用方法については全く関与していない点を指摘した。これはGroksterとMorpheusが、Napsterとは種類が異なる非中央集権的なファイル交換サービスであるからだ。Napsterの場合、中央集権的なサーバーで著作物を交換する人々を直接結びつけていたために著作権侵害に対して直接的な責任を持つと認定されたが、GroksterとMorpheusの場合は著作権侵害に加担するどころか一旦稼働したサービスを停止することすらできないと指摘している。 こうしたことを踏まえた上で判決文では、1984年の有名なソニーの「ベータマックス判決」に触れ、ビデオテープレコーダーが著作権侵害のために利用可能であったとしてもその機器を販売することは著作権侵害にはならないことから、「GroksterとStreamcast(Morpheusソフトウェアを提供している企業)は著作権侵害に使用できるホームビデオレコーダーやコピー機を販売する企業と著しく違うことはない」と指摘した。 この判決について、Morpheusを提供しているStreamcastを支援しているElectronic Frontier Foundation(EFF)は直ちに判決を歓迎するコメントを発表し、「我々はMorpheusの件は海賊行為ではなくテクノロジーに関する問題であると信じており、今日法廷はテクノロジー企業が作る道具の誤用一つ一つに関して責任を持つ必要がないことを明確にした」とコメントしている。 また全米レコード協会会長兼CEOのHilary Rosen氏は、この判決に直ちに控訴する意向を表明しているものの「我々は法廷が、自由にアクセスできるP2Pネットワークに著作物を非合法的にアップロードやダウンロードしている個々の利用者が法的責任を負っていることを確認したことをうれしく思う」と述べ、判決の一部に対しては理解を示した。 今回の判決はファイル交換ソフトGroksterとMorpheusに限定されており、海外で最も大きなシェアを持つKaZaAには今のところ直接的な影響はない。しかし、この判決の波紋は今後ますます広まる可能性がある。 ◎関連記事 (2003/4/28) [Reported by 青木大我 (taiga@scientist.com)] |
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